18話 魔法剣
18話 魔法剣
大輝達のギルド生活が始まった。ただエルザの家から冒険者ギルドに移っただけだから特にやる事が変わる事はなかった。ギルドには来客用の宿泊設備がある為、大輝達が急に止まる事になってもどうにかなっているのだ。
「さて、今日も疲れたしMP使ったら寝ようか」
「そおじゃのぅ、妾はもうMPがないから先に寝させてもらおうかのぅ」
「僕も魔導高石1個作ったらMP切れるかさっさと作って寝るか」
「…皆さん平然とくつろいでいますね」
大輝達のあまりの通常運転ぶりに半分呆れながらエルザが呟く。
「エルザよ、そんな事を気にしても現実は変わらん。ならくつろげる時にくつろいでおかないと勿体なぞ」
マオの言葉に頭では納得するが気持ちが納得できずにいた。その横では大輝が合成圧縮を繰り返して行っている。その見る限り性能が上がっていく魔石を直に見るとこの技術の凄さが良く分かってしまう。
「凄い発見ですね。<鍛冶>のスキルでは出来ないまさに<錬金術>専用。私、錬金術は単なる複合スキルで持ってなくても他のスキルの人が集まれば何とかなると思っていましたが認識が変わりました」
「まーこのやり方ではMPを大量に使ってしまうけどね。その内レベルが上がれば纏めて合成圧縮出来ると思うから量産は今後に期待だねっと、出来た」
大輝は魔導高石を作りあげた。
「この魔石は何に使うんですか?」
「マオの武器も出来たし次は自分のを作ろうと思ってる。ゴブリンは弱いけどゴブリンロードは予想がつかないから念には念を入れてね」
「武器…ですか。でも大輝さんには鉄の剣がありますし風の魔法もありますよね。そこまで必要なんですか?」
「んー、もし鉄の剣でも切れない装備や皮膚を持っていたら大群の中で孤立してしまうだろ。それは流石に勘弁してほしいから出来れば一撃必殺でその後離脱するのが理想だからね」
大輝の作戦ではゴブリンロードに一直線に向かい倒して、即逃げる事を考えているのだ。1000対3なんて無謀すぎて話にならないのだ。
「…ゴブリンロードを一撃ですか…、一体何を作る気なんですか?」
「イメージ的には魔法剣、かな。剣に魔石による火の補助と自分の風の魔法を纏わせて熱と切れ味を上げる、フレイムタンみたいな感じかな」
「…フレイムタンが何なのかは分かりませんがとても危険そうな武器が出来そうですね」
「そんな感じで今日はMP切れで終了、また明日。お休みー」
「はい、お休みなさい」
大輝達は各自の部屋に入り眠りについた。
翌朝、大輝はフレイムタンを作るべく魔石の合成圧縮を繰り返していた。今回は魔導高石3つ、風の魔石<清風石>と白熱石を1つづつ必要とした。このパーツを作った段階でMPの残量が少なくなってしまったので休憩を取ろうとしていた。
「マオ、MP少なくなってきたから少し寝て回復に努めるよ。僕のステータスを見て全快近くになったら起こしてほしい」
「むむ、妾はタマと一緒に少しゴブリン狩りをしてレベルを上げに行きたいのじゃが、…そうじゃエルザに頼んでおくとしよう、お主は気にせず眠るが良い」
「あんまりゴブリンを刺激しすぎないようにね。後、危険だと思ったら即逃げるように」
「分かっておる。この炎の杖を2、3回使用したらすぐに引き返そう」
「了解、それじゃお休み」
「うむ、それじゃあタマよ行くとするかのぅ」
マオはエルザに大輝を任せ外に出て行った。その数十分後、東の方のゴブリンの群れが正体不明の爆発炎上に遭い壊滅状態になっているのを見た兵士達は原因が分からず何かの罠か?と疑心暗鬼に囚われ不安だけが広がり国中の噂になったのだが大輝の知らない事であった。
「大輝さん、そろそろ回復しましたよ」
マオに押し付けられた目覚まし役を律儀にこなし大輝を起こす。
「あ、後5分…」
「寝ぼけてないで起きてください」
「おはようございます。…ああ、MPが回復したら起こしてって頼んだんでしたっけ。エルザさんありがとうごさいます」
