27話 初仕事
27話 初仕事
大輝達の冒険者としての初仕事、魔石採掘の護衛は始まった。
隊列は馬車の右にジェームズのチーム、左がグルトと大輝達が付いた。途中一度だけジェームズの方にモンスターが来たが無事に鉱山まで到着した。
「さて俺達はここから中に入る。一緒に入るのはジェームズ達と大輝達だ。グルトは入口を見張っていてくれ」
「分かりました」
グルトを入口に残し大輝達は洞窟の中に入って10分ほど奥に進んだ所で歩みを止めた。
「さてここらで採掘を始めるか!お前達は2手に分かれてモンスターをこっちに来ないようにしてくれ」
「了解、それじゃ俺達は奥で陣取る、大輝達は入口側とそこの小さい横道も見張っといてくれ。もし手に負えない奴が現れたらすぐに声を掛けてくれ」
「分かりました」
そうして大輝達は別れた。
「しかし拍子抜けだのぅ。もっとモンスターが出ると思っておったのじゃが」
「ここからが本番だよ。この洞窟、瘴気が結構濃いからモンスターは多いと思うよ」
「そうじゃろうな。…そうじゃ大輝よ、どうせならお主も採掘をしてみたらどうじゃ?お主の代わりにタマを呼んで見張ってもらえば良いじゃろう」
「ああ、それも良いね。タマ出てきて」
「キュー!」
「タマ、この近くにモンスターが来たら知らせて欲しい。出来るかい?」
「キュー!」
タマの「分かった」と言いたげな声を聞き安心して、大輝は錬成陣の手袋を装備し錬金術で岩を砕く採掘を始めた。洞窟の奥の方ではジェームズがモンスターと出会ったのか戦闘音が聞こえる。こっちも小道の方から何度かカエルみたいなモンスターが現れたがマオのフレイムアローやタマの狐火で瞬殺していた。
1時間ほど採掘した時、大輝は赤熱石10個と清水石8個、土雲石3個、静風石5個、銅塊5個、そして鉄鉱石を3個見つけた。他の魔石はともかく鉄鉱石を見つけたのは大きい。
そしてもう少し採掘を行おうとしたら洞窟の奥でジェームズの叫び声が聞こえた。
「撤退だ!奥から大量の毒カエルが現れた。1人毒をくらってしまった。一度洞窟から出るぞ!」
そう言いながらジェームズ達が走って来るので急いでタマをカードに戻し大輝達も外に向かって走った。
外に出た冒険者一行は毒に掛かった者の治療をしようとしていた。
「なんだと!?どういう事だ!落としたってお前」
ジェームズが仲間に怒鳴りつけていた。どうやら毒消しを逃げる時に落としてしまったようだ。
「グルト、すまないが毒消しを分けてくれないか」
そう問われたグルトの顔色が優れない。
「…すまない、外にも毒カエルが出て持ってきたのは使ってしまった」
「そんな、…大輝、毒消しを持っているか?」
「毒消しって何処で売っていたんです?」
大輝の毒消しの存在すら知らなかったと言う言葉に愕然としていると。
「なんじゃ?何を騒いでおるのじゃ?」
「どうやら毒に掛かった人が出たらしいんだけど、今毒消しってアイテムを切らしてるみたいなんだよ」
大輝達の危機感の全く感じない言葉を聞きグルトが吠える。
「お前達は何を普通に話しているんだ!このままだと仲間が1人死んでしまうんだぞ、分かっているのか!」
大声で怒鳴るグルトに向かってマオは煩わしそうに。
「うるさいのぅ、この者を治せばよいのじゃろ?ほれ<回復促進>」
マオから出る魔力を受け毒で苦しんでいた者の顔色が徐々に良くなっていく。
「これでもう良いじゃろう。全く、これしきの毒で騒ぎおって、ほれさっさと仕事の続きをするぞ」
マオの何でもないように使った魔法に冒険者だけではなく依頼人も呆気に取られ、ただマオと毒をくらった者を交互に見る事しか出来ないでいる。
「ちょ、ちょっと待ってくれ。今のは回復魔法か?」
その中でもジェームズは一番に持ち直しマオに問いかけた。
「そうじゃ、即効性がない使い難いスキルじゃがな」
「使い難いって…回復魔法にどれほどの需要があるか知らないのか?ドリエでも5人しかいない回復魔法の使い手は極少数のレアなスキルなんだ。そしてその者達はみな町で医者として引く手あまたで活躍しているんだ」
「ほう、そんなに珍しいスキルじゃったか、エルザめが何も言わなんだからてっきり普通かと思ったぞ」
「まー結構便利なスキルだからね。でも…」
「そうじゃのぅ、このままではあまりよろしくないのぅ」
大輝とマオの微妙に落胆している態度に不思議に思うその他一同。
「何が良くないんだ?冒険者なんてしなくても安全にお金が稼げるんだぞ」
ジェームズが代表して一同の疑問を問いかける。
「そんな事になれば注目を浴びてしまうじゃろ」
「それの何がいけないのだ」
「妾達は目立つ事が嫌いなんじゃ」
「?、それだけ?」
「何を言う!目立てばそれだけ敵も増やす恐れがあるではないか。それに妾達には目的がある。その為には医者などやっている暇などないのじゃ」
