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15話 冒険者ギルド

15話 冒険者ギルド


家に帰ってきて暫くしてエルザは落ち着きを取り戻し情報交換を始めていた。


「なるほど大輝様は元の世界に帰ったのではなくエルグラウンに召喚されていたのですね。そしてマオちゃんとタマちゃんはその世界の住人だったんですね」


大輝が持っていた鉄の武器や自然に干渉する魔法などのエルグラウンでの知りうる情勢を説明し、今度は大輝達が質問を開始した。


「先ほどのゴブリンから思ったのじゃがゴブリンロードは本当に魔族たちの王、魔王なのか?」


ゴブリンはイメージ通りの弱さだった。そんな雑魚を率いているのが魔族のトップとは思えなかったのだ。


「はい、確かに魔王です。ですが魔王の中でもおそらく下の方だと思いますが…」


「え、魔王の中でもって?もしかして魔王って複数いるんですか?」


「はいそうです。1000体以上のモンスターを率いている者や単体でも強い者は魔王を名乗れるのです」


「何その魔王の大安売り……」


「しかし仮にも魔王ならゴブリンロードを倒せばこの辺りのゴブリンどもは逃げ去るじゃろう」


「そうだね、1000体以上のゴブリンは相手に出来ないから魔王撃破を狙えば何とかなるかもしれないね」


「!。それでは!」


「まだどうにか出来ると決まった訳ではないけど、出来る限りの事はしてみるよ」


「あ、ありがとうございます!」


「まだどうやって倒すかは決まってないけどまずは色々知る事から始めないとね。それでエルザさん言ってたよね僕のレベルが1なのにって、あれってどうして分かったんですか?」


それは、とエルザは左手の青い色の宝石が付いている指輪を掲げ見せてくれる。


「この指輪を装備して意識を集中すれば相手の頭の上にレベルとHP、MPの量が見えるのです。ただレベルと違ってHPなどは数字ではなくゲージのようで最大HPからどれぐらい減ってるかしか分かりません。今の大輝様はレベルが2になっていてHPは全快、MPが微々たる量減っているように見えます」


「なるほど、これはモンスターにも通じるの?」


「はい、同じです」


そう聞き大輝は魔石入りの指輪を借りて、エルザを見てみると頭の上に浮かんでくる。エルザのレベルは10のようだ。これは戦闘にかなり有効な道具だ。


「この道具はやっぱり魔石の効果ですか?」


「はい。確か魔導石に見知の付与をした物です」


「こういう道具は錬金術で作る事が出来るのですか?」


「錬金術は物の加工、合成、付与などの総合スキルなので才能が許す限りの範囲で作れます」


「才能が許す限り?努力や知識で成長するのではないのですか?」


「いえ、錬金術もですが鍛冶、製薬などの生産スキルは会得した時にその人がどこまでやれるかが決まります。たとえば銅まで加工できる人はそれ以上の鋼材は加工出来ません」


「スキルに頼らないで加工する事は出来ないのですか?」


「スキルに頼らないで加工する方法ですか?…そのような方法は聞いた事がありませんね」


この世界、もしかしたらこの国だけかもしれないがすべてスキルに頼っているようだ。


「スキルが使えないレベルの人達はどうしてるのですか?」


「そのような人は農業など食糧品の生産職に着くか体を鍛えて冒険者や兵士になるかしますね」


「冒険者はこの世界でもあるんですね」


「冒険者はギルドに登録していて探し物や護衛、小さい依頼で言えば草むしりなど、そう言う事が出来る人は必要ですので。この国にも冒険者ギルドはありますが今はほとんど機能していません。大半の冒険者がゴブリンに戦いを挑み命を落としました」


「そうですか…」


ゴブリンが攻めてきた時、城の兵士が戦いに挑むだろうが数が数だし冒険者にも依頼が来たのだろう。そして惨敗し今の状態になってしまったようだ。


「ところで先ほどお主が使っておった火の杖じゃったか、あれは妾も使えるのかのぅ」


「多分使えますよ。あれは魔力があれば誰でも使える道具ですから。ただ生産出来る人が少ないので高額で数も出回ってません。…それに、タマちゃんの炎の足元にも及ばない威力しかありませんよ」


最新技術と思っていた物の上を簡単にいかれエルザはショックを受けているようだ。


「威力は技術の発展で上がっていくじゃろう、それより万人が使える方が武器としては優秀じゃ」


「そう…ですよね。タマちゃんの炎みたいなトップクラスの威力と比べるのは間違ってますよね!」


「うむ。大輝よ妾もあのような武器が欲しいのじゃが作ってはくれないかのぅ」


「確かにマオに向いている武器かもしれないね。じゃあまずは新たに会得したスキルでどれくらいの事が出来るか検証しようか。エルザさん錬金術ってどうやるんですか?」


「詳しくは専門ではないので分かりませんが、錬成陣の上に使用する鋼材などを置いて魔力を流して変化させるスキルだったはずです」


「錬成陣…それって毎回書かないといけない物ですか?」


「いえ、道具屋で錬成陣を書いてある紙が売ってますので少し高いですが買えますよ」


「そうなるとまずはお金を手に入れる必要があるか…使わないし鉄の斧でも売ってお金にするか」


鉄の剣は大輝が使うから取って置きたいが斧は使う予定はない。それに鉄の斧を装備したらゴブリン相手に優位に戦える人が出るから大輝達にもメリットが出るのだ。


「問題は目立たず売れる場所だけど…エルザさん心当たりはありませんか?」


「それなら冒険者ギルドに持って行きますか。ここのギルドマスターは知り合いなので内密に話を進めてもらえます」


「じゃあ冒険者ギルドに行ってみますか。僕も冒険者ギルドに登録はしておきたいので」


「分かりました、では早速向かいましょ」



エルザの家を出て10分ほど歩いた所に冒険者ギルドはあった。見た目は少し大きめの2階建の家だが中は1階が酒場のような形になっている。しかし人は疎らで活気もない、皆が下を向きお酒を静かに飲んでいる。


