50話 ギルドランクアップ計画 その2
ついに二ケタの中間、50話に到着しました。最近平日の仕事が忙しくなってきたから毎日の更新が保てるか不安になっています。
50話 ギルドランクアップ計画 その2
20000ゴールドという大金を何とか工面出来ないか考え込んでしまうリリィを見てヴァイオレットが申し訳なさそうな顔になっている。
「だから気にしないで下さいと言ったんです。貴女も内緒だっていったじゃないですか」
「すまぬすまぬ。じゃが言えば解決する事もあるもんじゃぞ。…なあ大輝よ?」
そこには2階から降りて来る大輝の姿があった。
「そうかもね。はい、マオ。これは好きにすると良いよ」
そう言って大輝はマオに重そうな布袋を渡した。
「すまんのぅ」
「構わないよ。それはマオが頑張って得た物だからね」
「うむ、ならヴァイオレットよ。これで当面は何とかなるじゃろう」
そうして受け取った布袋をヴァイオレットの前に置く。その音は重く金属音がいくつもしていた。
「…これってまさか!?」
リリィにはその中身が何なのか分かったようで、それをあっさり渡そうとしてしまう2人に驚いている様子だった。そうして驚くリリィを横目に中身を確認してみると。
「…い、いくらなんでもこんな大金受け取れません!」
その中身は大輝がマオの優勝に賭けて儲けたお金30000ゴールドだった。
「別にタダでやるとは言ってはおらぬ。お主には体で返してもらうから気にするな」
「体で…」
チラリとヴァイオレットが大輝の方を見て。
「…分かりました。私にあの方の相手をしろとおっしゃるのですね。それでギルドの子供達が助かるなら構いません」
ヴァイオレットが目を閉じ覚悟を決めた。
「た、大輝さん!?あなた、私の友達に何をやらせるつもりですか!!!」
リリィが顔を真っ赤にして大輝に詰め寄って行った。
「う、嘘!?なんでこんな展開になるの?」
大輝は予想外の展開に目を見開き驚いている。
「ち、違うわーーー!!!なぜお主に大輝をやらねばならぬ!妾が言いたいのは仕事をしてもらうと言う意味じゃ!?」
マオも違う意味に捉えられた事に気が付き、大声で否定をした。
「…ですからあの方のお相手という仕事ではないのですか?」
「全然違うわ!!魔族の事、ギルドの事での仕事じゃー!」
「ああ、そういう意味でしたか。体でって言うから私はてっきり……」
「大樹さん私は信じていましたからね」
「…この展開って前にもあったような…僕ってそんなに疑われやすいのかな…」
「…本当にすみませんでした」
マオが怒鳴り、大輝が落ち込み、リリィが謝る。そんな中騒ぎの原因となった者だけが騒ぎから外れている状況になってしまい戸惑っていた。
「確か大輝と言えばリリィのギルドの優勝に3000ゴールドを賭けた者の名前でしたよね。何か目的があって貴方は大金を賭けたんじゃないんですか?」
ヴァイオレットの疑問はもっともの事だった。理由もなく大金を大穴に賭けれる者はそうはいない。いくら魔道具をたくさん持っているからと言って使いこなせるかは分からない事なのだ。
「別に負けるはずのない勝負に目的は必要ないよ。しいて言うなら大金があれば<地霊石>を買えるかなって思ったぐらいだからね」
「地霊石って、花壇の増設を考えてくれてたんですね」
「地霊石って再生の力を与える魔石でしたよね?それを使って花壇の増設って?……地霊石を使うって事はまさか彼女の魔道具を作った謎の人物って貴方なんですか!?」
たった少しの会話で謎の製作者で通していた事があっさりばれてしまった。どうやら彼女は地霊石の利用にどれほどの技量が必要か知っているようだった。
「……リリィ、失言じゃったな」
「ごめんなさい。つい嬉しくって」
「まあ、秘密の共有は信用してもらう為には有効だよ」
「どうやら本当に貴方が製作者のようですね。……なら貴方に頼みたい事があります」
急に真剣な顔をしてヴァイオレットが大輝の方を向き姿勢を正した。
「…実はこの国の近くに魔王が居座りました。すぐには行動を起こさないと思いますがいつ動くかは分かりません。私もこの国が滅んでしまうのは望みませんので出来れば先に動いて欲しいのです」
「ほう、まだこの近くに魔王がおったとはのぅ」
「まだ?…何の事を言っているかは分かりませんが、急いで腕の立つ者を集めてクリスタルのダンジョンに向かってほしいのです」
場所を聞いた時、真剣に聞いていた一同の顔から緊張感が一気に消えた。
「…もしかして魔王ってクリスタルドラゴンのクリードの事かな?
