37話 クリスタルダンジョン攻略
37話 クリスタルダンジョン攻略
依頼人とジェームズ達が消えた場所に大輝達は歩いて行った。ナビコスが言っていた通りその場に着いた途端足元が光だし大輝達の視界がガラリと変わった。そこは壁一面クリスタルが生えている大きな部屋であった。
「大樹さん、師匠!あそこにジェームズさん達がいます」
ナビコスが指を指した方を見ると、ジェームズ達が大輝達から離れるような方向へ逃げている。
「何じゃあのモンスターは?」
「クリスタルのドラゴン?」
ジェームズ達を追いまわしているのは翼はない四足で走る巨大なクリスタルのドラゴンだった。ドラゴンの口からは火が溢れており、放てばジェームズ達を仕留めれるのにしないという事はおそらく狩りでを遊んでいるのだろう。
「た、助けに行かないと!」
ナビコスは震えながらも助けに向かおうとしている。
「ナビコスよ、お主は少し離れた所で待っておれ。妾達があ奴を引きつけるからその間に合流して隅で依頼人達を守るのじゃ」
「マオ、ちょっと待ってて」
そう言うと大輝は壁のクリスタルを錬金術で採掘しそのまま盾を作った。クリスタルで出来た盾は1.5メートルぐらいの大きさで、色がなく透明なので体を隠しても相手が見えるようになっていた。
「これをドライブに渡してください。おそらくあのドラゴンは火を吐きます。クリスタルを数回圧縮しているので何回かは耐えれるはずなので火が来た時は一列になって凌いで」
「わ、分かりました。…すみません、力になれなくて」
ナビコスが申し訳なさそうな顔でいる。
「何を言う!連絡役なども必要な事じゃ。それにお主達が依頼人を守ってくれるから妾達が攻撃に専念出来るというものじゃ」
「…師匠、ありがとう。…そちらも気を付けて」
そう言ってナビコスは離れていく。
「まずはあ奴に気付いてもらうかのぅ。…<ファイヤーボール>!」
マオの放った火の玉がドラゴンの背中に当たる。ダメージはなさそうだが追い掛ける動きが止まり大輝達の方に振り向いた。さらに注意を引く為にタマに狐火を放ってもらい攻撃していく。ゼロではないだろうが避ける必要がないと判断される程度のダメージのようだ。
「威勢の良い食糧が来たものだな」
「しゃべった!?」
ドラゴンが人語を話た事に大輝は驚いた。
「落ち着かんか。上位のモンスターが言葉を話すのは珍しい事ではないぞ」
マオが小声で「妾のようにな」と言い大輝を落ち着かせた。
「…お前は何者なんだ?ここのダンジョンボスはジャイアントゴーレムと聞いていたんだけどね」
「くくく、あんなただでかいだけの奴、俺が食ってやったわ」
「なら、お前がここに居座った魔王と言う訳か」
「ほう、俺が魔王だと知ってた上での事だったか。なかなか面白いやつだな」
ドラゴンがゆっくり大輝達の方へ近づいてきた。その様子を見ていたジェームズ達がナビコスに気付き合流した。
「ジェームズさん!師匠達からの伝言です。部屋の隅に集まって依頼人を守ってくださいとの事です」
「だがそれでは大輝達に負担が集中していまうぞ」
「…私たちがいても恐らく邪魔になるだけです。それより大輝さんの予想では奴は火を吐くらしいです。それでドライブにこれを渡して、火が来たら一列になって凌いでほしいとの事です」
そう言ってナビコスはドライブにクリスタルの盾を渡した。
「な、なんなんだこの盾は!?透明で薄くそのくせ俺の盾より明らかに防御力があるぞ!」
「それはさっき大輝さんが作ったクリスタルの盾だよ。あいつ火にも何度か凌げるらしいから防御は任したよ」
「馬鹿な!?奴が火を吐くのは知っている。俺の銅の盾はその火1発で溶かされてしまったんだぞ!」
ドライブの疑問に依頼人から助言が出てきた。