「私はギルドマスターに話をしてくるので大輝様は登録を済ませておいてください。そこの受付で登録出来るはずです」


エルザが指した方向に歩いていきそこにいるおばちゃんに話をする。


「あのー、冒険者の登録をしたいのですが」


「!。あんたそんな若さで冒険者になりたいだなんて、今のこの国の状況が分かっているのかい?冒険者になれば一番にやつらと戦わなければならないんだよ。…見た所まだレベル2のようだし悪い事は言わない、やめときな」


「いや、でも…」


「おい!そこのガキ!子供とペットを連れて冒険者になりたいなんて馬鹿にしてんのか」


大輝の言葉が聞こえたか受付のおばちゃんの声で内容を察したか、お酒を飲んでいた冒険者っぽい人が怒ったように歩いてきた。


「え、馬鹿にしてないですよ。ただ生活費を稼ぐのに冒険者になるのが一番楽そうなので」


「楽!冒険者が楽だと!?エルザべスこの世間知らずのガキに現実を見せてやる、構わないか」


どうやら受付のおばちゃんはエルザべスと言う名前らしい。


「はー仕方がないね、坊や冒険者になりたいなら試験を受けて貰うけど良いかい?」


「試験と言うとやっぱりこの人と?」


「そうよ。今から地下の訓練所で模擬戦をやってもらう。…やめるなら今の内だよ」


「はー。構いません、行きましょう。連れが戻ってくる前に終わらせたいので」


「何処までも舐めやがって!行くぞ着いてこい!」


そう言い受付の隣から階段を下って広いスペースに出た。


「それでは試験を始めるよ。内容はどちらかが戦意を喪失するか降参するまで、また死そうになったら私の独断で戦いを止める。文句はないね」


「ええ構いません」


「それじゃあ。始めな」


「おいお前、武器も持たずに試験を受けるなんてふざけんなよ!そこに架かっている武器を選び使いな。待っててやる」


そう言う方向を見ると剣や斧、槍など色々な武器が置いてある。


「ここって何の為の部屋なんですか?」


「ここはランクが低い冒険者が訓練に使ったりギルドランクを上げる為の試験をする場所さ。いいから坊やは武器を選びな」


「いや武器は持っているから構いませんよ」


そう言うとカードから鉄の剣を出した。周りから見ると何もない所から急に武器が出てきたように見える。そしてその武器は見た事もない綺麗な刃に目を奪われた。


「お前、何処から…それになんだその武器は?」


「今はそんな事は関係ないでしょ?早くはじめましょう、さっきも言いましたが連れが戻ってくるので」


「ふざけやがって行くぞ!」


男は銅で出来ているであろう剣を大きく振り上げ大輝に切りかかる。


遅い、印象はそれだけだった。男が振り下ろす剣を見ながら避けていく。


「ちょこまか避けやがって、逃げるしか能がないのか!」


「強化の魔法は使わないのですか?」


「何処までも舐めやがって!死んでもしらねぇぞ。<強化>!」


男の体全体が薄く光だした。体感で倍のの速さで切りかかってくる。

大輝は男の振り下ろしてくる剣に合して鉄の剣で根元から切り、そのまま男の首元に滑るように剣をあてがう。


「これで終わりですね」


「…そ、そこまで」


「ありがとうございます。それでは上に行きますね」


大輝は剣をしまいマオ達を連れて上に上がって行く。その様子を茫然と見ていた2人は信じられない者を見ているような顔をしている。


「…なあ、あいつは本当にレベル2だったのか?」


「…確かにレベル2だったよ。それは間違いないよ」


「それにやつの武器は何なんだ?剣を切るなんて聞いた事もないぞ」


「分からないよそんな事…ただ武器の性能だけではないのはあんたとの戦いで分かったよ」


「確かにあれは実戦を経験している動きだ。今度エルザにやつらが何者か聞いてみるか」


「!、エルザで思い出したけど少し前にゴブリンが5体攻めてきて兵士が3人だったのでその場に居合わせたエルザが2体引きつけたらしいんだけど、合流地点に行った兵士の話ではもはや武器しか落ちていない状況だったらしい。その時にエルザと一緒に見慣れない2人と一匹もついていったみたいなんだけど…」


「…エルザの実力は知ってるが1人でゴブリン2体では時間稼ぎぐらいしか出来ない。それに打ち合わせ通りのコースであの場所に誘導したら兵士が来るまでは3分も掛からない。そうなるとその間に倒し姿を消した事になる」


ゴブリンが攻めてきた時、冒険者がその場に居合わせ兵士の数が少ない場合はわざと注意を引いて遠回りしながら指定の場所で増援が来るのを待つ取り決めがある。実際、大輝達が後数分戦っていれば兵士たちが来て鉢合わせになっていたのだ。


「何にせよ、僅かな希望が生まれたのかも知れないね」


絶望の中の僅かな希望かも知れないと2人は大輝達が上がって行った階段を眺めながら思ったのである。

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