「!?流石です。もう魔王の存在に気が付いていたんですね。名前は分かりませんがクリスタルドラゴンに間違いありません」
「…お主、妾の細剣を見たじゃろ?何か感じなかったか?」
「確かに凄い硬度と魔力を感じましたがそれがどうしたんですか?」
「あれね、クリードの尻尾から作った剣なんだよ」
「ヴァイオレット、あまり驚かないでね。今言っていた魔王は既に大輝さん達と接触して倒されているんですよ」
「……へ!?…」
ヴァイオレット以外が非常に申し訳なさそうな顔でどう穏便に説明しようか困っていた。周囲を見回してみると全員苦笑をしている。
「……本当の事ですか?そんな…普通の人間が魔王を簡単に討伐なんて出来るはずがないんですが」
「私もそう思います。ですが持って帰って来た戦利品や一緒に巻き込まれた依頼人の話から総合すると疑いようがないんですよね。それに普段の行動や持っている物が非常識の塊ですから魔王ぐらい倒しても不思議ではなんです」
「奴はなかなかの者じゃったぞ。強者と戦えて喜んで消えていきおったからのぅ」
「…事実のようですね。でも良かった。当分の脅威は去ったと言う事ですからね」
既に魔王を倒していた事には驚いたが脅威が去ったのは嬉しい事なので素直に喜ぶ事にした。
「それほどの実力を持っているなら私のギルドのメンバーが本気になっても敵わない訳ですね。それで話は戻りますが私にやって欲しい仕事とはなんですか?」
「うむ、実はのぅ、リリィのギルドをランクアップさせる事にしたんじゃが基本方針が地域の小さな依頼をこなす事にあるので人手が足りんのじゃ。それでお主の所と合同で依頼をこなせるようにしたい思った訳なんじゃ」
「なるほど確かにギルドが大きくなっていくと下位の依頼をこなす人手が足らなくなってしまいますからね」
「理由は分かりました。ですが私のギルドは最下位のギルドなので対抗戦に出ていたチームと他には3人しかいません」
「じゃがお主は魔族の子供を多数養っておるのじゃろ?その者達に10級の依頼をこなして貰えばよかろう。なに、作戦はあるそ。まず足りない力は道具でカバーする。そして怪我をした時の為にポーションを渡しておけば更に安心できるというものじゃ」
「道具でカバーってまさか魔道具を作ってくれるんですか?それにポーションって話していた使い捨ての魔道具ですよね?そんな貴重な物まで貰えません」
一瞬で怪我を治す治療の魔道具、それがヴァイオレットが知っているポーションの全容だ。そんな魔道具を簡単に渡すと言われて驚いているのだ。
「ポーションは確かに数が無いので貴重ではあるけど最近は私が作っているから、そこまで畏まらないでもいいよ」
「!?。リリィがあれを作っているのですか!いつの間にそんな技術を……」
「え、あー、あれね。元になる薬草の数が限られているから貴重なだけで、粉にしてお湯に溶かして瓶に入れるだけだから誰でも作れるよ」
「……それだけ?魔力を込めるとか魔石を加工するとかそういうのは?」
「まったくないよ。元になる薬草が地脈の力を吸って育つ霊草って言った方が分かりやすいかな?だからそれを使いやすく加工しているだけだから私の技術はいらないのよ」
「奇跡の魔道具が…そんな簡単に作れるなんて…」
リリィの軽く言う内容を聞き、奇跡の効果と製造の簡単な事の落差にショックを受けている。
