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17話 炎の杖

17話 炎の杖


昨日一晩スキルアップをした結果大輝の<錬金術>はレベル4にマオの<回復促進>はレベル3、タマの<体炎>もレベル3まで上がっていた。


「今日はどうします?町でも案内しましょうか」


「今日も錬金術をやりたいかなもう少しでマオの武器も出来そうだし」


錬金術のレベルが3になった時、銅の合成に成功していた。


「そうですか。頑張ってください」



大輝、マオ、タマは昨日と同じ方法でレベルを上げていった。

昼過ぎにはエルザの持っていた火の杖の劣化版、小さな火の玉を出すだけのだが出来るようになった。


「おもちゃの様な道具だけど何とか形が出来たよ。次は威力を上げて行けば武器として何とかなるかな」


エルザは驚愕した昨日初めて錬金術をやり始めた人がもう最新技術の火の杖に似た物を作ったのだ。確かにモデルがあるのだから形にするのは多少は楽かも知れないが早すぎるのだ。


「これは本当に大輝様が作ったんですか?」


「えーでもまだまだ使い物にはなりませんけどね。これから威力を上げる事に重点を置いていくよ」


「…そうですか」


昼から威力を上げる事を考えた結果、錬金術で新たな発見をした。圧縮だ。石や木を圧縮し密度を上げる事で強度を上げる事が出来る事が分かった。その技術を使い赤熱石を何個か合成をしてその後、圧縮し元の魔石サイズまでした時その熱も格段に上がったのだ。その合成と圧縮を10回ほど繰り返した結果赤熱石の色が赤から白っぽくなっていたので一度カードに収納してみると名前が<白熱石>と変わっているのだ。


「なるほど元の効果の低い魔石でも合成と圧縮を繰り返すと上位の魔石が出来るのか」


これを魔導石でも繰り返し<魔導高石>を2つ作った。どうせならと杖の持ち手の所も強くしようと木を何度か合成圧縮し強度をました。そして白熱石と魔導高石を合成しようとしたが失敗、杖ともう1つの魔導高石を合成しようとしても失敗、この2つを合成するにはこの時レベルが足りないようだ。1つ上位に上がった魔石は銅より難易度が高い材質のようだ。


「後は組み立てるだけだがやはりレベル不足か…。出来るか分からないけどスキルを2倍くらい<強化>」


錬金術のスキルを強化するイメージで行い錬成陣に魔力を流す。いつも以上の魔力が流れ錬成陣が格段に強い光をだし白熱石と魔導高石の合成が成功した。そのまま杖と魔導高石合成も行い、最後にその2つを合成した。


「完成したかな?マオ、杖が形になったから試してみてくれないかな」


大輝は完成した杖をマオに渡した。


「…ほう、すごい力を感じるのぅ。少し重いがどれ試してみるか」


大輝はマオの言葉に頷き的となる岩を少し離れた場所に用意し始める。その時エルザが兵士を連れてやってきた。


「大樹様、マオちゃん、この間ゴブリンと戦っていた兵士の皆さんがどうやってゴブリンを倒したか聞きたいそうなのですが、…取り込み中でしたか?」


「いや、大丈夫じゃ。大輝の作った新たな杖の試し打ちをするところだっただけじゃ」


マオが持っている杖を見せたらエルザが驚きで声を失ってしまった。昼に見た時は小さい火の玉した出せない杖だったのだが今は段違いの魔力を感じる杖になっているのだ。


「マオ準備出来たよ」


奥で岩の準備が完了したので大輝が声を掛けた。


「魔法の杖の実験ですか?それは面白そうですな。我々も見学していいですか?」


兵士たちはエルザの持っている火の杖を知っているので、この男がどれほどの物を作ったか興味が出た。所詮10才ぐらいの子供に渡す杖、たいした威力は期待出来ないが身近な者が正規品より劣っていても少しでも量産出来るなら助かると思っていたのだ。


「構わぬ、行くぞ。炎よ!」


「!、ちょ、ちょっと待ってくだ」


正気を取り戻したエルザが慌ててマオを止めようとしたが間に合わない。


マオは杖に魔力を通して振りかざす。その瞬間、火の杖とは比べ物にならない大きさの炎の玉が岩に当たる。


「ドドォォォーーーーーーーーン!!!!!」


マオの杖から出た炎の玉は岩に当たった瞬間、大きく弾け燃え上がった。炎が消えた後、岩は半分融けて地面は吹き飛び直径5メートルぐらいのクレーターが出来ていた。


「……………」


皆がそのあまりの威力に固まってしまっている。その中で大輝とマオだけが普通に驚くぐらいで話始めた。


「ほう、なかなかの威力じゃ。じゃが少々MPを使い過ぎる気がするのぅ」


「やっぱりそうか…大体MPを15くらい使っているね。マオの今の最大MPでは5発が限界で切り札には良いけど多用は出来ないね…」


「じゃが気にいたぞ。ありがたく使わしてもらおう」


「はは、気に入ってくれて良かったよ。実はこれを作るのにMPを使い過ぎてくたくたで、駄目と言われてももう1つ作るのはきつかったからね」


「それは迷惑を掛けたのぅ。ほら<回復促進>じゃ」


「ありがとう、ところでエルザさんが来てたっぽいけど……」


大輝が近づいてきてエルザを見つけた時、一緒にいる兵士も目に入ってしまった。


「やば!なんで兵士がここにいるの!」


「ああ、なんでもそこの者達がゴブリンをどう倒したか聞きたいらしいんじゃと」


「なるほど昨日の…」


「あ、あ、あ、貴方はなんて物を作るんですか!あんな威力のを打てばこの辺の人達は全員気付きますよ。それにこのクレーター、目立たないようにすると言いながら誤魔化しの効かない証拠を残してどうする気ですか!」


