23話 魔王の因子
23話 魔王の因子
大輝達がゴブリンロードを倒し旅に出た翌日、久々にステータスを確認して異変に気付いた。
天兎 大輝
レベル 19 レベル 14
HP 284 / 284
MP 502 / 502
スキル 強化 ・ 風の初級魔法 (LV8)
使役者 ・ 錬金術 (LV9)
・鉄の剣
・薬草 ×4
・パン ×27
・干し肉 ×94
・大猪の牙
・フレイムタン
・錬成陣の皮手袋
昨日ゴブリンロードもそうだが、ゴブリンも100体以上倒しているのだ。それを考えるとこの急なレベルアップは当然と頷ける。
タマ
レベル 21
HP 232 / 232
MP 194 / 194
スキル 狐火 (LV7)
体炎 (LV6)
タマも順調にレベルアップしている。そして問題が発生しているのがマオなのだ。
マオ
レベル 19
HP 223 / 223
MP 157 / 157
スキル 強化 ・ 回復促進 (LV5)
魔王の因子 (LV1)
スキルに<魔王の因子>と言うのが増えているのだ。能力を確認してみるとどうやら倒した魔王の力を奪うことが出来るらしい。今回は、ゴブリンロードのスキルでHP増加の効果らしい。
「魔王の因子?…まー間違いなくゴブリンロードから出た黒いのが原因だよな」
「…妾に魔王の力が?」
「そのようだね。どうするそのまま魔王を名乗っちゃう?」
「……いや、やめておこう。魔王になっても碌なことにならんよ」
冗談半分に気楽に言った大輝だったがマオの不思議と悟ったような、まるで実体験を語るような返事に大輝は冷静になりなんとなく謝った。
「…なんか、ごめん」
「いや良いんじゃよ。魔王になれば気軽に町に遊びにいけんじゃろうし面白くなさそうじゃからのぅ」」
「…そうだね」
マオの無理をしているような状態に気がついたが大輝は何もしてやれずただ曖昧な返事をするしか出来なかった。
「それよりドリエに向かうんじゃろ、10日以上掛かるんじゃからのんびりし過ぎると何時までたっても目的地に着かんぞ」
そうドリエには早くて10日、それは馬などの移動手段を使ってであって徒歩で移動の大輝達は10日どころか倍の20日掛かっても着かない恐れもあるのだ。
「出来れば行商などの馬車に乗せてもらいたい所だけど、昨日までゴブリンに包囲されていた国に行商なんて来る訳ないから可能性は薄いかな」
実際この街道には人1人見えないどころか昨日から一度もすれ違ってすらいないのだ。
「ならお主が台車でも作りその辺のモンスターにでも引っぱらしてみるかのぅ」
「!?、そうかその手があったか!」
「?、何を思いついたのじゃ?」
「この世界にあるかは分からないけどランドヨットみたいな物を作ろうと思ってね」
大輝が思いついたのは荷台に帆を付けて風の力で前に進む事が出来る物とマオに説明した。
「ランドヨット?と言う言葉は聞いた事もないが要は帆船に車輪を付けて道を走ろうと言うじゃな」
「そう言う事!じゃあ僕はその辺の木を使って作って来るから少し待っててよ」
「何を言う、妾も材木を運ぶとか手伝うぞ」
「ありがとう、でも重たいよ」
「大丈夫じゃ、最近はレベルも上がって力も付いてきたからのぅ」
「分かったよ。じゃあ一緒にやろうか」
大輝達は街道の脇に生えている木を切り、錬金術を使い加工していき半日足らずで手早くランドヨットみたいな物を完成させた。車輪は前に2つ後ろに1つで座席は2つ、後ろに小さい荷台も作った。ハンドルは付いていないので全て帆で操作する形である。
「完成のようじゃな。しかしこんな物は見た事もない、やはりお主の発想は面白いのぅ」
「僕の考えた物ではないけどね。それじゃあ行こうか、今は風が弱いから僕の魔法で代用するよ」
そうして前にマオとタマ、後ろに大輝が乗り込み風の魔法で勢い良く進んでいく。最近のレベルアップでMPに余裕が出てきたがマオに回復促進の魔法を掛けてもらいMPを回復しながら進んで行った。今日はほとんど風がなく常時魔法を使っていた大輝は辺りが暗くなり始めた時にはMPが残り少なくなっていた。
「このペースで進んで行ければ思ったより早くドリエに着きそうだな」
「このペースで行けたらじゃろ?今のお主のMPから1日中魔法を使うのは無理じゃろうに」
「あはは、まあね自然の風がもう少し吹いてくれると助かるんだけど、魔法だけだと今の所もって半日ってところだね。でもこのペースで風の魔法を使っていくとすぐにレベルが上がるだろうから徐々に進める距離も増えて行くと思うよ」
実際今日1日で風の魔法を100回以上使っておりレベルも10にまで上がっているのだ。
