45話 決勝戦
45話 決勝戦
決勝戦は前回最下位のギルドとリリィのギルドに決まった。
「…ほとんど師匠の活躍だけど私達決勝まで来ちゃったね」
「…ナビコスはまだいいさ。俺なんて対戦相手に向かって走って行っただけで試合が終わっているだぞ」
「…だってせめて相手を倒さないといる意味が無くなっちゃうもの」
「俺は意味がないのか……」
「……ごめん。言い方が悪かったよ」
対戦相手の攻撃はほぼ全てマオ1人が無効化しての勝利なのでナビコスとドライブは落ち込んでいた。そんな2人はとても決勝戦進出を決めた者の雰囲気には見えないのだ。
「ナビコスにドライブよ、何を落ち込んでおる?次は決勝戦。楽しみじゃのぅ」
「ハハ、きっとまた圧勝で終わっちゃいますよ」
「どうじゃろうな、妾は人の姿をした魔族と戦うのは初めてじゃからのぅ」
「「……ん?」」
マオの言葉に遅れて聞き間違えたかと首を傾げている。
「…師匠、今なんて言いました?」
「なんじゃ、聞いておらんかったのか。人の姿をした魔族と戦うのは初めてと言ったのじゃ」
「…魔族?」
「対戦相手を見ておらぬのか?いかんぞ、相手の手の内が見れる時は見ておかねば」
対戦相手を見ていない事を叱るようにマオが喋っているがナビコス達はそれどころではなくなっていた。
「いやいや、前回トップのギルドを僅差で倒すところをちゃんと見ていましたよ!だけどその試合でどうして相手が魔族と判断が付いたんですか!?私には普通に人が戦っているようにしか見えませんでしたよ!」
「見てれば分かるであろう?あ奴らの体からは瘴気が漏れ出ておったではないか」
「…そんなの分かる訳ないよ~…」
マオは簡単に言ってはいるが実際に漏れ出ていた瘴気は微々たるもので普通の人には分かるはずのないレベルなのである。
「なら次からは注意して見る事じゃな」
「…だから無理だよ」
そんなナビコス達の泣き言を無視をしてマオは試合までの時間を待っているのであった。
「お待たせしました!今回のギルド対抗戦の最終戦!なんと誰もが予想しなかった弱小ギルド同士の決勝。しかしその戦いは誰が弱小ギルドと言えるでしょうか!」
試合会場で解説者が観客を温めるように喋っている。
「なおこの試合は最新技術である魔道具を使ってあちらに選手のHPとMPのゲージが表示されるようになっております!選手達の状態を皆様も一緒に楽しみましょう!さてそろそろ時間になったようです。では各ギルドの実力を見せて貰いましょう。さー選手の入場です!!!!!」
会場はテンションは最高潮になった状態でマオ達が姿を現すと一際大きな歓声が鳴り響いた。
「盛り上がっておるのぅ。2人共、これでは無様な戦いは出来ぬぞ」
「…師匠~、緊張しているんですから、これ以上プレッシャーを与えないでくださいよ」
試合を楽しみにしている顔と緊張で表情が硬い顔とでマオとナビコス達は対象的な顔をしていた。
「さー選手が入場しました!派手な動きはないが堅実な戦いで前回優勝のギルドを破ったチームと全試合、圧倒的な実力で相手を寄せ付けなかった可愛い仮面を着けた謎の少女のチーム!果たして今回の優勝はどちらのギルドになるのか!…それでは試合開始です!」
試合開始と同時にマオ達は駆け出した。作戦は1回戦と同じだったが相手の動きは違い、魔導師を後ろに待機させ2人で向かって来たのだ。魔導師が石の塊を複数飛ばして攻撃を仕掛けてきたがマオは慣れた手つきで撃ち落としていく。そうして前衛がぶつかる手前でマオが止まりナビコス達を前にやった。
「今までの試合は歯応えがなかったであろう。妾はここでしばらく様子を見ながら相手の魔導師と戦うからお主達も頑張るんじゃぞ」
「分かりました!………でもピンチの時は助けてくださいね」
相手の前衛は剣と盾を装備している2人組みでナビコスの攻撃を盾で受けて剣で反撃をするスタイルのようだったが、打ち合ってみて初めて分かった事があった。
「この人…、確かに全力を出していませんね!剣を振るう腕に余裕があります」
「ほう、決勝に来るだけあってそれなりに相手の実力が分かるようだな」
「…あまり知りたくない情報も耳には入っているんだけどね。それにしてもこの剣と打ちあえるなんて貴方の盾もなかなかの物ですね」
ナビコスの剣はクリスタルゴーレムぐらいなら斬る事が出来るのに、相手は盾で防ぐ事が出来ているのだ。流石に盾も無傷とはいかないがこの試合中に斬り裂くのはまず不可能と言えた。
「それはこちらのセリフだな。俺の盾に傷を付けるなんてこの国では見た事がないぞ」
「一応、設定では私達のギルドの秘蔵の一品だからね」
「…弱小ギルドですら、そんな武器を隠し持っているとはこの国の底がしれんな」
相手が勘違いをしているのはナビコスにも分かってはいたが目的も分からない魔族に余分な情報を与える必要はないと判断しそのままにする事にした。
