30話 ナビコスの異変
順調に30話に到着!いつまでこのペースが維持できるかな…
30話 ナビコスの異変
ナビコスは徹夜で眠たいという事で別れた。
「さて今日はどの依頼を受けようかな」
「…大輝よ、これはどうじゃ」
マオが見つけた依頼は10級の依頼、廃屋の解体作業だった。
「?、なぜそんな依頼を?」
「実はこの手の依頼は人気がないらしいのじゃ。報酬は200ゴールドくらいじゃが手間が掛かり早くても2日は掛かる、それで受ける者がほとんどおらず5件ほど貯まっておる。じゃがお主なら錬金術を使いサクサク解体出来るじゃろう」
「なるほどね。全部終わらせれば一気に1000ゴールド!いいね、受けよう」
大輝は受付に依頼書を持って行った。
「この依頼を受けるのか?言っちゃあ悪いが割の良い依頼ではないぞ」
「解体作業は得意なので大丈夫です」
「…解体作業が得意な冒険者は聞いた事がないが、分かった受領書だ。依頼が終わったら依頼人にサインを貰ってこいよ」
「はい、行ってきます」
大輝達はギルドを出て依頼のあった場所に行った。
「君達が依頼を受けてくれた冒険者かい。助かるよ。この手の仕事は全然引き受けてくれなくてね…」
「それでどのようにすれば良いのでしょうか?」
「解体して運搬しやすくしてくれれば構わない。解体した物も始末してくれて更地にまでしてくれれば追加料金を払おう」
「では資材として再利用はしないのですね」
「ああ、全て駄目にしてもらって構わない」
「大輝よ、1つ目は楽に終わりそうじゃな」
資材を再利用するとなると丁寧に解体しないといけないが、全て廃棄となると気をつかう必要がなく早く作業を終わらせれるのだ。
「そうだね。それじゃあすぐに終わらせるので待っていてください」
「すぐにって何を言っているのだ?」
大輝は依頼人の疑問を無視して錬金術を使い建物を一瞬でゴミの山にしてしまった。そしてそのまま周りの土を使いゴミの山をドーム状に囲む。
「マオ焼却よろしく」
「任せるのじゃ。<ファイヤーボール>!」
ドームの中にマオが火の玉を放つ。マオが3発目の火の玉を放った後、ドームの中には何も残ってなかった。大輝が最後にドームを元に戻した後、そこは更地になっていた。
「これで依頼完了じゃな」
「それじゃあ完了のサインをお願いします」
「……………」
依頼人はあまりの豪快で手早い解体に呆れて何もなくなった土地を見ていた。
「…あの~」
「…あ、ああ。ありがとう助かったよ」
大輝達は完了のサインを貰いギルドに帰って行った。しかし依頼人はその場で何が起こったのか分からずただ更地になった土地を見続けるのであった。
「依頼完了しました。次はこれをお願いします」
ギルドに帰って来た大輝達は受領書と次の解体依頼の紙を持って受付に行った。
「何を言っている。つい1時間前に依頼を受けたばかりだろ。いくら10級の依頼でもそんな簡単に破棄して良い物ではないぞ」
「いえ、破棄しに来たのではなく、完了したからその確認と次の依頼の受領書を貰いに来たんですよ」
そう言って大輝はサインのある受領書渡す。
「……確かに依頼人のサインだ。それに追加料金も払うとなっている。…お前達いったい何をしたんだ」