「確かに移動も出来てスキルのレベルも上がるから効率が良いのぅ。妾の<回復促進>もレベルが上がっていけば更に距離も伸びるじゃろうし」
マオのスキル、回復促進も地味に貢献しており大輝のMPを100以上は回復させていた。そしてそのスキルレベルも7まで上がっており明日以降はもっと回復スピードが早くなっていくのだ。
「そうだね。まあ明りもない街道で走るのは危ないし今日はここまでにしようか」
「そうじゃな、久々の野宿じゃが食糧があるのは良い事じゃのぅ」
「ははは、そう言えばマオは野宿経験者だっけ。もう何だか分からない草を食べちゃ駄目だよ」
「た、大輝よ、それは妾の汚点じゃ。……もうその事には触れるでない」
「ごめんごめん、分かったよ。それじゃあ食事をして寝ようか、見張りは僕とタマが交代でやるから安心して寝て良いよ」
「何を言う妾もな、仲間であろう。妾だけ特別扱いはせんで良い、交代は均等にするのじゃ」
マオの少し照れながらの言葉にもう一度だけ確認した後、見張りは大輝、マオ、タマの順番で行う事に決定した。
そんな感じで4日目の夕方頃には大輝の風の魔法はレベル14まで上がっており、マオの回復促進はレベル9になっていた。
そろそろMPが少なくなってきたので今日の移動はやめランドヨットから降りて今夜の寝床を探していた。そうしてると街道の奥から1人の女性が馬に乗りこっちに向かって走って来ているのだ。
「誰だろう?女性の一人旅はこの世界では珍しいよね」
「そうじゃのぅ、じゃがあの者が纏っている魔力からタダ者ではないぞ」
そうこう話していると大輝達の前まで来てその女性は止まった。
黒眼で黒い髪を後ろで纏めポニーテールのようにしている。服装は青と白がメインの服で腕と足にのみ金属の装飾品の様な防具を付けている。そして最も特徴的なのが背中に背負っている大剣た。その長さは150センチはありほぼ身長と変わらないのだ。そんな女性が馬から降り大輝に話しかけた。
「お前達は何処に行こうとしている。この辺りはモンスターが少ないとはいえ危険だぞ」
「?、僕達はドリエの国に向かう最中です。それにこう見えて僕は冒険者ですから多少のモンスターの相手ぐらいは出来ますよ」
「そうか、もし<セイバ>の国に向かっているのなら危険だから止めようと思ったのでな」
「ところで貴女は誰なんです?女性の一人旅は危険ですよ」
彼女の装備はしっかりしているし魔力もかなり持っているように感じるが見た目の年齢は大輝とそんなに変わらない、おそらく15才前後に見えるのだ。
「ふふ、まさか逆に心配されるとはな」
彼女はキョトンとした後、噴き出すように笑い出した。
「すまん、普通はこの装備から出る魔力で相手を委縮させてしまうのでな。そんな風に言ってくる者などいなかったから、つい可笑しくなってな」
「確かに凄い装備ですね」
「ありがとう。それで私は<ユキナ>、セイバの国に向かっている最中だ」
「僕は大輝です。ところでセイバって?」
大輝は聞いた事のない国の名前に首を傾げていると
「…大輝よ、セイバは妾達がいた国の名前じゃ」
マオが今までいた国の名前も知らなかったのかと言いたそうな顔をして大輝に答えた。
しかしそう答えたマオをユキナが見た途端、笑顔が消え一瞬で顔が険しくなった。
「お前達、何者だ」
そう言いながらユキナは背中に背負っていた大剣を構えた。その大剣は鉄などの普通の金属とはまるで違う見た事もない輝きをしていた。
「突然何なんですか!?僕達はドリエに向かう旅人ですよ」
「お前達はセイバにいたと言っていたな。なるほど今度はドリエに目を付けたと言う事か」
「さっきから何なんです!僕達は普通の旅人じゃあないですか」
「……そうかあくまでも白を切ると言うなら構わぬ、その魔族と一緒に切り捨ててくれる!」
「ま、魔族!?」
ユキナの魔力が一気に跳ね上がったと思ったらそのままマオに向かって斬りかかった。
「フ、<フレイムソード>!」
マオが咄嗟に炎の剣を出しユキナの一撃を受けた。しかしマオの顔色は優れず、反応もいつもより悪そうに見えた。
「流石だな。一瞬でそんな剣を出すとは、…だが!」
「!、ぐぅ!!」
ユキナは大剣の一撃を受けているマオの腹を蹴り吹き飛ばした。
「マオ!いきなり何をするんだ」
大輝はカードから鉄の剣を取り出し構えた。
「そこの小娘と獣を始末するのを邪魔しなければお前の命は助けてやろう。だがそこから動いたら敵とみなす」
理由は分からないがユキナの狙いはマオとタマのようだ。しかし彼女らを見捨てるなんて大輝には出来るはずがない。
大輝はユキナとの戦いに参戦するのであった。




