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12話 転移

12話 転移


「大輝よ、まずは何処の町に向かうのじゃ?」


ノームは一番近い町だが間違いなく奴隷商がいるのであまり行きたくはない。が、他の町に移動するのに徒歩だと一ヶ月以上掛かるがノームから出てる馬車を使えば1週間で比較的安全に行ける。


「一先ずノームを目指そうと思います。その後北西の<ディーナ>の町へ向かいます」


「ノームまでの道は北の森を抜けるのが一番近いが、昨日の騒ぎがあったから避けた方がよいのう」


昨日、奴隷商を縛って放置してきたので仲間が探しに来ているかもしれない。鉢合わせになってこれ以上問題が大きくなるのは避けた方が良いだろう。


「東の森を抜けて川沿いを北に向かうのが楽かもしれないが、僕が逃げてこれたルートなのでそっちも避けたいです。と言う事は西の森を抜けてから、ノームに向かう遠回りのルートしかないですね」


「そうじゃのう。そのルートでは4日ほど掛かるがそれが一番かもしかないのう」


「後はディーナ行きの馬車のお金ですが、途中で薬草などを拾っていき換金する事で賄う予定です」


「多少ならわしが出す事も出来るぞい」


「いえ、今までこの家に泊めさせてもらってかなり助かりました。これ以上、ご迷惑を掛ける訳にはいきません」


「お主ならそう言うと思ったよ。じゃがせめてこの袋を持って行くがよい」


ワンスは麻の袋を大輝に渡して来た。


「これは何に使うのですか?」


「豆知識のようなものだが薬草などを1種類だけ入れてカードにしまうと、1枠で大量のアイテムをしまえるのじゃ」


「なるほど!薬草がいくつか入った袋、ってアイテムになって1枠で収まるという訳ですね」


「そう言う事じゃ。後、これも同じようにしてパンを入れておいた、旅の足しにしておくれ」


「何から何までありがとうございます」


「良いんじゃよ。わしに出来るのはここまでじゃ。旅の安全を願っとるぞい」


「はい!行ってきます。ミミも元気でね」


ミミは泣きそうな顔でずっと黙っていたが声を掛けられた事で我慢出来なくなってしまった。


「お兄ちゃん気を付けてね。…また家に来てね。…タマもマオちゃんも、またね」


ミミは泣きながらも元気に見送ろうと頑張って笑顔を作ってくれていた。


「うむ!ミミも元気でな」


「キューーー!」


マオもタマも笑顔で応え手を振りながら別れ、3人は西の森に向かって行くのだった。



「この森は角ウサギが出るから突進には注意して行こう。それでマオはこのナイフを持ってみて」


そう言うと大輝はマオに今まで使っていたナイフを渡した。


「使えそうなら護身用として装備してほしいんだけどどうかな?」


マオを渡されたナイフを数回振ってみる


「少し振り回される感覚はあるが何とかなりそうじゃ」


「じゃあマオはそれを装備して、僕は山賊が使っていたこの剣を使うよ。それで最初の方は僕とタマがメインで角ウサギの相手をしていくので、マオはレベルが上がるまで無理をせずに、様子を見ながら参戦する形で行こうと思う」


「まあ、仕方がないのう」


マオは1人だけお荷物の様な感覚になるが実際レベルが低いので仕方なく納得した。


「それじゃあ、タマは余裕がある限りスキルを使用していって、MPが半分を切ったら休憩で。後、薬草を見つけたら周りを確認して回収でよろしく」


「キュー!」


タマも理解したようで声を上げた。


その後、何度が戦闘を繰り返し昼頃になった時、タマのMPが半分を切ったので食事休憩をする事にした。


「ここらで一回休憩をしよう」


そう言いながら大輝はカードからパンを出し皆に配って食べた。


「初めてまともな武器で戦ったが木の棒とは全然違うのう。かなり楽じゃ!」


これまでの戦いでマオは角ウサギに一対一なら互角以上には相手を出来る事が分かり大輝達と一緒に戦うようになっていた。


「しかしタマにそんなにスキルを使わせてはすぐにMPが切れてしまうぞ。休憩させると言っておったがお主が回復するまで背負うつもりか?」


マオもMPを回復させるには十分な睡眠が必要なのは分かっているようで当然の疑問を大輝に問いかけた。


「あ、そうかマオにはまだ見せた事がなかったっけ」


「?。…何をじゃ?」


「タマ、一回休憩しようカードに入って」


そうタマに言いカードに入ってもらう。


「!!!。なんじゃ?タマがカードに入った?じゃがそのカードには生物は収納出来ないはずじゃ、どういう事じゃ?」


今まで常識とされていた事があっさり崩され驚きの顔でマオは大輝に聞いてきた。


「ああ、タマと使い魔契約をしたら使役者ってスキルを覚えたんだ。カードに使い魔を出し入れ出来て、入っている時は僕の目と耳を通して外を見ていてHPやMPも回復して行くんだ。MPは大体2分で1回復するだよ」


