11話 マオ
11話 マオ
大輝は赤髪の子に土下座をしていた。
「すみませんでした。でもけっしてやましい気持ちはなかったんです」
赤髪の子は仁王立ちで大輝を見下ろしている。その顔は真っ赤で怒りをあらわにしており赤い髪と相まってかなりの迫力を出している。
「何がやましい気持ちはなかったじゃ!妾の唇を奪って更に知らない間に奴隷にしておいてこれ以上何をするつもりなのじゃ!」
「まー落ち着きなさい。大輝君も悪気があった訳ではないだろうに」
ワンスさんが仲介に入ってくれるが彼女の気持ちは収まらない。
「何を言っておる、現に妾は奴隷になっておるのじゃぞ。契約の内容は分からぬがどうせ碌でもない事に違いない!」
「そうは言っても大輝君は一応君の命の恩人にあたるのじゃぞ」
「この変態が命の恩人?」
命の恩人、その言葉を聞き彼女は少し落ち着きを取り戻し話を聞こうとしはじめた。
その間も大輝は何も言わずただ土下座をしている。
「そうじゃ、お主は森に倒れている所を山賊に捕まったのじゃ。そして奴隷商に売られる前にこの大輝君に救われたのじゃ」
「確かに妾は空腹で自生していた草を食べていた所までは記憶にあるが、その後の記憶はない…」
「お主はこの辺りに生えている精神麻痺の草を食べてしまっており、食べる事はもちろん水を飲む事も出来んほどの重症じゃったのだぞ。あのまま何もしなければ明日か明後日には死んでしまう所を大輝君が持っていたスライムの雫を飲ませてくれたのじゃ」
「だがく、口移しでしなくても…」
「言ったであろう、水も飲む事も出来ん状態だったのじゃから口移ししかない」
「だけど……」
「それに奴隷契約も奴隷商が行おうとしていた途中に戦闘になり、その流れの中で起こった事故の様なもの。大輝君を責めるのは筋違いではないかな」
「……………」
「そういう訳じゃから大輝君を許してあげてはくれんかのう」
「………分かった、大輝!お主を許す。だからもう頭を上げよ」
「ありがとう」
「もう良い。お主は妾の為に山賊と戦い助けてくれたのじゃ、お礼を言うのはこっちじゃ」
彼女は感謝の気持ちで笑顔になり大輝に手を差し出した。
「いや助けに行ったのはミミが連れ去られたからで………」
許してくれた事で緊張の糸が緩み余計な事を言ってしまった、と気が付いた時にはすでに声に出ていて彼女は笑顔のまま固まってしまった。
「いや、あの、その、……ごめん」
「…もう良い。それより早くこの奴隷契約を解除してくれ」
「解除?どうやるの」
「妾が知る訳がなかろう」
2人してワンスの方を見る。
「主の権利の移行方法はあるが解除の方法など聞いた事がないのう」
「「え!」」
「じゃからわしは解除方法を知らぬと言ったのじゃ。そもそも一度奴隷にした者に逃げられる可能性がある方法が一般に知れ渡る訳がなかろう」
2人して動きが止まる。ワンスの話に納得はする奴隷扱いされた者が、主に恨みこそすれ感謝する事はまれなのだ。そんな状況を作りかねない方法が知れ渡るはずがないのだ。もしかすると解除方法はすでに存在すらしてないのかも知れない。
「お主は元の世界に帰る方法を探すのじゃろ、そのついでに探してみればよかろう」
「ついでって…」
ついで扱いされて2人は苦笑しか出来ない。
「そういえばお主の名はなんというのじゃ?」
「あ、そういえば聞いてないや」
今更ながら彼女の名前すら聞いてない事に気付き顔を見る。
「…妾の名は<マオ>じゃ」
「マオか、分かった。不本意だろうけど今後よろしく」
「うむ、こうなったら仕方がない大輝よ。よろしくじゃ」
「さしあたって奴隷契約の内容を検証するのが先決じゃのう」
紹介が終わった事を確認したワンスが今後の為の提案をする。