「何をって、解体してゴミを片づけただけですよ。それで次はこれをお願いします」
「…また解体作業か。分かった。これが受領書だ」
受領書を受けると大輝達はまた出て行った。
本来この仕事は2人でやっても1日は掛かると読んでいたのだがまさかの一時間で帰って来たのだ。往復の移動時間を考えると実作業時間は20分も掛かっていない事になる。次の依頼場所はさっきより近い為もしかしたら45分ぐらいで帰ってくるかもと思っていると本当に帰ってきた。
「…まさかもう終わらせてきたのか?」
「はい、それで次はこれをお願いします」
この流れがトータル5回、解体依頼が無くなるまで繰り返され、途中で驚くのをやめた。最初はサインを誤魔化しているのかとも思い、完了した依頼場所に確認に向かわせた。その場所は更地になっており依頼人がその光景を眺めていたのだ。依頼人に聞いてみると確かに2人が解体したらしい。ただあまりの早業で何が起きたかは分からないと言われたのだ。
「さて、大輝よ。お前は9級の依頼と10級の依頼を5件達成した。よって9級に上がる試験を受けられるがどうする?」
「試験って何をするんですか?」
「なに、地下の訓練場で8級の冒険者と戦って9級に相応しいか見るだけだ」
「それなら受けとこっかな」
「9級になれば8級の依頼が受けれるからのぅ。妾は8級の依頼を見ておくからさっさと済ましてこい」
「分かった。依頼よろしく」
2人の会話を聞いてため息しか出なかった。すでの受かるのが当たり前のような会話、確かに9級の依頼を受け追加料金まで貰えるほど認められているのだから実力はあるのかも知れないが……。
大輝は下の階の訓練所に来た。どうやら作りはセイバのギルドと同じのようだ。
「それで対戦相手は誰なんですか?」
「相手は俺だよ!」
そこにいたのはジェームズだった。
「ジェームズさん、一昨日ぶりですね」
「ああ、今日はお譲ちゃんと一緒じゃないのか?」
ジェームズは周りを見回しマオがいない事で聞いてきたのだ。
「マオなら上で依頼書を見てますよ。試験が終わってから受けれるのがないか探しています」
「そうか。じゃあ後で1つ頼まれてくれないか?…実は今日ナビコスが夜明け前に出て行ったと思ったら朝方帰って来たんだ。それからボーと武器を眺めていると思ったらブツブツ何かを呟き始める始末だ。もしかしたら何か病に掛かっているかもしれない。そこでお譲ちゃんに回復魔法を掛けてほしいんだ」
その話を聞いて大輝には心当たりがあった。確信しても良いくらいの心当たりがある。
「分かりました。ぜひ引き受けさせてください!」
「お、おう。頼むわ」
大輝から感じるやる気の大きさに、少し引き気味になったジェームズだった。
「話は終わったか。そろそろ試験を始めてほしいんだが…」
「ああ、すまん。いつでも始めてくれ」
「僕も大丈夫です」
「それでは始める。内容は互いに戦ってもらうだけだ。ただし相手を殺してはいけない、それだけは守ってくれ。分かったな、それでは始め!」
大輝とジェームズは向かい合った。ジェームズは大剣を正面に構え、大輝は刀を腰に掛けたままの居合抜きの恰好で構えた。そして大輝はあきらかに間合いの外で刀を振り抜き、そしてすぐに刀を鞘に戻した。
スパン!