「そ、その盾が普通のクリスタルを加工して出来ているなら無理だろうが、見た事がないほどの密度と透明度がある。これは凄いぞ!こんなのがこの部屋で取れるなんてぜひ採掘して帰りたい!」
「…それはこの窮地を乗り越えてから言ってください。それよりドライブ、師匠達の強さを見て知っているでしょ?今は貴方の新しい相棒を信じてあげて」
ドライブは自分が持っている盾を見つめながら頷いた。
「……分かった。俺の命も皆の命もこいつに預ける!皆、俺の後ろに隠れろ」
そうしてドライブを先頭にしてドラゴンと一列に並んだ。
ドラゴンが歩いて来るのを見ながら大輝は部屋を見回した。
「見た所この部屋には扉がないんだけど、どういう事かな?」
そうこの部屋には不自然に扉や出入り口がないのだ。
「俺を前にして脱出の心配するとはな。安心しろお前達は逃げる事は出来んぞ、この部屋の出口は俺を倒さないと現れないからな」
「なるほどのぅ、転移の罠を張って獲物が来るのを待っていると言う訳か」
「そう言う事だ。人間は欲が深いから、少しでもクリスタルを取ろうとすぐ奥に進んでくるからな。くくく、まだ安心、まだ安全と思い込み罠にはまりに来るのは面白いものだぞ」
ドラゴンは今までに罠にはまってしまった人を思い出して笑っているようだ。しかしドラゴンは疑問に思う事が出てきている。
「…お前達はまるで絶望しているようには見えないのはなぜだ?さっきの奴らは逃げ場がないこの場で、恐怖に顔を引きつって逃げていたのにお前達にはそれが全くない、実につまらん奴だ」
「僕達はまだ何もやっていないからね。絶望と決まってない以上、諦める必要はないよね」
「なるほどお前達は力の差も分からぬ愚か者と言う訳か」
「さて、妾はマオ、こっちは大輝、この子はタマ。お主は言葉を話せると言う事は名を持っているのじゃろ?ほれ、名乗るがよい」
マオの大きな態度でいきなり始めた名乗りにドラゴンは意味が分からなかった。
「…俺は<クリード>だ。しかしなぜ名を名乗る?」
「そんな事は決まっておろう。取り込む者の名を知っておきたかったのと、お主を倒す者の名じゃ。名も知らぬ者に倒されれば納得もいかんじゃろう」
「……本物の愚か者だったか。もう良い、さっさと死ぬがいい」
そう言うと話は終わりだと言わんばかりにクリードは火を吐き、大輝達は火にのみ込まれた。
「ふん、もう終わりか。少しぐらいは抵抗すると思っていたんだがな」
「なら抵抗してあげますよ」
「なに!?」
声が聞こえたと思ったら火の中から風が吹き抜け、クリードの右前足の根元から砕き通りすぎた。
「なんて硬さだ。鉄のランスが一発で壊れてしまったよ」
クリードの足を砕いた風の先を見てみるとそこには大輝がいた。先ほどまではなかったはずの先端が潰れてなくなっている大きな槍を持って武器が壊れた事を残念がっていた。
「今のはお前がやったのか?人間がどうやってあの火から生き残った?」
「…妾を無視して後ろを向くとは油断しすぎじゃぞ」
大輝の方を向いているクリードの後ろからマオはフレイムソードで尻尾を切り裂いた。
「ぐぅあ!!」
「大輝よ、早速お主に貰ったプレゼントが役にたったぞ」
「せっかく似合ってる服が燃えなくて良かったよ」
「フフ、嬉しい事を言ってくれるのぅ」
「…お前達、何者だ?」
大輝と合流したマオが戦闘中とは思えない軽い会話をしていると、クリードは右前足と尻尾を失った状態で体勢を整えて問いかけてきた。
「何者と言われても9級の冒険者とその連れ…かな」
「そうじゃのぅ、勇者は別にいるから今の妾達はただの冒険者じゃな」
「……まともに答える気がないならそのまま死ね!」
