48話 ギルドマスター会議
48話 ギルドマスター会議
朝食を済ました後、マオはリリィと一緒に他のギルドマスターと会う為に出かけて行った。今日集まる場所はイベントや大きな会議をやる時に借りる事の出来る場所で、外に会話が漏れる事がないので冒険者の秘密を守ろうとする配慮を感じる事が出来たのだ。
「マオちゃん、ここでの会話は外には聞こえないように出来てはいますが聞いている本人から広がったりする事は止めれないから気を付けてくださいね」
「分かっておる。妾は大輝が不利になるような発言はせぬよ」
「…中に入ったら大輝さんの名前も出さないでくださいね」
「む、それは気を付けねばならぬな」
そうして2人は中に入って行った。扉を入って直線が続き横に部屋が複数あるが人の気配が感じられない。どうやらこの会場全てを今日は貸し切っているようで、そのまま進んで行き突き当りの部屋に入って行った。
「お待たせしました。皆さんお揃いですか?」
「いや、まだ1人来ていない。それに約束の時間には少し余裕がある。……それでその娘は対抗戦に出場していた者か?私はこの国で一番大きな冒険者ギルドのマスター<クライム>だ」
体が筋肉で大きく見えほどよく年を感じるしわと髭、落ち着いた話し方から威厳を感じるクライム。その体つきは冒険者としてそのままモンスターと戦っても違和感を感じられないほどだった。
「お主がこの国のナンバー1か。…なるほどのぅ、リリィよあ奴を越えられるよう頑張るのじゃぞ」
「わ、私がクライムさんを超えるのは無理ですよ!なんで私がそんな目標を立てられているんですか!?」
「何を言う!ギルドを大きくしたいと言ったのはお主ではないか。上を目指す以上、最低でもこの国のトップを狙うのは当然じゃろ」
「マ、…そこまでは狙ってませんよ~。私は今より少し大きくしたいと思っただけですよ」
「くくく、この私を超えるか。良いぞ、その心がけ!やるからにはトップを目指すそれは当然の事、リリィよ遠慮はいらぬ全力で脅かして来い!」
マオとリリィの話を聞いていたクライムは嬉しそうに笑いながら挑んでくる者を認めた。この上を目指す者を認め迎える気質が人を集め、この国の最大ギルドまでにした要因であるとマオは見た。
「……私には無理ですよ~」
話の流れにただ巻き込まれただけのリリィは目に涙を溜めて泣き言を言う事しか出来なかった。暫くして会場に最後の1人が現れた。
「遅れてすみませんでした」
「何、時間ギリギリだが遅れてはいない。さあ席に着くが良い」
そうして最後の1人が席に着いた段階で話は始まった。
「昨日はリリィが何1つ説明をしてはくれなかったが本人を連れてきたという事はその娘から回答を聞けると思ってよいのだな?」
「うむ、リリィには口止めをしておったからのぅ。じゃが妾も皆の満足のいく回答が出来るとは限らんぞ」
普通の冒険者がギルドマスターに囲まれた状況では委縮してしまい満足な話も出来ないものだが、マオの一言でまるで委縮する事がなく普段通りに感じるような態度にクライムを含む全員の認識が小娘から1流の冒険者へと変わってしまった。
「…なるほど、では質問に入ろう。まず、あれだけ強力な魔道具を複数所持した経緯を教えてくれ」
「あれらの魔道具は貰った物じゃ。今の妾は碌に戦う力がないからのぅ」
「あれほどの物を無償で貰ったと?あの魔道具1つとっても相当のダンジョンに潜らないと手に入らない一品だと思うのだが」
「あれらがどれほどの物かはいまいち分からぬが、譲ってくれた者の話では全て手作りとの事じゃ」
「馬鹿な!?あれほどの魔道具が手作りだと?この国で最高の職人ですら不可能な物ばかりだったぞ!」
今のこの世界の技量は魔力で魔石の力を発揮させる事が出来るようになったぐらいなのである。火の杖など武器の先端に魔石を取り付けて自然の力を具現化させる方法が昨年発見されてその応用は始まったばかりのレベルなのにその数段進んだ技術を手作りと言われて驚くしか出来ないのである。
「あの翼や大岩、細剣を出す時に魔石が光るのが見当たらなかったのはどういう訳だ?」
「翼はこの服から出したし、岩と細剣はこの魔導書から取り出しただけじゃ」
マオはそう言うと翼と魔導書を出現させた。これらの魔道具に魔石が見当たらないのは、服の防御力を上げるついでにクリスタルと格納の魔石を合成させて作った糸を更に服と合成しただけである。その効果はクリスタルと風の魔石で作った翼を自由に服から出せるようにしたのだ。魔導書を使った時は上空にいたので分からなかっただけで使用した時はちゃんとそのページが光っているのだ。
「このように魔石自体は見えんじゃろうが光っている事から魔石を使っている事が分かるじゃろ」
「……………!?」
現物を見せられ簡単に説明をされたがそこに使われている技量は半端ない事この上ないのだ。
「この本も多少邪魔になる時もあるが便利なんじゃぞ、水、風、岩の玉が放てて武器や道具も取り出せるのじゃ」
そう言って次々と属性の違う玉を放った。その1つ1つが今出回っている杖の威力を軽く上回り最後に取り出した細剣は試合で見ていた限りでもその強度は測り知れず、目の前で見た美しさと相まって目をくぎずけにしてしまったのだ。次々と見せられる魔道具にもはや目を見開いて驚くしか出来ないのであった。事前にその非常識っぷりを知っていたリリィだけが苦笑をしているのだ。
「…これで質問は終わりか?」
マオの声にギルドマスター達は我に返った。
