36話 クリスタルダンジョン第3階層
36話 クリスタルダンジョン第3階層
第1階層の進行は順調だった。唯一の不安箇所だったナビコスの守りもドライブが戻ってから安定してモンスターを倒している。前方のジェームズも複数の敵が出てきた時はマオが援護しているので問題はなかった。そうしてしばらく進むと2階層への階段に着いた。
「さあ、ここからが本番だ!気合い入れてけよ!」
ジェームズの掛け声の後に階段を下りて行った。
「お譲ちゃん、魔力は大丈夫か?結構魔道具を使っていただろう」
ジェームズは何度か手助けして貰っているのでマオのMP残量を心配しているようだ。
「まだまだ大丈夫じゃよ。まだ3割も使っておらん」
「あれだけの魔道具を使っておいて3割か…流石だな」
マオの言葉を聞き安心と心強さを感じながら2階層に着いた。2階層は所々でクリスタルが壁に見える。しかしまだこの辺りのクリスタルは小さいようで採掘場ではないらしい。そしてそのまま進むが出て来るモンスターはクリスタルドックばかりで1階層と変化がない。
「下の階に来たけどあまり変わらないね」
「そうじゃのぅ、モンスターもダンジョンの構成もガラリと変わると思っておったんじゃがな…」
大輝とマオの期待外れ感が見てて分かるほど落胆していた。
「おいおい、勘弁してくれよ。そんな危険なダンジョンなら採掘なんかに行かないよ」
2人の話を聞いていた依頼人の1人が突っ込みを入れた。
「どこのダンジョンでも2階層ぐらいではそんなに危険はないぞ。ここも4階層まで行かないとモンスターに変化はない。そんなに変な期待はするな」
続いてジェームズにも怒られた。
「…すみませんでした」
「まー貴方達の実力では物足りない敵かもしれませんが、今回は依頼と言う事で我慢してください」
「大丈夫です。仕事はきっちりこなします」
「信頼してますよ。さあ、進みましょう」
大輝達の会話で全員適度にリラックスが出来た。そうしてたいした危険もなく採掘場に着いた。採掘場は大きな道から横の小道を入った所にあり、そこは今までのスペースに比べてかなり広い部屋だった。
「さて我々は採掘に入ります。周囲の警戒をお願いします」
そうして一角に集まり採掘を始めた。
「後はここでモンスターを見付けたら倒せば良い訳ですね」
「そうだな。ここは広いし交代で護衛をするか」
そうしてジェームズのチームと大輝達で交代して護衛をしていた。そうして暫くした時、依頼人からジェームズに話が来た。
「相談なんだが、…3階層に、向かうのは出来ませんか?」
「3階層に!?どうしたんです?何があったんですか?」
依頼人の3階層行きの相談にジェームズは驚き、事情を聴き始めた。
「実は…この採掘場で思ったよりクリスタルが取れないのです。それで前に3階層にまで潜って発見した採掘場に行ってほしいのです」
「確かに3階層はまだ危険は少ない所ですが…絶対とは言えない場所ですよ」
「それは分かっています。依頼料も上乗せさせてもらいますので、どうかご検討をお願いします」
「…分かりました。俺の一存では決めれませんので少し話をしてきます」
そう言うとジェームズは大輝達の所に歩いてきた。
「みんな、話は聞こえていたと思うが3階層に行って欲しいとの事だ。どうしたいか意見をくれ」
「私はジェームズさんに任せます」
「俺もまだ余裕があるのでジェームズさんの判断に従います」
ナビコスとドライブはジェームズの判断に従うらしい。
「妾はどちらでもよいぞ」
「僕はクリスタルを少し採掘したいので多い所に行くのは賛成ですよ」
「…分かった。なら危険を感じたら即撤退で3階層に向かう事にする。それでいいな」
「「「「はい(うむ)」」」」
こうして大輝達は3階層に向かう事になった。3階層への階段はこのスペースの近くらしくすぐに到着した。
「ここから先は基本、モンスターは変わらないが極稀に4階層に住んでいるクリスタルゴーレムが現れる可能性がある。奴らは壁に同化して隠れて襲ってくるから気を付けろ」
そうして3階層に足を踏み入れた。
「ここから先の案内をお願いします。俺は採掘場を知らないので」
「分かりました。道は指示しますのでモンスターへの対応をお願いします」
3階層は2階層と比べ瘴気が濃くなっていた。そして大輝達が進む道の先から更に濃い瘴気が流れてきているように感じる。
「大輝よ、気付いておるか?」
「…うん、今進んでいる道の先から濃い瘴気が流れてきているね。これは警戒を強めないと危ないかもね」
「おそらく、先ほどまでの犬っころより強いモンスターがおるじゃろうな」
大輝とマオが警戒を強めた空気を感じ、他のメンバーも周りを警戒した。そうして着いた採掘場は先ほどとは違いメインの道上にあり、ここだけ空間が広がっているようになっており奥を見ると先に進める道があった。
「ここが3階層での採掘場です。危険なので早速採掘を始めますので護衛をお願いします」
そうして2度目の採掘が始まった。採掘する場所はこのスペースの中心付近の壁だった。
「このスペースと奥から感じる瘴気、……嫌な予感がするな」
「大輝どうした、浮かない顔をした?」
大輝が顔を顰めたのにジェームズが気付き声を掛けてきたのだ。
「…んー、このスペースの意味を考えると嫌な予感がするんですよね」
「このスペースの意味?」
