34話 驚愕のリリィ
34話 驚愕のリリィ
大輝達は冒険者ギルドに着いた。
「さて、良い依頼はあるかのぅ」
「受付で聞きたい事があるから、まずはそっちからね」
そうして大輝は受付に向かった。
「すみません。この国の近くに転移のダンジョンがあるって聞いたんですけど何処にあるか教えて欲しいんですけど」
受付のおっちゃんは「何を言ってんだ?」と言いたげな顔で大輝を見ている。
「…転移のダンジョンの位置を知って9級のお前がどうするつもりだ?」
「もちろん探索する為に決まっておろう!妾達はその為にこの国に来たのじゃからな」
普段ランク以上の依頼を受けている事を知っている受付のおっちゃんは「まだ早い無茶をするな」と言う意味を込めて確認してきたが、マオはまるでその事に気づいてはおらず当たり前の事のようにはっきり伝えた。その返答におっちゃんは顔を押えて下を向いてしまった。
「な、なんじゃ?妾が何か変な事を言ったか?」
「…お前達が普通の常識が通じないのは分かっているが転移のダンジョンがどのような場所か分かっているのか?」
「ダンジョンのトラップに人が消えるように移動してしまう物があると聞いていますが」
セイバの国でビックルに聞いているのはそれだけだったので大輝はそれしか知らなかったのだ。
「…ふー、確かに間違ってはいない。確かにそのトラップがメインだが飛ばされる場所はモンスターの巣とか大穴の上、天井付近とかがあり、引っかかったら即リタイアの危険な場所だ。そしてまだ誰も攻略者を出していないダンジョンだ。長年攻略者が出ていないダンジョンだから最深部が何処までかも分かっていないし、今もまだ成長を続けている」
大輝が想像していたのは仲間とはぐれたり、入口に戻される程度と思っていたが、話を聞き想像以上に危険なダンジョンと知り大輝もマオも声を出せないでいる。
「モンスターの巣は強さがあれば何とか出来るとしても、急に大穴や天井から落とされる事に対する対策は必要だ。お前達はロープとかアンカーの取り扱いはやった事がないだろう?それが出来るまでわざわざ死にに行くようなものだ。そんな奴らに場所を教えてやる訳にはいかない」
「…確かに甘く見ていました。対策もなしに向かって行ったら死ぬだけですね…」
「そうじゃな、鳥の上にでも乗っていないと今の妾達では助かる技術がないからのぅ」
「分かってくれたか。…さあ、無理はせず手の届く範囲の依頼をこなしてくれ」
「分かりました。マオ、依頼を探してみようか」
「大輝よ、ならこの依頼などはどうじゃ?クリスタルの採掘護衛の依頼なのじゃが、向かう場所がクリスタルダンジョンと言う所なので今後の経験に役に立つかもしれぬぞ」
クリスタルの採取中のモンスターからの護衛と採掘場所までの護衛が依頼の内容だ。ダンジョンは危険なトラップなどはないがクリスタルドックがメインで、たまにクリスタルゴーレムというロックゴーレムの亜種が出たりする。
「集合は明日か。今日は薬草もないし丁度良いね」
マオの話に納得し大輝達はこの依頼を受ける事にした。
「それで今日は残りの時間をどうするのじゃ」
「転移のダンジョン攻略用の魔道具を作りたいからまた魔石採掘に行きたいかな」
「どのような魔道具を作る予定なのじゃ?」
「風の魔道具でダンジョンで上空に飛ばされた時に、落下速度を落とせれば良いかなって思ったんだよ。今からロープなどに慣れるより早いと思うしね」
「では風の魔石を集めたいと言う訳じゃな」
「そう言う事、それじゃ向かおうか」
そうして大輝達は時間の許す限り採掘を行い宿に帰って行った。
「あ!大樹さん薬草が見事に再生していますよ」
宿に戻って来た大輝達に気付いたリリィが薬草の事を教えてくれたので、そのまま花壇へ向かった。
「見事に元に戻っとるのぅ」
花壇に植えていた半分に裂いた8つの薬草は全て元の大きさに戻っていた。
「とりあえず1つはリリィに、残りはまた半分にして植え直そうかな」
そう言い大輝はリリィに1つ薬草を渡して、残りを植え直した。
「大樹さん、本当に貰って良いんですか?」
「試作品なので本当に効果があるか試してほしい意味もあります。それでも良ければ貰ってください」
見た目は確かに再生したが回復力が半分になっていては意味がないのだ。実戦でそれを試す訳にはいかないので事前に試して欲しかったのだ。
「私は薬草の効果を見てみたいだけなので早速この宿に泊っていてケガをしている冒険者さんに使ってみますね」
そうしてリリィは宿に戻って行き、大輝達も食事をしに食堂に向かったのだった。
「た、大輝さん!や、や、薬草!凄い!」
食事をしていた大輝達に慌てた様子のリリィが、気が動転しているのかよく分からない話し方をしてきた。
