46話 決着
46話 決着
マオの持っている本型の魔道具、<無限の魔導書>(ナビコスが命名)は大輝が作った新たな魔道具だ。この魔道具は後から効果追加出来るのをメリットと考えていて、今のところは格納の能力が表紙に1つ、中に3ページ分、水、風、石の玉を打てる3ページの合計7つ分の能力を持っているのだ。
そして新たに出したクリスタルの細剣はマオでも扱いやすいようにした接近戦用の武器だ。
「くそ!そんな細い剣がなぜ砕けない!」
「細くてクリスタルだから脆いとは思わぬ事じゃな」
そう、大輝が作る武器は削りだしているのではなく圧縮して細くしているので、細ければそれだけ硬度が増すのだ。
「それに妾は剣だけが武器ではないぞ、<フレイムアロー>!」
至近距離で放たれる炎の矢を何とか身をひねるようにしてかわすが、その隙をマオが見逃すはずもなく細剣で斬り掛かる。転がるようにして浅い傷で済ませるがそこに炎の矢が追撃に来てダメージを受ける。
「あんな至近距離で炎の矢が当たればお前もダメージを受けるだろうによく使えるな」
魔導士相手に接近戦から距離を離されてしまった事に悔しがりながら、流れを変える為にもマオに話掛けているのだ。
「直撃ではない炎など効かぬからのぅ。妾には水の加護が効いておるから少々の熱ではダメージはないのじゃよ」
「……この化物め」
「ほれ、待ってやっとるのじゃからかかってこんか」
マオは接近戦を望んでいるようで、これ以上離れている状態では追撃しないと言う意味を含めて手招きしている。
「舐めやがって!」
起き上がると同時にマオに斬り掛かって行くがマオに届かない。そのまま攻撃していたのでは一生届かないのは分かっていたので、さっき転がった時に拾っておいた砂をマオの顔に振り掛ける。
「痛っ、<アクアフィールド>!」
マオはとっさに水の膜を張ったが相手は構わず胴に斬りかかって来てその勢いで飛ばされてしまう。
「…やってくれたのぅ。じゃがその手の攻撃が来たからには、力の底が見えたという事じゃな」
「あの状況で冷静に対応してダメージを緩和するなんてな」
「なかなか面白い戦いであったぞ」
そう言ってマオは近づいていき相手の出した剣を流し、左手を胸に当てそのままファイヤーボールを放った。
「ぐわっ!?」
触れられた状態からの爆発に吹き飛ばされしまい起き上がろうにもダメージが大きくて動けない。その状態の相手にゆっくりマオが近づいて行き首もとに細剣をあてる。
「これでしまいじゃな」
「……ああ、俺の負けだ」
ドライブの相手の剣と火の攻撃を防ぐのに忙しかった。剣を防いで攻撃をしようとすると口から火を吐いてくるので盾に隠れるの繰り返しをやっているのだ。しかし動揺していたのは相手の方だった。
「な、なんなんだその盾は!薄くて透明の癖に火も剣もまったく通じないとは!」
仮にも魔王を名乗る相手の火を回数制限はあったとはいえ防ぐ事が出来た盾なので数段落ちる威力の火なんかでどうにかなる物ではなかった。
「攻撃手段が二種類あるだけでこんなにやっかいだとは、…こんどナビコスに2刀流でも進めてみるか?」
「くそ!余裕ぶりやがって!」
ドライブの言葉に余裕を感じてイラツキ大きく息を吸い込み、今まで以上の火を吐いた。しかしその攻撃は隙だらけだったのを盾越しで見えているドライブは勝負を掛けた。相手の持っている盾に向かって槍を突き出し先端を刺す。一見うまく防いだように見えるが、これは防いだのではなくドライブが狙って刺したのだ。
「<アースシャベリン>(ドライブ命名)!」
ドライブが槍に魔力を流すと先端が膨らむように石が現れ、そのまま刺していた盾を破壊して相手を突き飛ばした。そして転がった相手に槍を大きく振りかぶって殴りつけた。
「…終わりだな」
ドライブの言葉通り相手のゲージは残り2割ぐらいまで減っており、気を失っているのか動かなかった。
ナビコスの戦いは相性のせいもあって、あっけなく終わろうとしていた。
「<エアブラスト>!(ナビコス命名)」