「僕のイメージでは下に進む為に避けれない道にある広いスペースは中ボスが出る場所の気がするんですよね…」
「嫌な予感を感じんでくれ」
「妾も何か来る気がするのぅ。奥の道から流れて来る瘴気が少しづつだが濃くなっておる。もうすぐ何か現れるじゃろうな」
大輝の嫌な予感を聞いた後にマオの確信を感じている言葉を聞き、ジェームズはナビコスとドライブに声を掛け奥の道へ武器を構えた。その行動を見ていた依頼人達も緊張を高めた。
「…師匠、本当に何か現れるのですか?」
「間違いない。…ほれお客さんの登場じゃ」
「!?」
マオの宣言通り奥の道からモンスターが現れた。クリスタルゴーレム、全長2メートルぐらいで全身がクリスタルで覆われており綺麗なモンスターだった。
「…マジできやがった。まだ奴との距離がある。皆!来た道を引き返すぞ!」
そうして依頼人もクリスタルゴーレムの動きを見ながら後退を始めた。
「!?、待って!全員ストップ!」
「どうした!?」
「入口の左右の壁、今、動いた気がした」
「まさか!?」
獲物に隠れていたのがばれたと気付き、擬態をやめもう2体のクリスタルゴーレムが姿を現した。
「ま、まさか、罠を仕掛けていたのか?モンスターがそんな知恵を持っているなんて聞いた事がないぞ」
ドライブがあり得ないと驚き3体のクリスタルゴーレムに怯えていた。
「…いや、罠を仕掛ける事をする場合がある」
「大樹さんそれは?」
自由で自分の欲求に素直に行動するモンスターが組織だった動きをする事は大輝達は見て知っているのだ。
「それは、…このダンジョンに魔王がいる場合じゃ」
「「「な!?」」」
「モンスターは魔王の指示には従うのじゃ。この状態が偶然起こった事なら良いがのぅ、…まずありえんじゃろうがな」
マオの言葉にジェームズ達も依頼人達も他の可能性を考えるが思い浮かばない。そして考える時間も敵はくれないのであった。
「入口の2体が動き始めた!マオ、奥の敵をまず倒すよ。ジェームズさん達は依頼人を守っていてください。そしてタマ出てきて!ジェームズさん達を援護してあげて!」
「キューー」
大輝の声に我に返ったが、その後いきなり出てきた黒い狐に驚いてる。
「大樹!?こいつはなんだ!?」
「その子はタマ!僕の使い魔で味方ですから安心してください」
「いろいろ言いたいが今は信じるしかないな。ナビコス、ドライブ気合いを入れろよ!」
「「は、はい!」」
ジェームズ達は依頼人の前に陣を張り、クリスタルゴーレムを待ち構えた。
「大輝よ!いくらタマがおってもナビコス達には荷が重そうじゃ」
「分かってる。まずはマオよろしく」
そうして戦闘は始まった。先制でマオが<ファイヤーボール>を放ち、相手の顔に当たって少し後に下がったが決定打にはならなかった。そのまま大輝は進み鉄の刀に魔力を通して左腕を切り落とした。そして少し遅れてマオが<フレイムソード>を使い右腕も切り落とす。
「やはり硬いのぅ。それに妾とは相性が悪いようだし」
クリスタルゴーレムはロックゴーレムの亜種だけあって火の攻撃に強いのだ。
「やっぱりマオは火以外の攻撃手段を持ったほうがいいね」
「妾は炎が好きなんじゃがのぅ」
「それなら次は風の魔道具にしようか。それなら火の火力アップにも使えるし転移のダンジョンにも役に立つだろうし」
「なるほどのぅ、なら妾は大輝と違ってスピードは要らぬから、上空で静止出来るようなのが欲しいぞ」
「了解!そんな感じのを作ってみるよ」
そう言う会話をしながらも2人は腕に続いて足、肩と斬って行き魔道具の構想が出来た段階でクリスタルゴーレムの首を落として倒したのであった。
「さて、ジェームズさん、こっちは片付きましたので依頼人を連れて奥に行き守っていてください」
「もう始末したか。分かったこっちは任せるぞ。さあ!ゆっくり後退してください」
大輝達が来るまではゆっくり下がり、合流してから依頼人は一目散に奥の道へと走って行った。
「まずい!あいつ等だけで奥に行きやがった。大輝、すまんがここは任せるぞ。先頭は俺とドライプ、殿はナビコスで行く。着いてこい、遅れるなよ」
「はい!」
ジェームズ達は先に行ってしまった依頼人達を追いかけ奥の道に消えていった。
「マオ、慌てず1体づつ倒していくよ」
クリスタルゴーレムは動きが遅いので2人は片方に向かい、すれ違いざまに両足を斬り転倒させた。そして動けないのを無視して健全な相手に意識を集中させた。戦い方は同じで武器である腕を破壊し、足を奪い止めをさしたのだ。そうして動けなくなっていた方に止めをさすと奥から叫び声が聞こえてきた。
「うわぁーーーーーー!!!!!」
「!?、なんだ?今の声は依頼人達か?」
「急いで行くのじゃ」
大輝達は緊急自体の予感を感じ奥の道へ進んで行った。
「ナビコスよ、何が起こったのじゃ!?」
そこにはナビコス1人だけだ残されていた。
「し、師匠!私は殿でよく分からなかったんですが、突然前方が光って前を走っていた人が消えてしまったんです」
「消えた?いったいどこで?」
「この辺りです。ここから奥の方へ走っていたら消えてしまったんです」
「…転移のトラップが仕掛けられている」
「なら急いで合流しないとジェームズ達も苦労しているかもしれんぞ」
「…分かった。罠に自分から突っ込むのは気が引けるがしかたない。十分注意していくよ」
そうして大輝達はダンジョンの罠に自らはまりに行ったのであった。