「リリィよ、少しは落ち着かんか!意味が分からぬぞ」
マオに窘められて少し落ち着きを取り戻したリリィが深呼吸をしてから結果を報告し始めた。
「すみませんでした。…先ほどの薬草ですが凄いです!全治10日は掛かるだろう思っていたケガが一瞬で完治してしまいました!これは凄い発見ですよ!世界の常識を変えてしまいましたよ!これが広がればどれだけの人々が助かるか分かりませんよ!!!」
落ち着きを取り戻したかに見えたリリィは話始めてから徐々にテンションが上がっていき、また興奮状態になってしまった。
「いいから落ち着かんか!!」
マオが椅子の上に立ちリリィの頭を叩く。
「痛っ~、……すみません、つい」
マオの力が強かったのか、リリィは涙目になって頭を押さえている。
「まったく…落ち着いて考えてみんか。今現在、薬草を増やせるのは裏の花壇だけじゃ。それも半日掛けて良くて10個しか増やせん、そんな状態で話が広がれば一瞬で根絶やしになるだけじゃ」
「!、…そ、そうですよね。…で、でも花壇を増やせばもっとたくさん作れますよ!」
「は~、…大樹が使った地霊石は鉱山のフィールドボスのレアドロップ、数か月に一度しか復活しないモンスターのレアアイテムをそう簡単に手に入る訳がなかろう」
「……そう…でしたね。先ほどの冒険者には話が広がる前にあれ1つだけたまたま手に入ったと伝えておきます」
リリィは浮かれ過ぎて考えが足りなかった事に気付き、反省して話が広がらない対策に動いた。
「それにしても薬草が増産に成功したのは大きいね。これでポーション作りを行えるよ」
「明日の朝になるまでは次が採取出来ないんじゃがな」
「まー、明日のダンジョンに行くまでにはポーション2本は出来そうだから助かるよ」
そうして大輝は部屋に戻り、今日採掘してきた魔石などの加工に入った。
「とりあえず何から作る予定なんじゃ?」
「そうだね、…まずは大型モンスター用に大きいランスと突進用のブースターかな。ブースターはそのまま転移のダンジョンで使えるだろうから無駄にはならないはずだしね」
「…良く分からんが楽しみにしとるぞ」
そうして大輝は鉄鉱石を使い2メートルはあるランスを作り、その後腰ベルトに風の魔石を合成した。魔力を流すとベルトの任意の位置から突風が吹きだす効果にしたのだ。しかもこのベルトには風の上位魔石<強風石>を2つ使っている。炎の杖でも火の上位魔石は1つしか使っていないのに、2つ使用した場合の効果は分からないのだった。そして余った鉄鉱石と風の魔石で左手用の前腕部まであるガントレットを作り、使用していない地の魔石で鉄の刀と合成してより硬度を上げた。それらを作り終えた大輝は寝る事にした。
朝、食事を済ました後に裏の花壇に行き、薬草の植え直しと薬草4つを使いポーションを2つ作った。それらを済ました後、大輝達は依頼の集合場所に向かったのだった。
「護衛依頼を受けた大輝です。よろしくお願いします」
大輝達は依頼人に挨拶を済ますと。
「よう、大輝にお譲ちゃん!今日も一緒か?」
ジェームズが声を掛けてきた。
「あれ?、ジェームズさん達もこの依頼を?」
「ああ、俺は基本護衛任務をとる事にしているからな。それにナビコスとドライブの育成も必要だから、いろいろな種類の依頼はまだやっていないんだよ」
ちなみにドライブとはジェームズのチーム三人目の男の名前だ。武器は銅の槍と盾を持っていて、前衛の盾役のようだ。盾のドライブ、遊撃の片手剣使いナビコス、攻撃の大剣使いジェームズとバランスの良いチームだ。
「今回、僕達はダンジョンの経験を得る為に受けました」
「ダンジョンの経験とは、どこか目的のダンジョンでもあるのか?」
「ええ、転移のダンジョンに潜りたいんです」
「て、転移のダンジョンだと…お前達はそんな危険なダンジョンを目指しているのか?」
ジェームズも転移のダンジョンの危険さは聞いているのか、大輝達の話を聞いて驚いている。
「まだ最低限の対策も出来ていないから手は出せないんですけどね」
「まー、あそこはかなり危険との話だから万全の準備をしてから向かえよ。俺はお前達には無謀な事で死んでほしくないからな」
「ありがとうございます」
「それではそろそろダンジョンに向かいますよ」
時間になり依頼人が冒険者達に声を掛けてきた。
「…今回は俺達だけか…これはきつくなりそうだな」
「今回も移動は左右に分かれますか?」
「そうだな、少し前寄りに歩き前方も注意しながら移動しよう」
大輝とジェームズは隊列を決め移動を開始した。さいわいモンスターとの戦闘は数回で済み、クリスタルダンジョンに到着した。




