31話 買い物
31話 買い物
ナビコスの件も片付き(?)大輝も今日無事に9級の冒険者になれたお祝いを宿屋の食堂で行うことにした。
「おめでとうございます。無事に9級になれましたね」
「…リリィ、相変わらず情報が早いね」
「そりゃそうですよ。この世界、情報収集は必須ですよ。ところで今日で宿泊は終了ですけど延長、どうします?」
「あ、そうか今日で3日だもんね。…とりあえず追加5日でお願いします」
大輝はそのまま5日分の500ゴールドをリリィに支払った。
「毎度あり~。…そういえば大輝さん達9級になってもその格好で行くんですか?流石にいつまでも布の服っていうのも考えものですよ」
「そうかのぅ、楽で良いんじゃがな」
そんな事を言うマオにリリィがそっと耳打ちをする。
「マオちゃん、女の子がいつまでもそんな格好では大輝さんに嫌われてしまいますよ」
「な!?妾と大輝はそんな関係じゃ…」
「嫌われても良いんですか?」
「じゃから…」
「良いんですね」
「……………」
マオはリリィの言葉に返事を返せなくなっている。大輝には2人が内緒話をしてマオが言い負けていると予想は付いたが内容までは分からない。
「?、どうしたのマオ急に黙っちゃって?」
「た、大輝よ、妾達もそろそろ少しくらいは防具を気にしても良いと思うのじゃ。じゃがあまりお金もない事だし新しい服を買うくらいにするのが良いと思うのじゃが…どうかのぅ?」
「服じゃそんなに防御力が上がらないよ?」
「そ、それは、…その」
マオは少し赤い顔だったが、大輝のまるで空気を読んでいないみたいな当たり前の事を聞き、顔が暗くなって俯き次の言葉が言えなくなってしまっていた。そこにリリィの助け舟が入った。
「大輝さん防御力も必要ですが、9級となった事で仕事に信用が係わってきます。依頼人が見て今の格好ではハッキリ言って不安を感じます。冒険者としてやっていくなら少しは身なりを整える事も大切だと思いますよ」
普段のマオをおちょくるリリィとは思えない説得力のある話に大輝とマオは驚いた。
「確かにリリィの言ってる事も一理ある。マオもその事を言ってくれてたんだね、気が付かないでごめん」
「え!?、ま、まあそうじゃな。分かってくれればそれで良い」
多少マオのビックリした声に疑問を感じたが顔が明るくなったのは嬉しい事なので大輝は気にしない事にした。
「それじゃあ明日は午前中に服を買いに行って、午後から依頼を探しに行くって事で」
「うむ、その案に賛成じゃ!」
「では、この町をあまり詳しくないお2人の為に私、リリィが店を案内してあげましょう」
「それは助かるのぅ。ぜひ頼む」
そうして翌日、大輝とマオはリリィの案内で防具屋とは違う普通の服屋に向かったのだった。
「ここが私のお勧めのお店ですよ。値段がお手頃で種類も豊富、細かい体型に合わした直しをサービスでやってくれるんです」
リリィに案内された店は店内も明るく、雰囲気の良かった。ただ客層が女性に偏っており、男の大輝には少し居心地が悪かったのだ。
「ほー!色々あるのぅ。妾はこんなに服を見るのは初めてじゃ!」
店内に入ったマオはその服の多さに目を輝かせながらはしゃいでいた。色々な服を見て自分の体に重ねて見たりして選んでいる。
「大輝よ、こんなのはどうじゃ!妾の魅力が増すと思わぬか!」
マオは黒い薄手のドレスみたいな服を手に取っていた。
「確かに悪くはないけど、マオにはもう少し可愛い服の方が似合うと思うよ」
「そうか!ならまた探して来るから待っておるのじゃぞ」
マオは駆け足で探しに行った。そういう様子を見ていると見た目通りの女の子に思えてくる大輝だった。
「大輝さん、ここには男物の服もありますからそちらを見に行ってはどうですか?」
リリィが指を指す方を見ると女性物に比べると少ないが確かに男性物の服があった。
「せっかくだし僕も見てくるよ。少しの間マオの事を頼むよ」
「はい、ごゆっくり」
そのまま大輝は男性コーナーへ歩いて行った。
「色々あるな…、わ!上下とも金色の服がある!?……いったい誰が買うんだよこんなの…」
