40話 クリスタルダンジョン脱出
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40話 クリスタルダンジョン脱出
「前方に4体、後方に6体のクリスタルゴーレム出現!どうしますか?」
ナビコスが現状を報告し対応の指示を待つ。
「妾と大輝で6体の方を相手するから4体の方を任せたぞ」
マオの提案に全員が納得し各チーム分かれて戦う。大輝達は個別で動き敵に的を絞らせずに戦いまた1体また1体と危なげなく数を減らしていくがジェームズ達はそうは行かなかった。4体相手だとどうしてもドライブの負担が増えてしまい、陣形が崩れていく。そして大輝達が6体を倒した時、ドライブの防壁が崩壊した。度重なる攻撃で盾を支えきれず横に弾かれたタイミングで腹を殴られ体ごと壁に吹っ飛ばされたのだ。
「ドライブ!大丈夫か!?」
しかしドライブは壁に叩きつけられた後、そのまま崩れるように倒れてしまい返事がない。2人は最悪の状況を想像してしまう。
「ドライブ!?…よくも!!!」
ナビコスが両手に武器を持ち、連続で斬りかかり始めた。両手での攻撃なので間が開かず次々とクリスタルゴーレムを削っていく。しかし両手に武器を持って戦えば攻撃力は上がるがどうしても防御力は下がるものだ。しかも頭に血が登っている状態だった為、なんとか一体目を倒したナビコスだが左右から挟まれるように攻撃を受けてしまった。
「ナビコス!?」
ジェームズの言葉に反応がない。ナビコスが倒れた後ようやく大輝達が合流した。大輝は残り3体の敵を確認した時、ナビコスとドライブが倒れているのに気付き問いかける。
「ジェームズさん、ナビコスとドライブの様子はどうなっています?」
「ここからではよく分からんが言葉に反応しない。ナビコスは2体に挟まれるように殴られ、ドライブは度重なる攻撃で盾を弾かれ無防備な腹に一撃を貰ってしまった」
「…急がないとやばいかもしれない!マオ、ジェームズさん、速攻で倒すよ!」
宣言通り残り3体のクリスタルゴーレムを倒し、ナビコスとドライブの様子を見に行った。
「ジェームズさん!2人の様子はどうですか?」
「…2人ともかなりの重傷だ。お嬢ちゃん2人同時に回復魔法は掛けれるか?」
2人とも意識はなく、ドライブは咳と共に血を吐き内臓がダメージを受けているのが分かる。ナビコスは挟まれるように攻撃を受けたので全身の骨が折れており内臓もかなりのダメージを受けている。
「無理じゃ、治るまで1人に付きっきりになってしまうぞ」
「そんな…」
マオの言葉にジェームズは2人の内どちらか1人を諦めないといけないのか思い気を落としている。
「何を落ち込んどるのじゃ?妾はドライブを治すから大輝よ、ナビコスを頼むぞ!」
「任された!」
そうして大輝はより重傷そうなナビコスにポーションを取り出して飲ませる。その瞬間、薬草の時以上の光りがナビコスから発せられ、収まった時には顔色も良くなっておりナビコスは目を覚ました。
「…あれ?私、クリスタルゴーレムに殴られて……あ、そっか師匠の回復魔法で助けてくれたんですね!」
ナビコスが勘違いする中、今の現象に信じられないと言いたそうな顔でジェームズが大輝に問いかける。
「…大輝、今のはなんだ!?ナビコスに飲ましたのはいったい何なんだ?死ぬまで時間の問題だったはずなのに一瞬で完治させてしまうなんて…」
ジェームズの言葉に自分を治してくれたのがマオではなく大輝である事を知ったナビコスも問いかける。
「もしかして大輝さんも回復魔法を使えるのですか?」
「…いや、あれは回復魔法なんて生易しいもんじゃなかった。お前の傷は一瞬で治してしまったんだ。あそこまで即効性のある魔法なんて聞いた事がない」
「あれはポーション、…魔法薬の一種、で合ってるかな?それを使っただけだよ。使い捨ての魔道具みたいな物って言えば分かりやすいのかな?」
「そんな物があるんですか!?でも使い捨てって事は私の為に貴重な魔道具が1つなくなったって事ですよね。…すみません私が頭に血が登ってしまい無謀な事をしたせいで…」
魔道具は数もそんなに出回ってはなく、決して安くはない。最初は驚いていたナビコスだが高価な魔道具を使わせてしまった事に気づき大輝にあやまり始めた。