近づいてくるナビコスに対して火の玉を放つ魔道具で攻撃するが風の刃がかき消してしまい、進行を止める事が出来ない。
「なんで剣士が魔道具を持っているんだ。しかもあの剣のどこに魔石が付いているってんだ?」
相手が動揺するのも無理はない。この世界では普通、道具の先端に魔石が付いておりその魔石のレベルから威力が変わるのだ。しかしナビコスの剣にはそれがない。大輝がクリスタルと魔石を合成してクリスタルそのものが魔石となっているからだ。そのせいで魔石の密度が下がっているので威力も落ちてはいるが、使っている魔石が上位の魔石の為それでも相手の魔道具より威力が高いのだ。
「私のマルスはいいでしょう!斬って良し、放って良し、見た目良し、最高よ!」
自分の武器に酔っているナビコスを横目に「マルスって誰だ」、と思ってはいたがすでに接近を許してしまい、そのまま杖も斬られてしまった為何も言う事が出来なかったのだ。
「これで降参してね。続けるって言うなら容赦はしないからね」
「…分かっている。俺の負けだ。………それよりマルスってのはなんだ?」
「マルスはこの子に決まってるじゃない。こっちの子はヴィータよ」
そう言ってナビコスは右手に持っている剣と左手を腰の刀に置き相棒を紹介した。
「……そ、そうか。その剣も凄かったが腰の武器もあいつの盾を斬り裂いたんだ。相当の物だな」
「あなたもそう思うでしょう!そうなのよ!この子達は凄いのよ、何が凄いかってね……」
男は後悔した。武器を少し褒めたらナビコスの怒涛の身内自慢が始まってしまったのだ。その話は1番最初に決着が着いたのにマオ達の戦いが終わても止む事はなく、審判にギブアップ宣言をする事も出来ず結局マオが頭を叩きに来るまで止まらなかったのだ。
「まったく戦いが終わったのに援護もしないで話続けておるとは」
「すみません師匠~、でもこの子達の素晴らしさを分かってもらうにはまだまだ時間が足りなくて」
その言葉を聞いていた男はぞっとした。あそこまで話してまだ話足りないと言うのだから恐怖すら感じていたのだ。
「でもではない。ほれ妾達は優勝したのだから見ていた者に手でも振って答えてやらんか」
「あ!ドライブも勝ったの?」
「…本気で試合の事を忘れていたようだな。しかも俺の心配だけとは」
「そりゃ師匠が負ける訳がないもの。それより勝ったなら手を振ろ!」
元気良く手を振り始めるナビコスにため息をつきながらドライブも手を振った。その表情はやはり嬉しいようだった。
「試合終了ーーー!!!素晴らしい魔道具の応戦!見る者を圧倒する技術!とても9級と10級の冒険者チームとは思えない活躍ぶりでした。選抜戦が始まる前に誰がこの事を予想出来たでしょうか!運で勝ち上がったチームはこれまでにもいましたが、このチームは明らかに実力と言えるでしょう!皆様、優勝したチームにもう一度盛大な拍手をお願いします!」
そうして会場全体が大きな拍手に包まれてマオ達もそれに答えるように手を振った。
しかし退場しようとしたマオが大岩の存在を思い出し、消していく姿に驚き会場は静まり返ってしまった。
「少しヒヤッとした場面もあったが、終わってみれば圧勝の一言で終わる内容だったな」
ジェームズがナビコス達の戦いを思い出してそう言った。
「…いえ、まだ全てが終わった訳ではないようですよ」
「なに?」
そう言う大輝の指す指の方を見てみるとそこには再び他のギルドマスターに囲まれて質問攻めに合っているリリィの目に涙をためて困っている顔が見えたのだ。
「…あーいろいろ派手にやらかしたからな…」
「まーあれはリリィの戦いと言う事で頑張ってもらうしか出来ないかな」
「…俺達は観客で良かったな」
「ほんと、一番の安全地帯にいますからね」
今後のナビコス達とリリィを思い、自分達の今の状況を幸せに感じている2人だった。
すぐさま会場を後にした大輝の耳には入らなかったが、この試合で一番の活躍を見せたマオに空を飛ぶ姿から<赤髪の天使>とか4属性の魔道具を使いこなしていた事から<仮面のエレメンタルマスター>などと呼ばれるようになっていた。




