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51話 占い師シロップ

51話 占い師シロップ


今日は朝早くから占い師の店に向かって出かけて行った。相当の行列が出来るらしいので早めに行こうと話し合って決めたのだった。しかし、どうやらその考えすらも甘かったようだ。


「な、なんじゃこの行列は!?」


マオが驚くのも仕方がないのだ。まだ日が昇っていない時間なのに既に100人以上の人が並んでいたのだ。


「こ、これはリリィが諦めた理由が分かった気がするよ」


「これは想像以上の難敵じゃったか…しかしここまで来たからには並ぶとするかのぅ」


2人は諦めたように列に並び始めた。大輝達が並び始めてからも次々と人がならんで行き、日が昇り始めた頃には最後尾は見えなくなっていた。


「こんなに並んでいたら後ろの方は何時になったら見て貰えるのかな…」


「…もしかすると今日一日ではなく日をまたいで待つ事になるかもしれんのぅ」


「それは…ありえるかもしれないね」


そうして暫くしてから少し列が動き始めた。しかし流れは非常にゆっくりだ。



昼頃になった時20人分くらいは進んだかもしれない。後列の人達が数名が待ちきれないと見て列から離れていく。気持ちは分かるがここで列を離れるとまた最初からと考えると動けないでいた。



夕方、やっと後50人くらいまでの所に来た。後列の人達はほとんど諦めたのか大輝達が並び始めた頃の100人くらいになっていた。


「…今日はここで一泊じゃな。まさか当初は覚悟していた野宿を今頃する事になるとは思わなんだぞ」


「僕も途中から覚悟はしていたけどここまで来たら動けないよね…後はどれくらいの時間まで営業をしているかで明日、見て貰える時間が想像出来るかな。…出来るだけ遅くまで見てくれていれば良いけど」


しかし大輝の期待は裏切られるように、その後すぐに流れが動かなくなってしまった。夕食時にリリィが心配になって軽い食事を持ってきてくれた。夜になった時、今日MPをほとんど使っていないので布で手を隠して<錬金術>で上位魔石作りをしてマオも<回復促進>を無駄に使用してスキルのレベル上げをした。そしてMPをほとんど使い切った中で大輝達は久しぶりに交代して眠りに着く事になった。



次の日、昨日より列が流れ始めるのは遅かったが流れ自体は良かった。しかし大輝の予想ではやはり夕方付近になると読んでおり、想像通り日が落ちかけた時に順番がきた。


「はい!次の人。あ!今日は次の人で最後だからその後ろはまた明日ね」


その声を聞いて大輝達はほっとした。しかしすぐ後ろの人は膝をガックリ落として落ち込んでいた。


「…後少し来るのが遅かったら妾達がああなっておったところじゃな」


「…そうだね。僕の国には早起きは三文の徳って言葉があるけどまさにそれだね」


そう言いながら大輝達は店の中に入って行く。


「ようこそシロップの館に。大輝君、マオちゃん」


出迎えてくれた女性は背が高く眼鏡をしていた。そしてややウエーブのかかった緑色の髪で何と言っても最大の特徴は大きな胸だった。


「…流石に有名な占い師と言う訳じゃな。そこまで分かっているなら要件も既に見えているんじゃろ」


突然名前を言い当てられて大輝は動揺していたがマオは流石と思う程度の驚きで済んでいるようだった。単純に大輝は占いをそこまで信じてはいなかったが、この世界やマオの世界では本物の占い師がいるようで腕が良いと感じただけのようだ。


「まあね。だから今日の一番最後になるように調整したんだしね。それで教えて欲しい魔法陣ってどれかな?」


どうやら大輝達が今日の最後になったのは偶然ではなかったようだ。


「これがその魔法陣です。どんな物か分かりますか?」


「そうね。これは特定の場所をつなぐ儀式魔法陣の一種で一方通行の転移魔法陣ね」


「…貴女はいろいろな魔法陣を作成出来るんですか?」


「出来るわよ。貴方方が望む時空転移の魔法陣も材料さえそろえば可能よ」


「!?」


大輝達は驚く事しか出来なかった。まさか求めていた事がいきなり現れたのだから当然の事ではあった。


「でも私が見えるのはマオちゃんのいた世界までね。どうやら大輝君の世界には魔力がほとんどないようで全然見えないのよね。先に言っとくけどこの魔法陣は相手側の世界の魔力も使うからこの手段では大輝君の世界には帰れないわよ」