「………」


大輝の説明に言葉を失う。大輝は自然に説明してくれたがこの世界では属性魔法しか存在しない。それにMPの回復スピードが圧倒的に早すぎるのだ。


「大輝よ、お主は何を言っているのじゃ?使役者?そんなスキル妾は存在してから今まで見た事も聞いた事もないぞ」


「存在してからってマオはまだ10歳にもなってないでしょう。知らないだけで色々あるんじゃないかな」


大輝はマオの大げさな言い方に笑いながら答えた。


「…妾はいろいろ知っておるのじゃ。大体そんな事が出来るのならとっくにモンスター使いなどが現れておるし、カードの常識も破っておいてそんな言い訳で誤魔化される妾ではないぞ」


「はは…、やっぱりこっちの世界ではないスキルか」


「こっちの世界?…妾とお主はいまや運命協同体。スキルの秘密を話してもらえんかのう」


「分かったよ。起こった事を話すけど証明は出来ないから信じてもらうしかないけどね…」


大輝は始めの経緯やスキルの話をマオに話した。途中驚いた顔やなにやら悩む仕草をしながら最後まで話した。


「エルディアのぅ…この世界に呼ばれる事があるのなら他の世界に呼ばれる可能性も否定出来ないが、大輝!お主相当運が良いのか、悪いのか分からんが奇跡みたいな確率を引いておるのう」


「そんな奇跡は要らないけどね…。でも、そのスキルのおかげで生きているんだから感謝しないと駄目なんだろうね」


大輝とマオは苦笑しながら話を終えると、少し離れた所で大きな音が聞こえてくる事に気付く。慎重に歩いて見に行くと大型のモンスターが冒険者っぽい5人のチームと戦っているようである。


「あの大きな猪のモンスターはこの辺のフィールドボスかな」


「多分そうじゃろうな。なかなかの威圧感じゃ」


「冒険者っぽいチームも頑張っているようだけど大猪の方が押しているようだ」


「連携は悪くないが火力が足りなすぎる。あやつらが持っている武器では大猪の皮膚を切り裂く事が出来ておらん、このままでは時間の問題じゃな」


そう分析している内にチームのブロッカーのような役割の盾を持った者が吹き飛ばされる。生きてはいるようだが陣形を崩されたチームは一気に押され始めた。


「ここまでのようだね。タマ出てきて!大猪を一気に倒すよ。マオはここで見ていて」


大輝はカードからタマを呼び出した。


「…人間は厄介事には手を出さぬと思っておったがのぅ」


「平穏に終わればそれが一番と思っているけど、流石に目の前で見てしまった以上はね…」


おそらく負ける事はないと分かっている大輝は苦笑交じりに軽口を叩いてから飛び出す。


「タマ!<狐火>を3つ同時に大猪の顔に放って」


タマは狐火のスキルレベルがあがっており同時に3つまで放ち、操る事が出来るようになっていた。狐火が大猪の顔に当たり燃え出した。その炎が視界を遮り大輝はあっさりと接近する事が出来た。そのまま無防備な大猪の首元に。


「<かまいたち><強化>2倍|」


昨日の山賊との戦いで2倍強化の感覚を掴んだ大輝は、強力な風の刃で大猪の首を半分以上切り裂き倒した。

全滅を覚悟していた冒険者チームは突然現れてあっさり大猪を倒した大輝を見て驚いて声も出せないでいる。


「今のが強化による風の刃か。近距離から一瞬の威力重視の魔法の使い方も合わさり、かなりの破壊力じゃ」


「まぁ、タマに視界を遮ってもらわないとこんな攻撃出来ないけどね」


マオがタマと供に近づきながらさっきの戦い方の感想を言った。大輝はこの世界に来てからほとんどの強敵をこの戦い方で勝ち抜いて来ている為、自分の戦闘スタイルとしてかなり馴染んできているのだ。


「さて大輝よ、大猪が消える前に一番大きな牙を切り取るのじゃ」


「え、何で?」


「フィールドボスクラスは息絶えて消えるまでにレアドロップの部位を切り取る事で確実に手に入れる事が出来るのじゃ。お主は今、金がいるのじゃろう?せっかく倒したのじゃ、手に入る物は全部手に入れておこうぞ」


マオの説明を聞き大輝は急いで牙を切り取った。タイミング的にギリギリで手に入れた瞬間大猪は消え去ってしまった。

2人と1匹で大猪が消えるのを見ていると冒険者チームの1人が話し掛けてきた。


「助かったよ。いったいあんた達、な!」


話し掛けてきた途中で大輝達を中心に異変が起きていた。


「なんじゃ?急に魔方陣が現れたぞ。何が起きておるんじゃ!」


足元には光輝く魔方陣が浮かび上がっていた。大輝はその光景に見覚えがあり、この後どうなるか体験しているので落ち着いて答える。


「多分大丈夫だよ。おそらくエルディアに呼ばれているんだと思う」


「さっき話していた異世界か…、それは少し楽しみじゃのう!」


のんきに2人した会話していると、次の瞬間2人と1匹の姿は冒険者チームの目の前から消えてしまった。


「いったい何がどうなっているんだ………」


展開に付いていけない冒険者チームは暫く途方にくれているのであった。

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