43話 ギルド対抗戦
43話 ギルド対抗戦
一先ず出場する選手は決まったので大輝達はジェームズ達と別れ宿に戻ってきた。
「これが大輝さん達が留守の間に増えた薬草です」
そう言ってリリィは薬草30個を渡してくれた。
「ありがとう、部屋に戻ったら早速ポーションに加工しちゃうよ」
「あのー、錬金術を使わないでポーションを作る事は出来ないのでしょうか?」
「いや、出来るよ。ただ楽だから錬金術を使っているだけだから」
「もしよければ、その製造方法を教えて欲しいのです。…今回以上の長期の依頼でここを離れた時に薬草のままだと保存が効かないので加工出来れば無駄にならないかと思いまして。……それとこれは出来ればで良いのですが、モンスターと戦闘が発生する依頼を受けた冒険者に1本づつポーションを渡して生還率を上げたいと思ったんです。もちろん横流しするような人には渡しません、口止めもします。…どうでしょう?」
リリィの中ではポーションは高級品の感覚があるようだ。それをただで配ると言っているのだからリリィのギルドに対する気持ちは大きいようだ。
「どうしてリリィはそこまで冒険者ギルドにこだわるのじゃ?恐らくじゃが薬草をそのまま売ってしまえばかなりの財産になると思うのじゃが?」
「…あのギルドは父の形見なんです。父は普通の冒険者だったんですが依頼に失敗してしまいこの宿に治療の為に泊ったんです。ですが治療費に宿の宿泊費、そんなお金がいつまでも続く訳がありません。そんな父に母が気付いて宿泊費も取らずに泊めてあげたんです。その後父の怪我は治り母が献身的に治療してくれた事に惚れて結婚しました。ですが冒険者としてしか生きてこなかった父は宿屋経営なんて出来ませんでした。それで何か出来る事はないかと考え、無料で宿に泊めてくれた母のように困っている人を助けれるギルドを作ったのです。もちろん困っている人の依頼は依頼料も安く誰も受けてはくれませんでした。その都度、父が依頼をこなしていましたが年のせいもありモンスターに殺されてしまいました。ですが私はそんな父を誇りに思っています。だから私はここのギルドマスターとしてやっているんです」
リリィはいつも冒険者の心配をしていた。依頼で命が尽きるのは冒険者としては仕方がないと分かっているが助けられるなら助けたいと思って無理を承知で大輝にポーションを分けて欲しいと言ってきたのだ。
「…なるほどね。…リリィは僕達が拠点となる家を探しているのは知っているよね?」
「はい、冒険者としてお金を貯めているはその為と聞いています」
「なら宿の部屋を一室無料で貸してほしい。僕達は2人で8本もポーションがあれば足りるから余った分のポーションはリリィが好きに使ってくれて構わない。もちろん食事代は払うよ。あくまで宿代だけって事でどうかな?」
「ありがとうございます。それで構いません」
その後大輝はリリィにポーションの作り方を教えて、容器としてクリスタルで瓶を50個ほど作って渡した。大輝が8本分受け取ったのでリリィの手元にはまだ7本しかないが、それでもまだ薬草は増えていくので今のところ数の心配はいらない。後、盗難の防止の為にダンジョンで拾ってきた<格納の魔石>でネックレス型の魔道具を作りポーションを収納出来るようにした。収納出来るのは1種類だが大輝のカードと違って数は関係がなさそうなので便利だ。
「大樹さん薬草に続いて瓶に魔道具とこんなに貰って良いんですか?」
「まー僕もギルドを大きくすると約束したしこれぐらいはね。でも取り出すところは見られないようにしないとリリィに危険が及ぶから気を付けてね」
「はい、何から何まで助かります」
リリィが深々と頭を下げて大輝にお礼をした。
「さて、リリィの要件が終わったなら次は妾の番じゃな」
振り返って見るとそこには椅子の上で仁王立ちしているマオがいた。
「…えーと、やっぱり仮面の話でしょうか?」
「もちろんそうじゃ!」
「マオはどんな形の物がいいの?」
「そうじゃのぅ、顔が見えない事で妾の魅力が上がるようなのがいいのじゃ」
「……………」
大輝は困っていた。マオの表現があまりに抽象的過ぎて意味が分からなかったのだ。
「…マオはその仮面を本来の目的で使うならどんな所で使うんだい?」
「?そんなの舞踏会などに決まっておろうが」
「なるほどマオは仮面舞踏会などの仮面をイメージしている訳か」
マオのいた世界は文化レベルが中世に近かった為、大輝は何となくだがイメージが固まった。問題はマオの魅力を上げるというところだが、マオの魅力は可愛さだと思う。ならばそこを押す感じで作ればいいと大輝は考えた。