クリードは体に魔力を纏わせ口を開けながら突っ込んできた。その突進をかわしながら大輝は鉄の刀で後ろ脚を斬りかかり、マオはフレイムソードで胴を斬った。しかし胴も後ろ脚も少し斬れただけで切断には至らなかった。
「…体に魔力を流して防御力を上げているのか」
「スピードは変わっておらぬから大丈夫じゃが、あの硬さは厄介じゃな」
「なら攻撃力を上げるかな。マオ、少し時間を稼げるかな?」
「良い策があるならやるがよい。時間稼ぎは余裕じゃ!タマ、攻撃の数を増やし奴の視界をふさぐぞ」
「キュー!」
「しかし大輝よ、別にあれを倒して……」
「ストーープ!時間稼ぎだけ、それだけに専念して!」
「う、うむ?分かったのじゃ」
マオは大輝の急な力強い言葉に頷くしか出来なかった。マオが言おうとしたのが死亡フラグの台詞の為、強制的に切り上げられたがなぜ大輝が何故そうしたかは分からなかったのである。そうしてマオがファイヤーボール、タマが狐火をクリードの顔に集中して攻撃を始めた。そうして大輝はクリードから斬り落とした前足の所にいた。そうして壊れたランスを取り出し前足と合成を行った。
「クリードの体のクリスタルは周りにあるやつより上質だからきっと通じるはずだ」
そうしてちゃっかりマオが斬り落とした尻尾をカードに回収し前線に戻っていった。
「…お待たせ。準備出来たからそろそろ止めを刺すよ」
そう言った瞬間再びクリードの突進がきて、慌ててかわした。
「…やはり当たらないか。ならお前達から当たりに来るように仕向けてやる!」
クリードは部屋の隅にいるジェームズ達に向かい火を吐いた。しかし大輝達は気にせず視線すら動きもしなかった。
「わーーー!!!ほんとにこっちに来た!ド、ドライブ任したからねーーー!!!」
「任せろ!予定通り縦一列になれ!」
ドライブの掛け声で皆クリスタルの盾の陰に隠れるよう並んだ。その瞬間クリードの火が盾に当たり2つに割れるように火は後ろに通り過ぎた。
「馬鹿な……奴の持っていた盾は先ほど俺の火で溶かしてやったのに今度は無傷だと…」
火が消えた後、全員無傷である事が見えクリードは驚愕している。
「あの盾は先ほど大輝が渡したやつじゃ。そう簡単に抜けると思ったら大間違いじゃぞ」
「く、くそったれがぁああああ!!!」
怒りをあらわにするクリードを冷静な目で大輝が見詰める。
「これで終わりだよ。クリード」
大輝の手には最初に見た時より大きく、クリスタルが混ざっているランスがクリードを捉えていた。
「…また突然武器が現れおった。それにその武器のクリスタルはまさか……」
「そう、クリードの前足だよ。僕は錬金術師だからね、これぐらいは朝飯前さ」
そうして爆音と共に大輝の姿が消えクリードの腹に大穴が開いた。
「この俺がこうもあっさりやられるとはな。……大輝とマオ、タマだったな。…確かに名を聞いておいて良かったな…」
「お主は強者と戦い敗れただけじゃ、魔王として後悔はあるまい。それに安心せい、お主の力は妾の中で糧として生き続けるからのぅ」
その言葉を聞きクリードがマオを見てその正体に気が付き、かすれるような声で呟いた。
「…そうか、お前も魔王だったのか…人間と行動を共にするとは変わった奴だ…」
そう言ってクリードは動きを止めた。マオはクリードに近づき手で触れるとゴブリンロードの時と一緒で黒い塊が出てマオの中に入っていき、クリードの体は霧のようになり消えてしまった。
クリードが跡形もなく消えると同時に部屋の一角で音がなり道が現れた。
「助かったのか?」
「ええ、師匠達がやってくれました!流石、師匠です!」
ジェームズや依頼人達はドラゴンが消えていくのを見て呟いていた。唯一、勝利を信じていたナビコスは現状を正確に把握でき危機は去ったと伝える事が出来たのだった。