ジェームズの大剣は根元から切断され地面に落ちた。
「な、なにが起きたんだ?」
「武器を破壊したしこれで終わりで良いですか?」
ジェームズ達は何が起きたか全く分からなかったのだ。それもそのはず大輝が刀を振ったのと大剣が斬れたのは関係がなく、ただ<かまいたち>を大剣の真上から放っただけなのだ。実際、手元以外で魔法を発動させるのには溜めに時間が掛かる。しかし今回は試合と言う事でジェームズは大輝が動くまで待つだろうと読んでいたのだ。
「確かに武器を失った以上、勝負ありだ。…大輝は今から9級の冒険者だ」
「ありがとうございます。さあ、ジェームズさんナビコスの所に行きましょう」
「あ、ああ、そうだな」
大輝は何が起こったか必死に考えているジェームズに声を掛けて、色々聞かれる前に話題をナビコスの方に向けたのだった。
「マオ、終わったよ。それで依頼を探して貰って悪いんだけど、ナビコスが変になってるらしいんで様子を見に行こう」
一階に戻って来た大輝は依頼書を何枚か見比べていたマオに声を掛けた。
「なんと!それは心配じゃ、早速向かうとするかのぅ」
「お譲ちゃん、すまんな」
「なーに、ナビコスには昨日世話になっておる。お互いさまじゃ」
そのまま大輝達はギルドを出て、ジェームズの案内でナビコスに会いに行った。
「…は~、いくら見ても綺麗な刃よね~…飽きないわ~」
ナビコスの様子は聞いていた通りテーブルに小刀を置きそれをボーと見ているのだった。
「…朝からあんな調子なんだ。いったい何があったのやら、どうすれば良いかさっぱり分からん。やはりなんかの病気だろうか?」
大輝の心当たりは悪い意味で大当たりをしていた。…ナビコスは大輝のあげた小刀に惚れこんでしまったのだ。
「…あれはある意味、病気ですね」
「やはりそうか!いったい原因は何なんだ?」
「げ、原因ですか……」
「大輝よ、もしかしてお主があげた武器が原因じゃないのか?」
「マオ!?そんなにはっきり言わなくても!」
「…どういう事だ」
どうやって誤魔化そうか悩んでいたところに、マオが答えを言ってしまいジェームズに問い詰められる事になってしまった。
「…つまり大輝は鉄を加工出来てナビコスに頼まれ武器を作ってやったと。そしてそのあまりの出来に惚れこんでしまったと」
「…多分、そうだと思います」
ジェームズの余計な事をと、言いたげな雰囲気に大輝はすっかり委縮してしまっていた。
「しかしそんなに凄い物なのか、鉄の剣は?」
「おそらく大輝は鉄の剣じゃなく、刀を渡したんじゃないのか?」
「刀?」
「そうじゃ、妾も惚れぼれする美しさと銅すら斬る性能を兼ね備えた武器じゃ」
「銅を斬るだって?そんなものが……まさか俺との試合の時に大剣を斬ったのは!?」
「あ!あれは違いますけど確かに斬る事は出来ますよ……これが刀です」
そう言って大輝は腰の刀をジェームズに渡した。
「…確かに綺麗だ。鉄の剣は見た事はあるが、こんな輝きはなかった。……まさかナビコスの目の前にあるのは!」
「…僕が作った小刀です」
「なるほど、こんな武器がいきなり手に入ればああなってしまうのも分かる気がするな…」
「こんな時はどうすればいいんだろう」
正直こんな事になるのは予想外で経験のない大輝には打開策が見つからないのだ。
「仕方ないのぅ、妾に任せておれ」
マオはそう言うと今だ刀を眺めているナビコスの前に歩いて行った。
「あれ、マオちゃんどうしたの~?」
「…ナビコスよ、お主は何をやっておるのだ」
「え、急にどうしたの?」
「まったく少し良い武器が手に入ったからといってその腑抜けっぷり。はっきり言ってその刀が可哀想じゃ。本来、武器と使い手は共に成長していくもの、まだまだ腕の足りないお主がそんな調子でいつになったらその刀は本領を発揮出来るというのじゃ。お主の行動はただ刀を腐らせるだけ、そんな事でその刀の主と胸を張って言えるのか!」
「マ、マオちゃん」
「もう一度言う!、お主はその刀に向かって自分が主と言えるのか!」
「…この子に」
ナビコスはマオに言われた事を考え刀を見つめている。
「その刀の事を思うならどうするべきか、お主なら分かるな」
「マオちゃん!、私、間違ってたよ。もう少しでこの子を殺してしまうところだった。私はこの子に相応しい主を目指さなきゃいけなかったんだ。それなのに…」
「…その事に気付いたならお主はもう大丈夫じゃ!ほれ、その刀も喜んでおるじゃろう」
「こんな私を認めてくれるの?………ありがとう<ヴィータ>。私頑張るよ!」
「うんうん、良い話じゃのぅ」
………マオとナビコスの会話にまったく入っていけない大輝とジェームズ。
「あれってやる気は出たけど症状は酷くなってない?」
最後に2人が疑問を残す結果になるのだった。