「そうですね。今分かっているのはマオが僕に手を出せば苦しむ事ぐらいですね」
「あれはきつかったのう…」
彼女は思い出したのか体が一瞬震えた。
「その辺は奴隷商の立場を考えると基本じゃのう、後は主の命令に逆らう事を禁止するとか、一定以上の距離を離れるのを禁止するなどがあるかのう」
「マオとりあえず1つづつ試してみるか」
「そうじゃのう」
「じゃあそこの椅子に座って」
マオはあえて反抗の態度で大輝の言葉を無視した。
「ぐ!」
「わぁ!さっきのなしで、キャンセルで!」
マオまた苦しみだしたので慌てて指示を撤回すると、痛みがなくなったらしくマオは落ち着きを取り戻した。
「どうやら指示を聞かない間だけ痛みが出るみたいだね」
「うむ、じゃが試す度に痛みが来るのは嫌じゃのう…」
「でも今後の事を考えると試せる内にやっといた方が良いと思うから、苦しいだろうけど我慢してほしい」
「…そうじゃのう、重大な局面で縛りが出ると命に係わるかもしれんしのう」
「と言っても後は距離の検証だけだけどね」
2人の距離を縛る契約がないか確認する為に村の端から端まで離れていったが何も起こらなかった。どうやらこの縛りはないようだった。
他にどのような契約の可能性があるか分からない為、検証はここで打ち切りワンスさんの家に帰る事にした。
「ところでマオはどうして森で空腹になっていたの?家族は?」
「う…、家族は、いないのじゃ。ずっと昔に死んでしまってのう、力…いや財産もその時にバラバラにされてしまい、ずっと1人でいた。金もなく食べる物に困ったので食べれそうな草を食べたんじゃ。…その後はお主も知っておろう」
「それはなんと言ったらいいか…」
「構わぬ、ずっと昔の話じゃ。気にするな」
「ありがとう。なら一先ずは僕と一緒に行動するで良いのかな?」
「ああ、この契約を解除する方法も探さねばならぬしのう」
今後、最低でもこの契約が解除されるまでは一緒に行動をする事が決まったので大輝は今後の行動をワンスに伝える。
「今後なんだけど僕は昨日の戦闘で奴隷商に顔を見られている。このままこの村にいると、どんな問題が出てくるか分からない。なので明日ぐらいに村を出ようと思う」
「いやしかし、お主はミミの命の恩人じゃ。多少危険があっても追い出すようなまねは出来ぬ」
「その為にまたミミを危険に晒したら本末転倒ですよ。それに大きい町に行って冒険者登録もしたいし図書館で帰る方法とマオとの契約解除の方法を探したいですし」
「分かった。せめて町に着くまでの食料を用意させてもらう」
「ありがとうワンスさん、マオもそれで良いかな」
「うむ、妾は大丈夫じゃ」
今後の予定が決まりマオにも了承も得られた。
「そうなると森を抜けないといけないんだけど、マオのレベルってどれくらい?」
「妾のレベルは5じゃ、今はスキルが何もない」
そう言われマオの頭上を見てみると
マオ
レベル 5
HP 41 / 41
MP 43 / 43
スキル
タマの頭上にも見えたステータスがマオの頭上にも見えた。基本他人のステータスは見れないはずだが奴隷契約を成している為に使役者のスキルが効いているのかも知れない。
ステータスを見て自分達も山賊親分に勝った時にレベルが上がっている事を思い出し見てみる。
天兎 大輝
レベル 1 レベル 14
HP 85 / 129
MP 13 / 227
スキル 強化 ・ 風の初級魔法 (LV6)
使役者
・薬草
タマ
レベル 11
HP 74 / 116
MP 91 / 91
スキル 狐火 (LV4)
2人とも一度に4か5レベルが上がっていた。タマのレベルがここまで上がっていれば十分明日からマオを守る事が出来るだろうと安心し、今日は寝る事にするのだった。