「!?。いや、まだだ!お前のチームメイトが一瞬で回復したのはどうしてだ?お前が回復魔法でも使ったのか?」
「確かに妾は回復魔法を使えるがあれはポーションと言う一種の使い捨ての魔道具を使用したのじゃよ」
「ポーション?まさかその使い捨ての魔道具も貰ったと言うのか?」
「あれはそんなに大した物ではないのじゃが確かに複数貰っておる」
「…あれは何度も言いますがかなりの物ですよ。傷どころか折れた骨まで一瞬で治してしまう魔道具なんて他では聞いた事もありませんから」
「な!?骨までも一瞬で治してしまうだと……」
マオの気楽さ、リリィのため息、その他のギルドマスターの驚愕と見事に3つの空気が出来上がってしまった。
「…そ、それで、これほども物を作った者は誰なんだ?」
「それは妾にも分からんのじゃ。見ず知らずの者が突然あれらの魔道具を渡してくれただけじゃからのぅ」
「馬鹿なそんな話を信じられる訳がないに決まっているではないか!」
一番肝心な所を知らぬで通そうとしたマオに予想通りの反論が響いた。
「信じられぬと言っても妾はそれ以上の事は知らぬ事、リリィにも言ったが知らぬ以上は答えようがないからのぅ」
これ以上の事は聞いても何も答えぬと言う強い意志を感じる言葉に、流石はギルドマスターと名乗るだけはあって聞いても無駄と理解したようでこれ以上マオやリリィを責める事はなかった。
「…リリィにも言っていないのではどうしようもないか。…なら此方でその者を探してみるとして、可能性としてはまず今回の対抗戦で大きく儲けた者を疑ってみるか?勝ち目のないチームに援助して大穴に大金を掛けて優勝させる。可能性としてはあり得ると思うがどうかな<ヴァイオレット>」
「!?、そ、それは……可能性としてはありえるかもとしか…」
クライムに突然話を振られたヴァイオレットと呼ばれは女性はキレの悪い話し方で何とか返した感じだった。
「確かお前も自分のチームに2000ゴールドくらい賭けていたと聞いているのだがな」
「…自分のギルドに賭けていけないルールはなかったと思いますけど」
「確かにそんなルールはないが、…お前のギルドは金に困っていたよな?そんな所が前回最下位にチームに大金を賭けると思うか?そしてリリィのところまでとは言わないが数々の魔道具を使って勝ち抜いて来た。その辺の説明をして欲しいのだがどうかな?」
「そ、それは…」
明らかにヴァイオレットは困っている様子に見える。既にクライムは自力で探す事も視野に入れて行動していたようである程度の下調べも済んでいるようだった。
「それにリリィの宿に泊っている大輝と言う者も3000ゴールドリリィのチームに賭けていた。その辺の説明もしてほしいのだが?」
「それは簡単じゃ。妾が魔道具を持っていると知れば大穴で一気に儲けようとするのは当然ではないかのぅ」
「…確かにそうですね。なら後はヴァイオレットの説明を聞こうか」
「わ、私も同じで見ず知らずの者に魔道具を貰ったと聞いてそれに賭けただけです」
ヴァイオレットはマオの話に便乗する気でいるようだった。しかしマオと違い自信がまるでないような態度の為に説得力が無くなってはいたのだが。
「そうか、ならお前は魔道具を渡したという者の姿を聞いているか?」
「…それは、少しは聞いています」
「なら話して貰おうか。その後にこの子にも聞いてみて同一人物かどうかを確認してみるとしよう。まさかタダで魔道具を渡す者が複数人いるとは思えないからな」
ヴァイオレットは困っていた。咄嗟に嘘を付いたのはいいが早速ばれようとしているのだ。せめてマオと事前に話す事が出来れば口裏を合わせる事も出来たが今となってはどうしようもない事なのだ。
「クライムさん、それは今回の議案とは関係ない問いかけだと思うのですが」
「お前とヴァイオレットが仲がいいのは知っているが、普通はそんなに魔道具が出回るはずがないのだ。お前達が何を隠しているかは知らないが、この国に脅威となるかもしれないのだ。少しでも事情を把握しようとするのは当然だ」
「それはそうですけど…」
クライムの話ではリリィとヴァイオレットは下位ギルドとして交流があり仲が良いようだった。
「さてと、それでどのような人物だったのだ?」
ヴァイオレットはもうどうとでもなれと思い適当に言う事に決めた。
「聞いた話ではそれほど特徴のある顔ではなく身長も170センチぐらいの普通の人にしか見えない者だったと言う事だった。私が直接見た訳ではないからこれ以上の事は言えないがこれが知っている事の全てだ」
「なるほど、それでは次は君の番だ」
ヴァイオレットが適当に言っているのはマオには分かってはいたがリリィと仲が良い者をないがしろにするのは気が引ける。それに魔族の事を聞きたいのでここは助ける事にした。
「妾が出会ったのも同じような者じゃ。何処にでもいるような町人のような者で上手く説明が出来ぬ」
マオの回答を聞き、一番驚いていたのは嘘を付いていたヴァイオレットだった。自分を助ける理由がマオにはないはずなのだから驚くのは無理がない事だった。
「…信じられない話だがどうやら謎の人物は同一の者のようだな。しかしリリィの所とヴァイオレットの所に渡された魔道具にかなりの差があるのが気になるが、これ以上は本人を捕まえて事情を聞くしかないな」
「…妾達にはもう用がないようじゃな」
「ちょっと待て!」
突然声を上げた者が現れ、マオの逃亡は失敗に終わった。