「いいですよ。ところで武器作りは順調なんですか?」
「ええ、後は合成して行くだけです」
大輝が布団から出て続きをやるかと、動き始めてすぐマオ達が帰ってきた。
「お、大輝よ今目覚めか」
「お帰り、どうだった?」
「うむ、順調じゃ!威力も問題なし。じゃがMPが切れかかったから次は妾は休むとしよう。………妾が寝ているからといって変な事はするでないぞ」
「し、しないよ」
「ふふ、分かっておる、ちょっとした冗談じゃ。妾のMPも回復したら起こすのじゃぞ」
「……分かったよ。お休み」
「大輝さん、完璧に遊ばれていますね」
「全く、頭の中はとても10才には見えないよ」
大輝とエルザが談笑しながら作業を再開する。ここから先に作業は強化のスキルも併用していくので、それを初めて見ていたエルザはまた驚き、同時に炎の杖の強さの秘密を知ったのだった。
「…これで完成だね」
完成した元、鉄の剣は大輝の好みで両刃の剣から片刃の刀の形に変えていた。刃の色はフレイムタンに相応しく真っ赤で刀なら鍔がある位置と持ち手の下の所に魔石が付いているのだ。
「綺麗ですね。それにしても変わった形の剣ですね」
「これは僕の国では刀と言う武器なんだよ。やっぱり武器を持ち歩いて良い世界なら一度は刀を持ち歩きたいと思ってね」
普段は目立つのを嫌がってばかりいるが大輝もやはり男なのである。腰に刀を差し戦いになったらスッと抜く。本当は某流浪人みたいに逆刃刀も良いかなっと思っていたが今の状況から自重した。
「え!大輝さんこれを持ち歩くんですか?いつもみたいにカードに入れないで」
「そりゃあ刀だもの腰に差さないで何処に差すの」
「やめてください!こんな武器腰に差して歩いたら一発で注目の的ですよ!目立つのが嫌いなんですよね?はっきり言って遠くから見てもこの武器の異常さが分かってしまいますよ。絶対自重してください!」
大輝のいつもの感覚のずれにエルザは猛烈に抗議してた。実際、目に入るだけで刀からの熱が感じられるほどの武器になっているのだ。
「……でも、刀だし、一度くらいは…」
「自重してください!」
「はい…」
「さあこの話はお終い。そろそろマオちゃんを起こさないと」
「最近エルザさん僕に遠慮がなくなってきたよね…」
「それは大輝さんが常識外れな事ばかりするからです!」
「ふ、常識とはそれを知らない人には常識ではないのさ」
「いいからマオちゃんを起こして来てください」
「…はい」
ここ最近のやり取りで大輝達のパワーバランスが変わり始めていたのだった。
「大輝よ、妾が寝てる間に何があったのじゃ?えらく落ち込んでいるようじゃが」
「…大丈夫だよ、夢が1つ崩れただけさ」
「そ、そうか。なら妾はもう一度出かけて来るぞ」
「ああ、気を付けて」
マオとタマは再び出て行くのであった。そしてまた数十分後、今度は南の方で爆音が響いた。今度は近隣の人に見られており正体不明の少女が戦うその姿から<灼熱の美少女>とか<赤髪の爆炎姫>など呼ばれ、タマもスキル<体炎>を使い体の周りを炎で被い<狐火>を出して戦う姿から<黒炎の獣>と呼ばれるようになっていた。少女と獣は周囲のゴブリンを殲滅した後、近くにいたの人の視線に気付き、逃げるように去っていったので噂だけが広がっていった。もちろんこの話も大輝の知らない所で広がっていたのだ。
夕食時、冒険者ギルドに嬉しい情報が入った。ビックルは冒険者を使い急いで町中に情報を流した。
「どうやら隣の国<ドリエ>で勇者が現れたらしいぞ。そしてこの国に向かっているみたいだ」
滅びを待つだけだったこの国に勇者が現れたと言う希望に人々は喜びを得ていた。しかしドリエとの距離を考えると早くても10日は掛かる。その間ゴブリンロードが動かないのを人々は願うのであった。
「それでビックルさん勇者は本当にこの国を目指しているのですか?