大輝は一通り服を見て回り、上は濃い目の青を基準とした色使いで布の服より少し生地が厚いポロシャツの様な服をを選び、下は同じような素材で色は茶色の長ズボンで合計200ゴールドを買った。
「僕はこれで良いとしてマオは決まったかな?」
大輝は再び女性物のコーナーへ向かい、そこでリリィを見つけた。
「あ、大輝さん!服は決まったみたいですね。今マオちゃんが試着していますので一緒に感想を言ってあげてください」
「了解。マオは気に行ったのが見つかったかい?」
「ええ、マオちゃんにピッタリだと思いますよ」
2人は試着室を見ながらマオが出て来るのを待った。そして3分ほど待った所でマオが顔を出した。
「お!大輝も来ておったか。どうじゃこの服は?妾に似合っておるか?」
マオは白を基調に少し黒が入っていて前開きでノンスリーブの服と膝下までのある白のスカートを身に着けていた。元が布の服、布のズボンだったのでそのギャップはかなり大きく大輝達は見入ってしまった。
「「……………」」
「……似合っては…おらぬか」
返事のない2人にマオは落ち込んだような声で下を向いてしまった。
「あ!ごめんつい見入ってしまったよ!マオ凄く良く似合ってるよ」
「ええ、マオちゃん凄く可愛いですよ!」
「!?そ、そうか!似合っておるか!?なら妾はこの服を買うとするかのぅ!」
2人の反応と言葉にマオは気を良くし、嬉しそうに服を決めた。
「…大樹さん、確かに似合ってますがあの服は上下で500ゴールドです。大丈夫ですか?」
リリィからの情報に顔には出さずに驚いた。500ゴールド、リリィの宿で10泊分の値段なのだ。大量生産の出来ないこの世界では衣服も高いのは分かっていたが予想外の値段だった。…しかし、マオのあの笑顔を見た以上、ここで買わない選択肢はないのだった。
「…大丈夫ですよ。マオがあんなに気に行っているんだし、買わない訳にはいかないでしょ」
「ふふふ、男ですね大輝さん。後はあの服に似合うリボンもあるのですがどうします?」
「!!、そ、それはどれですか?」
リリィは白の生地で真ん中に青い綺麗な石が付いた大きなリボンを持ってきた。確かに似合いそうだが値段は400ゴールド。
「どうしますか?」
「……これに似た物を僕が作ります。…ですのでこれはマオに見つからない内に戻して来てください。お願いします」
「やっぱり、予算オーバーでしたか。ではこっそり返してきますね」
「…すみません」
大輝はリリィに頭を下げ、マオの所に行き服の代金を払いに行った。
「装備していた布の服は買い取りでよろしいでしょうか?」
「すみません。買い取りはなしでお願いします」
店員は布の服を買い取るが聞いてきたが大輝はリボンを作る材料にしようと考えていたので売りのはやめた。そして代金を支払い店を後にした。
「良い服が見つかって良かったですね」
「うむ!満足の行く買い物じゃった!昼からの仕事もやる気が出るというものじゃ」
「そうだね。リリィも付き合ってくれてありがとう。おかげで満足の行く買い物が出来たよ」
「そうじゃな、リリィよ感謝するぞ」
「どういたしまして、それでは私は店に戻ります。昼からの依頼探しが上手くいくと良いですね」
そうしてリリィと別れた大輝は冒険者ギルドに向かった。
「マオ、昨日見ていた良さそうな依頼ってまだあるかな?」
「ん~、…お!一件残っておるぞ。これじゃ8級の依頼でロックゴーレムの討伐じゃ」
「なるほど、場所はこないだ行った鉱山の近くで場所も分かるから今からの仕事としては最適だね」
「それに時間があればお主が採掘でもすれば1度で2倍おいしい仕事じゃ!」
確かに素材が無くなってきたし一石二鳥だった。大輝は依頼書を持って受付に行った。
「9級になった途端8級の依頼を受けるか…、お前達らしいがあまり無理はするなよ。ロックゴーレムはあの辺りのフィールドボスだ。依頼料も1000ゴールドと多い分、危険な相手でもあるからな」
「分かりました。心配してくれてありがとうございます」
「まー、銅の剣も斬っちまうお前の腕なら大丈夫だとは思うが油断だけはするなよ」
「はい、行ってきます」
そうして大輝達は鉱山に向かって行った。