戦いは続くがナビコスは攻めきれないでいた。相手が盾を上手く使いナビコスの剣を受け流しては攻撃をしてくる為、徐々にだがダメージを受けているのだ。このままではいけないと判断したナビコスはマオに事前に決めていた作戦の決行を頼んだ。
「師匠!ヴィータを使いたいのであれをお願いします!」
「了解じゃ」
そう言うとマオはファイアーボールを無意味にも思える真上に放ったのだ。その行動と爆発音に観客全員の目が集まる瞬間、ナビコスはヴィータを抜き相手の盾を斬り裂いた。
「な、なに!?」
「ここからは私の番だよ」
ナビコスの言葉通り相手は腰の武器も警戒している為、防戦一方になったのだ。
「…このままでは不味いな。おい、あれを使え」
その言葉で相手チームの盾役が突然火を吐いたのだ。その火はナビコスとドライブを吹き飛ばしてなお勢いを失わずマオの所にまで襲ってきた。
「…これで終わりだな。………なに!?」
相手が勝ち誇りながらそう言い表示されているHPゲージを確認して驚いた。ナビコスとドライブのゲージは残り3割ぐらいまで減っているがマオのゲージは全く減っていないのだ。
「それぐらいの事はしてもらわねばつまらんからのぅ」
火が収まった跡地で水の中に平然と立っているマオがいた。周囲の安全を確認したマオがアクアフィールドを解除して相手を見つめた。
「…まさかあれを受けて無傷とはな。お前には火が効かないと見て間違いがなさそうだな。なら!」
男は地面に手が触れたと思ったらマオの足元が勢いよく盛り上がりマオは上空に吹き飛ばされてしまった。
「いくら火に強くても上空から落ちればひとたまりもあるまい」
しかしいくら待ってもマオは落ちてこない。それどころか騒がしかった観客が上を見たままの姿勢で静まり返っているのだ。
「い、いったい何が!?」
落ちてこない相手を探すべく上空を見てみると、そこには背中に透明な翼のような物を着けて空に浮いているマオの姿があった。
「馬鹿な!?空を飛ぶだと!ありえん、何だあの翼は!?」
「次から次へと面白い攻撃がくるのぅ。…そろそろ妾が攻撃を仕掛けても良いじゃろう」
マオの左腕に装備している腕輪が光ったと思うと左手には本が握られていた。そのまま本を開くと右手に持っていたはずの杖が消えた。
「上手く避けて死ぬでないぞ。<岩石落とし>じゃ」
「なにーーーー!?」
上空に突然大岩が現れたのだ。それは3メートルはある岩で魔道具で出して石なんて比較にならなかった。上から真っ直ぐ落ちて来る岩を何とか避けるがその振動と音でハリボテではなく本物の岩だと認識するしかなかった。
「どんどん行くぞ。しっかり避けるんじゃぞ」
そう言ってマオは2個3個と次々岩を落としていく。そして観客も見守る事しか出来ない中で1人、また1人と観客が異常な現象に気が付いていく。
「…おい、あの子のMP…ほとんど減っていないぞ。あんなに大岩を出しているのにだ」
「本当だ!まだ2割も減っていないんじゃないか?」
確かにマオは大岩を出しているが、実はこれに魔力は使っていないのだ。マオの出した本は1ページ毎に魔石を合成している魔道具なのだ。全てをアクセサリーなどにしていては不便だろうと考えた大輝が本の形にして毎ページ違う効果の魔道具にすれば装備が楽になるんじゃないかと思って作ったのだ。そして今マオが使ったのはアイテムなどを収納する魔石で作ったページで、1種類しかしまえないが数に制限がないので依頼で鉱山に行って落ちている大岩を収納してきたのだ。見た目はマオが大岩を放っているように見えるが、実は落としているだけなので空中にいないと使えないのだが取り出しているだけなので魔力は使っていないのだ。
「さて、そろそろ降りて戦うかのぅ」
「馬鹿が!わざわざ3対1に挑みに来るとはな」
大岩が落ちて来るプレッシャーにやられたのか全員息が上がっている。マオが地上に降り立ち翼をしまう。
「3対1?3対3の間違えじゃろ」
「何を、お前の仲間は既に………なぜだ!」
そこには無傷になっているナビコスとドライブが立っていた。慌てて表示を見てみると2人のHPはほぼ全快になっているのだ。
「師匠すみません。油断してしまいました。魔族だって事前に知っていたのに普通に戦ってしまいました」
「…なぜその事を知っている!?」
ナビコスの話で自分等が魔族だとばれていた事に驚き目を見開いている。
「私は気が付かなかったけど師匠は見ればすぐに分かると言ってたよ」
「そんな馬鹿な事があるか!」
「…私もそう思うんだけど事実だからしょうがないよね」
「………奴は危険だ。殺す気でやらねば勝ち目はない!」
そう言うとマオに向かって走って来た。
「相手をチェンジするぞ!ナビコスは魔導士をドライブはそのままじゃ。1対1じゃ!もう無様な姿を晒すでないぞ」
「「はい!」」
マオは本からクリスタルの細剣を取り出し本は腕輪にしまった。
「馬鹿が!魔導士が剣士に接近戦で適う訳がないだろう!」
「それはどうかのぅ?魔法は使い方しだいでどうにでもなると思うぞ」
そして再度各自の戦いが始まった。