「あ、でも薬草を増やすのに地霊石を使って花壇を加工したから、その技術はかなりの物だったよ」
「…そう、ですよね。それにしてもそんな霊草があったなんて噂にも聞いた事がありませんでしたよ」
「そう言えばそうよね。大輝さんこれって何処から手に入れたんですか?」
ヴァイオレットは「今頃疑問に思ったのか?」と言いたそうな顔をリリィに向けている。
「詳しくは言えないけど、自生していたのを摘んで持っていただけだよ」
「!?いったいどこ生えていたんですか?ここから近い所ですか?」
「…かなり遠いです。そう簡単には取りに行けないほど遠いです」
「そうですか…近場だったら私も摘みに行こうと思いましたが残念です」
この世界にはない薬草の話を続けるのはその内ボロが出てしまうと思い話題を変えようと思った。
「10級の依頼用の魔道具は後日渡すとして、僕も聞きたい事があるんですよ。……これはクリスタルのダンジョンで使われていたトラップの魔法陣なんですけど、これに詳しい人って心当たりはありませんか?」
そう言って大輝はダンジョンで圧縮して持ってきた魔法陣を見せた。
「私は魔法陣に詳しくはありませんが、知り合いの水晶占い師が魔法陣を使う為に習ったと言っていましたのでもしかしたら何か分かるかもしれません」
「水晶占い師ってあの連日行列が出来ている所ですよね?私も興味はあったんですがあの並びを見て諦めていたんですよね」
「…それは苦労しそうだね。でも並んで見る価値はあるかもね」
「そうじゃな。明日朝から頑張って並ぶとするかのぅ」
「それでは私はそろそろ失礼します。このお金で今日中に返さないといけない所が複数ありますので……皆さんこのお金は時間は掛かると思いますけど必ず返していきます。このたびは本当にありがとうございます」
金策にいろいろ走っていたが既に万策尽きていた所を助けてもらい心の底から感謝していたが、今は頭を下げる事しか出来ないのが申し訳ないと思っていた。
「そんなに気にする必要はないぞ。金は廻ってこそ価値があるというものじゃ。それに今後は共にギルドを大きくしていく仲、もっと気楽にするがよいぞ」
「…分かりました。感謝はしますが今後のギルドの問題に対しては遠慮なくいかしていただきます。…それで、良いですね」
「うむ、そうでなくては此方が困る」
「あ!ヴァイオレットちょっと待ってて」
そう言ってリリィは店の奥に行って何かごそごそやってから帰ってきた。
「これ、格納の魔石を使っている魔道具。大金を持ち歩くのは危険だからこれにお金を入れて持って行って」
リリィは首からペンダントを取り外して渡した。どうやら先ほど店の奥に行ったのは魔道具に入れていたポーションを置きに行っていたようだ。
「それは妾が試合で使っていた魔導書や細剣を取り出した魔道具と同じものじゃ。それを使えば手ぶらで歩けるから誰も大金を持っているとは思わんじゃろう」
「…これがあの時の魔道具ですか……作りは単純ですが近くで見ると加工に凄い技術がいるのが分かります。確かにこれなら危険は減るわね、リリィありがたく借りますね」
ペンダントを首に着けてお金をしまった後、ヴァイオレットはもう一度頭を下げて帰って行った。その後、リリィは今日分のポーション作りをしに宿の奥に入って行き、大輝達は10級依頼用の魔道具作りに部屋に戻って行った。