一同の納得出来たか出来ないか微妙な所だが現にそのおかげで仲間は助かった。その事実だけは確かなので此処は納得する形で収まった。
「よし!毒に掛かっても大丈夫なら話は変わる。さっさと毒カエルを殲滅して採掘の続きをやろう。隊列は俺達が毒カエルと戦い大輝はマオの護衛で行く。グルトはさっきと同じで入口の確保を頼む。だがもう毒消しはないのだからマオが帰ってくるまで無理はするな」
「わかりました」
「さー行くぞ!」
大輝達は再び洞窟内に入って行き、少し歩いた所で毒カエルの大群と出くわした。
「これが毒カエルじゃったか。さっき小道の所で気にせず倒しておったが毒持ちとは思わなんだわ」
「このクラスの瘴気ならなんかの能力を持っていても不思議じゃないけどね」
そう普通に話しているが大輝もマオもやる事はやっている。ジェームズ達が毒を浴びるとすぐにマオが回復促進で毒を治癒していく。大輝もジェームズ達が取りこぼした毒カエルを鉄のナイフで倒しているのだ。
「でも結構な数がいるね」
「そうじゃのぅ、ざっと50匹はいそうじゃ」
「炎の杖を使えばすぐに倒せるだろうけど洞窟の中で使うのは怖いしね。地道にやるしかないかな」
炎の杖を使えば確かに10匹以上を一撃で倒せる、しかし振動も激しいので落盤の恐れと炎による酸欠の恐れがあるので使えないのである。
「お主も参戦すればすぐに終わるじゃろ?」
「でも僕の役割はマオの護衛だから此処を離れる訳にはいかないよ」
「なら此処から錬金術で攻撃すればよかろう」
「あ、その手があったか」
そう言うと大輝は錬金術を使い毒カエルの下から岩を針に変え串刺しにした。
「この距離だと一体ずつが限界か」
大輝は次々と毒カエルを倒していく。その行動を見ていたジェームズはチラリと大輝をみて「あいつも変なスキルを持っているな」と呟き再び戦いに集中しだした。
大輝が参戦して10分ほどで毒カエルの群れは全滅した。その内の3分の1を冒険者ランク10級の大輝1人が倒したのだからジェームズ達も素直に喜べない。
「お疲れ様です。我々は後1時間ほど採掘を行いますのでお辛いでしょうけどよろしくお願いします」
「大丈夫です。それが仕事ですから」
依頼人とジェームズの会話が終わり大輝達の方へ依頼人が歩いてきた。
「先ほどの戦いで地面を変化させていたのは貴方ですか?」
毒カエルとの戦いで岩を針にしていたのを見ていたようで依頼人が話しかけてきたのだ。
「そうですよ。僕は錬金術が使えますから」
「なるほど、錬金術でしたか。あのような使い方をする者を見た事がなかったもので。と言うより本来、錬金術の使い手は冒険者などをしないのですけどね」
やはり大輝の戦い方はこの世界では例がないようであった。大輝の中で錬金術師は片腕片足が鋼の義手義足の某〇の錬金術師しかイメージがないので仕方がない。
「それで僕に何かやって欲しい事があるのですよね?」
「分かりますか。実は大きな岩に当ってしまいまして、それを人が通れるように加工して欲しいのです」
「お主、それは当初の依頼内容から外れてはおらぬか?」
「ええ、もちろん追加料金は払います。どうでしょう?」
「僕も少し採掘には興味がありまして、追加料金はいいので出来れば採掘で取れた物の一部を分けて欲しいのですが?」
「どの魔石が欲しいのですか?」
「魔石ではありません。これなんですが」
そう言って大輝は先ほど取れた鉄鉱石を見せた。
「これは堅い金属ですが加工できない物ですよ?そんな物で良ければどうぞ」
「では商談成立と言う事で」
そうして大輝は苦労している大岩の前に行き錬金術でポッカリ穴を開けた。
「これでいいですか?」
「ああ助かったよ。これで奥に行ける」
「それでは僕は戻るのでまた何かあったら声を掛けてください」
そうして大輝は最初にいた帰り道と小道がある所に戻り採掘を始めた。
そうして1時間ほど経った所で奥からジェームズさんが帰って来た。
「大樹、今日はもう撤収だ。……それは一体何なんだい?」
大輝の周りには無数の魔石と金属の塊があったのだ。しかも周りは採掘した跡など残ってはいないのだ。
「ああ、待っている間に僕も採掘をしていたんですよ。あ!、落盤の恐れはないですよ。掘った所は同じように元に戻しておきましたから」
「何ともまあ、色々常識の通じないチームだな…」
「別にこのまま全部持って帰ろうとはしてませんよ。ちゃんと依頼人に渡します。今回は採掘をやってみたかっただけですし」
その発掘量を見た依頼人は大輝を見て「冒険者をやめて家で働かないか?」とスカウトしてきたが丁重に断って約束の鉄鉱石を受け取った。ただ大輝の採掘した魔石の量は今回の総採掘量の半分近くまであり、やはり追加料金も払わしてくれと言い依頼料は倍になった。
そうして大輝達の冒険者初仕事は無事に終わったのである。




