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16話 錬金術

16話 錬金術


1階に戻って来た時、大輝達をエルザが探していた。


「もう、探しましたよ。どこに行っていたんですか」


「いやー、冒険者登録に試験がいるって言うんでそれを」


「?。そんなのはなかったと思いましたが…」


「エルザよ、大輝の姿を見てみよ。武器もなし服装も戦いとは無縁のこの姿、今のこの国の状況から考えて無駄死にしそうな奴にしか見えんじゃろ」


そう大輝達の恰好はワンスさんに貰った村人の服なのだ。そこに武器もない状態では自棄を起こしているようにしか見えないのは仕方がない。


「!、そうですよね。すみません失念していました」


「いや、仕方ないよ。だってこの世界での僕は錬金術師なんだもの」


その言葉に周りの冒険者達はざわついた。錬金術師のレベル2の男が冒険者になると言い試験として訓練所に連れて行かれたのだ。誰もがボコボコにされて来ると思ったのに出てきた大輝は無傷どころか余裕を感じられる。一体何があったんだとざわつくなかエルザは周りの空気が変わっているのに気付いていないようだ。


「それでは2階に行きますか、ギルドマスターが待っています」


そう言うとエルザは大輝達を連れて2階に上がっていった。残された冒険者達はギルドマスターに会いに行く事実にまた1つ疑問が生まれているのであった。



「ギルドマスター、入りますね」


エルザは2階の部屋のドアをノックした。


「おう、入れ」


「失礼します」


「…お前たちがエルザの言っていたやつらか。俺はこの国のギルドマスターをやっている<ビックル>だ」


そこには身長は150センチぐらいだが筋肉質の40後半に見える男が立っていた。


「はじめまして、僕は大輝、こちらがマオとタマです」


「うむ、まずは座って話をしよう」


ビックルに勧められるまま大輝達は席に着いた。


「さて大輝よ無事に登録は出来たか?お主は錬金術師と聞いたからあまり依頼はないかも知れんがな」


「はは、何とか試験に合格しましたよ」


「試験?試験とはなんだ」


「僕の恰好から無駄死にするだけだと心配させてしまいまして」


「それで試験内容は?」


「下にいた人と模擬戦をしました」


「ほう」


下にいる冒険者はまだ弱いがそれなりに経験を積んでいる。見た所、弱そうな大輝には勝つ要素が見えない。見えないからこそ何かを持っていそうで嬉しくなるビックルなのである。


「あのー、そろそろ商談の方を…」


「ああ、すまないエルザ。では口外しないで買い取って欲しい武器ってのは?エルザの家に置いてきたのか?」


「持ってきてますよ。これです」


大輝はそう言うとカードから鉄の斧を取り出した。


「な、今何処からだした。…それにこの斧、なんだこの刃はまるで切れそうな鋭さ、そしてこの堅そうな材質は……」


ビックルは突然、斧が現れた事も驚いたがこの斧の材質、鋭さに驚愕しているのだ。


「それは鉄の斧、作りは甘いのでそこまで攻撃力はないでしょうけど銅の武器とは違って切り裂く事が出来るのでそれなりの人が持ってもゴブリンを一撃で両断出来るでしょう。ただし今あるのはこの斧1つだけです。なので内緒で買い取って欲しいのです」


「買い取るのは構わんがこれを量産出来ればゴブリンどもにも負けない。大輝よこれはどのようにして作ったのだ?お主は錬金術師と聞いている、これを量産は出来ないか」


ビックルの興奮は収まらなかった。絶望的なこの状況で攻撃力を増強出来るのは希望が持てる。それが銅とは比べ物にならないほどの武器ならなおの事である。


「期待させてすみませんがそれは僕が作った訳ではないんです。僕は錬金術を試してみたくて錬成陣が欲しく、それを買う為のお金が欲しいだけなんですよ」


「そうか残念だ…。だがお前の錬金術で作れるようになったらぜひ持って来てくれ」


「まだ鉄鉱石か砂鉄があるか分からないから作れる保証はありませんがその時にはよろしくお願いします」


「ああ頼む。それでこの斧だが取り合えず5000ゴールドでどうた」


「…エルザさんどうです?5000ゴールドで錬成陣など必要そうなのは揃いますか?」


「十分揃いますよ。銅の剣が20本以上買える値段ですよ!」


大輝達はこの世界の物価がまだ分からないのでエルザに聞かないといけないのだ。


「それではそれで構いません」


「ふむ。金の価値が分からんとは深くは聞かんが実に興味深いな」


ビックルはニヤっと笑いながら大輝にお金を渡す。この世界のお金は単純に1、10、100、1000,10000の5種類で数字が金貨に書いている物である。今回は1000の金貨を5枚渡されたのである。