「大輝よ、出来そうか?」
「一応のイメージは出来たから作ってみるよ。あまり過度の期待はやめてね」
そうして大輝は製作を始めた。ベースはクリスタルで色は表面に細かい傷を付ける事で白に見えるようにして、目と鼻をだけを隠して仮面の上部に猫をイメージした耳を付けた形にした。防御力などは求めず極力薄くそして軽くする事で激しく動いてもずれないようにと考えたのだ。
「どうかな?マオの可愛さが上がるようにしてみたけど」
「おー、これが妾の仮面か!一度着けてみたかったんじゃよ」
「?マオは舞踏会とかに出た事がなかったの?」
「魔王が人間の舞踏会に参加なぞ出来る訳がなかろう。じゃが力を失くしてから憧れがあったのじゃ」
「…そっか、なら舞踏会じゃないけど対抗戦で存分に踊ればいいよ」
「うむ!存分に楽しんでくるぞ!」
大輝の作った猫型の面を持ち対抗戦が楽しみなのか満面の笑みで答えた。
次の日、ジェームズ達が宿に来て対抗戦での作戦の打ち合わせに来たのだ。
「対抗戦は基本どのチームも剣、盾、魔法の役割がある。まずは遠距離戦から始まり接近戦に入るのだが前の戦いでは遠距離攻撃が出来ずに完敗したんだ。そこでお嬢ちゃんの出番って訳だ」
「妾が相手が近づいてくる前に殲滅するという訳じゃな」
「違う!それはやり過ぎだ。お嬢ちゃん達はそんなに目立ちたくはないんだろ?だから相手の魔道具での攻撃を撃ち落として欲しいんだ。後は時々ナビコスを援護する形で攻撃してほしい」
「…妾も祭に参加したいのぅ。大輝よ何か接近戦用の武器が欲しいぞ。おそらくフレイムソードでは相手の盾ごと切り裂いてしまうから使えんじゃろうし」
作戦としては納得がいってもマオは離れて戦うだけでは嫌なようで大輝に武器を頼んだのだ。もちろん並の相手ならマオは近距離でもフレイムアローとファイヤーボールで圧倒は出来る。しかし各ギルドのトップが集まるのだから油断は出来ないのだ。
「ならナビコス達と共に近づいて行きながら相手の魔道具の攻撃を撃ち落とす。お嬢ちゃんにそれが出来るか?」
「うむ、任せるのじゃ!」
「…ならそれで行くがナビコス達もお嬢ちゃんの手に負えない攻撃が来るかもしれんから油断せずにいてくれ」
「「はい!」」
「それでは対抗戦までの間、お嬢ちゃんとナビコス、ドライブでチームを組んで依頼をこなしチームワークを高めてくれ」
ジェームズの考えは理に適っていた。対抗戦に向けてのチームワーク向上と依頼をこなしてギルドの実績を稼ぐ事が出来るのだ。
「なら僕はマオの武器作りと街中での依頼をこなして行こうかな」
「それは助かります。街中の依頼は人気がないので受ける人が少ないんですよね」
大輝の案にリリィが喜んでくれている。確か前に受けた解体依頼も引き受ける人がいないと言われたのを思い出した。
「あ!、3人共これを持っていってよ」
そう言って大輝は3人にペンダントを渡した。
「…これは何ですか?」
ナビコスがペンダントを見て首を傾げている。
「これは格納機能を持った魔道具だよ。リリィにも渡したけど道具を1種類だけだけどいくつでも収納出来る魔道具なんだよ」
「格納した物を出すイメージをするのじゃ。そうすると」
マオがペンダントの中に入っていたポーションを1つ取り出して見せた。
「マオにポーション、ナビコスに毒消し、ドライブには携帯食料を収納しているから必要になったら使ってよ」
「こんな便利な物があるなんて……大輝さんがダンジョンで何もない所から食料を出していたのはこれを使っていたんですね」
「あれはまた別物だよ。これは昨日のダンジョンで手に入れた魔石から作ったんだよ」
「!?、まさかこれってクリスタルゴーレムが出てきたトラップの!?」
ナビコスとドライブが死にかけたトラップを思い出し驚いている。
「せっかくの魔石だもの有効利用しないとね」
「…普通はトラップを解体して再利用なんて考えないと思うんだがな…頼む、俺にも1つくれ。数がないのは分かっているが冒険者としてこれは便利すぎる魔道具だ」
呆れながらも逞しさを感じているジェームズが恥も見栄も捨てて頼んできた。
「大丈夫ですよ。全員分用意してますから」
「そ、そうか。悪いな、これは便利過ぎる魔道具だからな。ぜひとも欲しかったんだ」
そうして大輝は武器作りと街中依頼をこなし、マオ達は外での依頼を、ジェームズはその両方をこなしていきギルド対抗戦の日を迎えた。