大輝達はビックルと夕食を食べながら話をしていた。
「ああ、ドリエの冒険者ギルドから速報が届いたからな」
「速報?どんな連絡手段なんですか」
「ポッポルという鳥に手紙を付けて飛ばすんだ」
「伝書鳩かい!」
「?。まあそんな訳で後10日ほど耐えれば何とかなりそうと言う訳だ」
「10日か、結構長いな」
今までの事を考えると10日ぐらいは何とかなりそうだが、もしゴブリンロードにもこの情報が流れたとするとその前に攻めてくる可能性は捨てきれないのだ。
「お前の心配している事は想像がつく。勇者が来る前に奴らが動くんじゃないかと思っているんだろ」
「ええ、勇者の力は知りませんが僕がゴブリンロードならはさみ打ちになる状況は作りません」
「その事で国の方も動いているようだ。この国の全力で10日間を耐えれるように今、人を集めているらしい。ギルドの方にも協力の要請が来ていて俺もそれに参加する事になっている」
「え!ビックルさん結構いい歳じゃないですか」
「冒険者は引退したがまだまだ若い者には負けんよ。お前から買った鉄の斧もあるしな」
「あれ売ってなかったんですか」
「こんなもんほいほい売れるか!それこそ直ぐにお前の存在に辿りつくぞ」
「…それは勘弁ですね」
「それで大輝さんはどうします。私は一応冒険者として名が広がってますから参加しますけど」
「お前は冒険者登録はしているがまだ仕事を1つもこなしていない新米だ。強制はされないだろうから自由意思で構わんぞ。もちろんお前達が参加してくれたらかなり助かるがな」
「そうですね。でも確実に目立ちますよ。特に大輝さんがフレイムタンなんか抜いたら確実です」
「フレイムタン?また変なのを作ったのか」
「変なのって…一応戦いに備えて作った保険みたいな物ですよ」
「大輝さん、普通は保険でゴブリンロードに一撃必殺は狙いませんよ」
「……一撃って、お前何を作ったんだ?」
そう言われたので大輝はフレイムタンを取り出し、ビックルに見せた。そのあまりの鋭さに目を離せないでいる。
「一応、魔法剣で僕専用の武器だから他の人が使うと攻撃力4割減になってしまいますけどね」
「魔法剣…このまま使っても十分凄そうだがまだ倍の威力になるってのか…」
「エルザさんにこんなの腰に差していたら絶対目立つと言われて半分お蔵入りですけどね…」
「…そりゃそうだ」
大輝がフレイムタンをしまいビックルが呆れて呟いた時、大輝達がいる部屋のドアがいきなり開いた。
「大変ですギルドマスター!国の兵士が下に来ています。何やら王様からの命令があるらしいです」
「?、王からの…分かった下に行こう」
「いや下に来なくていい。我々が直接来たからな」
声がしてドアの方を見ると昨日見た兵士より少し立派な鎧をきた者が5人いた。
「親衛隊の皆様が何用でこんな所まで起こしになったんで?」
「ふん、お前には用がない我々が用があるのはエルザ、君とその後ろの2人だよ。直ぐに城に来てもらおうか」
「私達に何の用があると言うのです」
エルザは自分に矛先が向いている事で正直、不安で一杯であった。
「そんな事お前たちは知らなくて良い。王の命令だ、素直に従え!」
「タマ、カードに入って」
小声でタマに指示を出しカードに入ってもらう。
「エルザさん良く分からないけど、ここは従った方がいいよ」
「大輝さん………分かりました素直に同行します」
そうして大輝、マオ、エルザは城に連れて行かれたのであった。