「それでは匿名の件よろしくお願いします。エルザさん次は道具屋に行きますか」


「そうですね。道具屋はすぐ隣なので行きましょう」


「大輝よ。武器だけではなく面白い物が出来たら持ってきてくれ。また匿名で買い取ろう」


「ありがとうございます。それではまた」


「くくく、こんな状況だが面白くなってきた。こんな気持ちは久しぶりだ」


大輝達が出て行った部屋でビックルが楽しそうに笑っていた。



「ここが道具屋です」


ギルドを出てすぐ隣の道具屋に大輝達は着いた。道具屋の中はまるで駄菓子屋だった。赤や緑など色の付いた丸い玉が入った容器が複数並んでおり、また上から吊り下げるように魔法陣が描かれた紙も何種類もあった。


「色々ありますけどこの丸い玉が魔石ですか?」


「そうです。魔道具の製造や家庭用品で使う魔石ですね。使い捨ての物から魔力を通すと効果が出る物などです」


「家庭用品の魔石?」


「ええ、たとえばこの青い魔石は一度魔力を通すと10日間ほど冷気が出続けます。箱などに野菜などと一緒に入れて置くと長持ちするんですよ」


「冷蔵庫か…あっちに架かっている魔法陣が描いている紙が錬成陣?」


「はい、製薬用、鍛冶用などの専門があり複合のスキルの錬金術用は少し高いですが……これですね。後は数回で使用できなる紙製とやや耐久力のある布製があります。どうします?」


「そうだね何度か練習したいから布製で、後は魔石を適当にいくつか買っていこうかな」


「それでは錬成陣で2000ゴールド、魔石で500ゴールドですね」


「それじゃ、支払いを済ませて帰ろうか」



エルザの家に帰って来た大輝達は早速、錬金術に挑戦してみる事にする。


「まずは簡単な事からやってみましょう。買ってきた錬成陣を広げてください。そして外に落ちていた2つの石を置きそれを1つにしてみましょう」


「分かりました。まず錬成陣を敷いて石を置き、2つを1つにするイメージで魔力を通して」


言われた通りの手順で作業を行い魔力を通す。そうすると錬成陣が光、光が収まった後は一回り大きい石が1つあるだけだった。


「成功ですねこれが合成の技術です。次は付与ですが一緒に買った赤熱石を触媒にしてさっきの石に合成するのです」


手順は一緒でほのかに熱を持つ赤熱石の性能だけを合成するイメージで行う。

成功したようで大きさは変わらないが触ってみるとほのかに熱を持っている。


「付与した場合は大きさ変わらず性能だけ移ります。後は加工ですね。予想は付いていると思いますが加工したい物を置いて魔力を流して形を変えるだけです」


大輝は石の形を剣にしてみた。元が小石2つ分なのでペーパーナイフが出来た。しかし簡単に折れてしまった。


「元が石なので仕方ありませんよ。基本はこんな所です、後は材質を変えて何処までやれるかを調べる事ですね。まずは銅で試してみましょう」


さっき一緒に道具屋で買っておいた銅塊を合成しようとしてみたが光が収まっても変化はなかった。


「あのーまことに言いにくいのですが銅も合成出来ないとなると、…大輝様がスキルで武器の製造は絶望的です…」


この世界ではスキルを授かった時に扱える金属レベルが決まる。そして現状で銅すら合成出来ない大輝には望みがないと思われているのだ。


「まー予想は付いていましたよ。でも魔力が続く限りやってみるから今日は先に寝てください」


「…無理はしないでくださいね」


エルザは自室に入っていく。


「さてマオもタマも先に寝ておいてよ。僕はもう少しやっていくから」


「ふふ、お主の事じゃから錬金術の所にレベルでもあったのではないか。そうなると使えば使うほど強くなる、じゃからMPの限りレベルを上げる算段じゃな」


「はは、見透かされてますね。そうです、MPの限りやってから寝るから先に寝てください」


「うむ、じゃあ妾もレベル上げに付き合うかのぅ。<回復促進>!。とりあえずMPの回復力を上げてみた。タマもスキルアップをするのじゃ、ほれ<回復促進>」


「キュー!」


タマは周りに何もない所に行きスキル<体炎>を使い体の周りに炎を纏う。


「ほれ、大輝もどんどんやらぬか」


「あ、ああ。よろしく頼むよ」


2人と1匹は夜遅くまでスキルアップに時間を費やした。



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