「そ、それでは大輝は帰る事が出来ぬと言う事か?お主の知識で何とかならんのか?」


「大丈夫よ。だって大輝君、今は自分の世界に帰りたいとあまり思っていないようだしね」


「…そこまで見えるものなんですか。…僕の世界の占い師はここまで見える人は聞いた事がないですよ」


「それはそうよ。この世界の占い師は魔力を使っているから精度が違うのよ」


シロップは魔力と水晶、魔法陣、更にスキルも合わせての占いなのでかなりの精度があるのだ。


「それより大輝が帰りたいと思っていないとはどういう事じゃ?」


マオにとって占いの話よりも大輝の帰りたいと思っていない理由の方が気になっていたのだ。


「ん~、それを私の口から言うのは駄目な気がするのよね~。ここは直接大輝君に聞いたらどうかな?」


「ちょ、ちょっとシロップさん話を振っておいて丸投げしないで下さいよ」


「…大輝よ、どういう理由なのじゃ?」


「そ、それは、その~……」


大輝はマオに問い詰められて困っている。理由ははっきりしているが恥ずかしくて言えないのだ。


「フフ、大輝君はね~、マオちゃんを1人置いて行く事が出来なくなっちゃっているのよ~。愛されているわね、マオちゃん!」


「な!?、そ、それはほんとの事か大輝よ」


マオは顔を真っ赤にして大輝の方を向いて問いかけた。


「え、いや、それは……そ、そうだ!奴隷契約、そう、奴隷契約があるからそこまで距離が離れるとマオに何かあるかもしれない。だ、だからだよ」


大輝も顔を真っ赤にして言い訳を考えてマオに答えた。


「そろそろ止めないと暑過ぎて私が火傷しちゃいそうだわ」


「ならこの話に振らないで下さいよ…」


「…まったくじゃ」


「フフフ、2人共ごめんね」


シロップは笑いながら謝ったが反省の色は全く見えなかった。


「それじゃあ本題に入ろうかしら。…貴方達の目的は魔法陣に対する知識、そして私が求める対価は貴方でないと作れない高純度の水晶玉の製作よ」


「水晶玉?今の水晶玉ではいけないのですか?」


「今のもかなりの上質な物だけど対抗戦で見たマオちゃんの翼と剣を見て鳥肌が立ったわ。あの道具を作った人なら最高の水晶玉を作れるに違いないと思ったのよ。だから私の納得する水晶玉が希望する報酬、どう?貴方になら出来ると思っているのだけど」


「…分かりました。今持っている素材で最高の水晶玉を作ってみます」


そう言って大輝はマオの細剣作りで余っていたクリスタルドラゴンの尻尾を全て使って水晶玉を作り始めた。強化のスキルを使い不純物を可能な限り排除し、シロップの持っている水晶玉のサイズまで圧縮した。


「…シロップさん、これでどうかな」


大輝は出来あがった水晶玉をシロップに渡して確認をしてもらった。


「……これは、これほどの物がこの世に存在するとは…」


「駄目、ですか?」


シロップは水晶を見てからまったく周りが見えていないようだった。あまりの透明度と石が持つ魔力に目を奪われてしまい没頭してしまったのだ。


「!?、いや!駄目じゃない。予想以上の出来だ。これ以上の物は私には望めないわ」


「なら報酬はクリアしましたね」


「ああ、早速魔法陣製作に対する事を教えるわ」


大輝の作った水晶を見てからシロップはかなり浮かれているようだ。


「とはいえ、大輝君は錬金術を使えるようだから案外早く出来ると思うわ。まずは私が知っている基本的な事から話そう」


シロップの説明によると、

基本的な魔法陣は円を描きその中に三角形の形でその線は魔石を粉にして魔力を流しながら描く。

錬成陣などは魔導石を使い、火の魔道具の威力を上げたい場合は火の魔石を使うと効果が上がる。

そして円の中を三角形から四角形、五角星、六角星などと複雑にするほど効果は上がるが高い魔力、技量が必要になっていく。また例えば三角形の角に魔石などを設置する事でも効果を上げる事が出来る。

そして転移に必要な魔法陣は五角星以上が必須で時空転移となると六角星で行うとの事だ。


「…なるほど、トラップとして使われていたのは五角星だった。そこに魔石で補助して人が乗ったら特定の所に転移出来るようにしていたんですね」


「そう言う事だね。でも転移は高い魔力が必要だから送る側と受け取る側に魔法陣使って可能にしていたと思うわ」


トラップに使われていた魔石は<転移の小石>だった。それを使っても特定の場所にしか移動出来ない事を考えると時空転移には上位の転移魔石が必要なのだ。


「魔法陣はいろいろ試してみるとして、転移の魔石はやっぱり転移のダンジョンに行って手に入れないと駄目のようですね」


「そうね、魔法陣を描くのにも転移の魔石は必要になるから1度はダンジョンに潜る必要があるわね」


大輝はもしかしたらダンジョンに潜らないでも済むかもしれないと甘い考えを持っていたが、その希望ははっきりシロップに否定されてしまった。


「さて、魔法陣に対する知識は教えてあげたけど、報酬に貰った水晶が想像以上に良い物をだったから私が1度魔法陣を描く見本を見せてあげるわ」


そうしてシロップによる魔法陣の製作が始まろうとしていた。


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