エルザは目立ちたくないと言う大輝の為に色々気を回していたのに、常識外れの威力をあっさり試し撃ちして注目を浴びてしまう大輝に文句が止まらなくなっていた。


「エ、エルザさん落ち着いて」


「これが落ち着いていられますか!この山には私の家しかないのですよ。その近くでこんな爆発が起これば間違いなく私が関係していると分かってしまいます。どう誤魔化す気ですか!」


「たまたま出来たとか、山に埋まっていた魔道具とか…」


「魔道具は偶然には出来ません!それにこんな何の伝説もない山にこの威力が出せる魔道具が出てきたと言っても誰が信用するのですか!」


「なら…逃げるか。とりあえずギルドマスターの所にでも行こう。さあマオ、タマ行くよ!エルザさんもほら」


「うー、逃げてどうにかなる問題でもないのですが…」


エルザも文句を言いながら冒険者ギルドに向かって行った。残された兵士3人はまだ驚きから覚めておらず近くの人が様子を見に来るまで呆けたままだった。



「と、言う訳なんです。ほとぼりが覚めるまで匿ってください」


冒険者ギルドに着きギルドマスターの部屋に入った3人と1匹。事情をエルザが説明しビックルに泣き付いているのだ。


「あの振動はお前達が原因か…何事かと思いギルド内も緊張が走ったぞ」


「すみません。あんなに威力があるとは思いませんでした」


「はー、エルザよ。お前の目から見てその杖はゴブリンに通用しそうか?」


「通用するどころか10匹くらいはまとめて倒してしまいますよ…」


「そんなにか!大輝よ一度試させてもらえないか?」


「あーあれはマオの武器だからマオに聞いてください」


「妾は構わぬぞ。たださっきの威力じゃと地下の訓練場の端から撃たねば危ないから注意するのじゃぞ」


そう言うとマオは炎の杖をビックルに渡した。


しばらくして本日2度目の地震がギルドを中心に起こった。


「何なんだこれは!昨日から錬金術をやり始めた者の作る物じゃないぞ!」


「そうですよ。それは私も気になりました。だって貴方の錬金術の腕は銅も合成できないくらいだったじゃないですか」


「そんな馬鹿なこの杖の威力に目が行きがちだが杖の硬さも下手をすれば銅と変わらないくらいだぞ!」


「そんな木が銅と同じなんで一体何をやったんですか!」


「待って説明するからちょっと落ち着いて」


エルザとビックルの止まらない問いに説明をしないときりがないと判断した。


「まず昼頃に見せた火の杖の弱い奴、あれは昨日道具屋で買った赤熱石と魔導石と家の裏に落ちていた木の枝を使って作ったんだ。赤熱石と魔導石を合成して先端の核を作り、木の枝を加工して杖の形を作ってそれと魔導石を合成し魔力の流れやすい杖を作った。そしてこの2つを合成して作ったのが劣化火の杖という訳だ」


「なるほど合成の時に性質変化もちゃんとイメージして各パーツを作り組み立てていったんですね」


「そう、ただ安い魔石をそのまま使ったから威力もあれしか出なかった。そこで威力の高い魔石が必要になったので合成と圧縮を使って赤熱石を白熱石に、魔導石を魔導高石にしたんだよ。杖も同じで何度か繰り返して硬度を上げていった。それらを組み立てたのがさっきの炎の杖って訳」


「圧縮がどういう物かは分かりませんが明らかに貴方のスキルの範囲を超えています。それはどういう秘密があるのですか?」


「秘密ってほどではないけど僕のスキル<錬金術>はレベルがありスキルを使えば使うだけ成長し変化させる事が出来る範囲が広がっていくんだ。今はレベル5、今は銅の合成なんかも出来るようになってるよ」


そう言うと練成陣をさっと広げ銅塊を2つ置き、合成を行い成功させる。


「…うそ、昨日は出来なかったのに………本当に、…成長する、スキル……」


スキルが成長する。それが可能ならその内全ての鋼材を扱うことが出来る。この世界では聞いた事もないスキルの内容にビックルもエルザもただ驚くしたなかった。


「ただ問題は僕の錬金術はスキルレベルがそのまま使用MPになってるから上位変換を多用出来なくなってるんだよね。1個作るのに合成と圧縮を合わせて20回くらいするから今なら100くらいMPを使ってしまうんだよ。今は回復中だから見せる事は出来ないので信じてもらうしかないけどね」


マオが<回復促進>でMP回復してくれているがまだ全快には程遠い。寝ないでも回復してくれるのは助かるが回復スピードはまだまだゆっくりだ。それにマオ自身にはMPの回復だけは発動しないので無限に使えるという事は出来ないだ。そしてMPがそろそろ切れるので大輝のMP全快は見込めないのである。


「と言う訳で製造方法教えたんだから、しばらく匿ってねギルドマスター」


大輝達の居候生活は続くのであった。

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