「いいよ。町に帰ればまた補充出来るし、死んでしまったら効果がないから間に合って良かったよ」
「ありがとうございます。…それにもし二度と手に入らないような物だったらと思ったら、どうしたら良いか分からなくなっていましたよ」
ナビコスは気が抜けたようにその場に座りこんでしまった。しかし大輝の説明では納得いかない者がいた。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!大輝は魔道具と言ったが人の怪我を治す魔石って何だ?ここらで手に入るそれらしい魔石といえば<地霊石>だがあれはレア素材だ。町に行って簡単に補充出来る物ではないぞ」
「…もうそれぐらいでよかろう。大輝が何を使おうが結果、ナビコスが死なずに済んだ。…それが全てじゃろ?」
ドライブの治療を済ませたマオが話しに入り、ジェームズに詮索無用と言い切ったのだ。
「だが!?………いや、そうだな。確かに大輝のおかげでナビコスが助かったんだ。ありがとう感謝する」
そうして話は無事に終了し、大輝はモンスターが現れた箇所を調べると<格納の魔石>が10個あった。そうして進む事1時間、5階層に飛ばされた魔法陣の所まで辿り着いた。
「…やっとここまで帰ってこれたな」
「そうですね…クリスタルドラゴンの前に飛ばされた時は死を覚悟しましたよ」
「私達は運が良かったですよね。師匠達が一緒に依頼を受けてくれなければ帰って来れなかったですよ」
大輝が今回のトラブルの原因となったトラップを回収している様子を見ながらジェームズ達が呟いている。そうして大輝が<転送の小石>と魔法陣を回収し、その後無事にダンジョンを脱出出来た。
「今回は我々の我儘から危険なトラブルに巻き込んでしまいすみませんでした」
無事に町に帰ってきた依頼人がジェームズ達に謝ってきた。
「今回のトラブルはあまりにも想定外な事なので貴方達に原因があった訳ではありませんから気にしないでください」
「そう言ってもらえると助かります。今回の採掘は予定以上の量と質を確保出来ましたので、せめて依頼料は3倍出させて貰います。それに冒険者ジェームズと大輝の名前は覚えさせてもらいますよ。是非とも次の採掘の時もよろしくお願いします!」
依頼人は今回の事で5階層までいける冒険者と知り合う事が出来たのだ。この繋がりがある限りまた高品質のクリスタルを採掘しに行けるのだから離すはずがないのだ。
「…あの部屋はボス部屋ですから行けませんよ。あまりにも危険ですからね」
「分かっていますよ。でも4階層までなら余裕ですよね?正直4階層は5階層とそんなに質が変わらないクリスタルが採掘出来そうだったので十分なんですよ」
「…あんなに危険な事が起こったのに怖くはなかったのですか?」
「確かに恐怖はありますよ。ですが我々職人は上質の素材が手に入るのを指をくわえて見ているだけは出来ないのです。なのでその時はぜひよろしくお願いしますね」
恐怖より素材集めを優先する職人の性を見せて貰った瞬間だった。
「それなら僕からも1つお願いがあります。…今回ダンジョンで起こった事を広めないで欲しいのです」
「それなら大丈夫ですよ。今回の事で同業者に素材の差を付けるチャンスなのです。口外なんてもってのほかですよ」
「…商売人じゃな。じゃが妾達は忙しいから毎回依頼を受ける事は出来んかもしれんがのぅ」
そうして大輝達は依頼人と別れた。
「大樹、今回作って貰った武器の代金を払いたいのだがいくらだ?」
「代金ですか…相場はいくらぐらいなんですかね?」
「…正直クリスタルを武器にしたなんて聞いた事もないからな。…正直分からん」
水晶は所詮は石なのである。それを武器にしても壊れやすい為、あったとしても観賞用の武器でしかないのだ。それを実戦レベルで使えて尚且つ高レベルの攻撃力を持っているなんて普通は売っていないのだ。
「そういえばお前達は転移のダンジョンに用があったんだよな。それなら冒険者ランクを上げる推薦状を出そう。ランクが上がればダンジョンへの許可が出やすくなるだろう。…どうだ?」
「それは良いのぅ。大輝よ、悪くない条件だと思うがどうじゃ」
「僕もそれで構いません。ぜひお願いします」
そうして大輝達一行は冒険者ギルドに依頼達成の報告とランクアップの推薦をしてもらいに向かったのだった。




