第7話「騎士団の影と、触れた本音の痛み」
1
騎士団本部の朝は、いつもより重い空気に包まれていた。
「副長、内部で“精神の乱れ”を起こした者が出ました」
報告を受けたレオンの表情が険しくなる。
「内部で……?」
雪菜は胸を押さえた。
(騎士団の中にも……病が?)
レオンは雪菜を振り返る。
「雪菜。君の力が必要だ。
内部の者なら、君の能力で“本音”を読み取れる可能性がある」
雪菜は小さく頷いた。
「……行くよ。レオンと一緒なら大丈夫」
レオンの瞳が揺れた。
『雪菜を危険に晒したくない……
でも、彼女の力が必要だ……
守りたい……でも怖い……』
(レオン……)
胸が甘く痛む。
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2
騎士団の訓練場の隅で、
一人の騎士が膝を抱えて震えていた。
「……声が……声が……」
黒い靄が薄く漂っている。
雪菜はそっと近づいた。
「触れるよ……大丈夫だから」
レオンは雪菜の背に手を添え、守るように立つ。
雪菜が騎士の腕に触れた瞬間――
思考が雪菜の脳に流れ込んだ。
『裏切りたくなかった……
でも、声が……命令する……
“門を開けろ”って……』
「……っ!」
雪菜は息を呑んだ。
(門……? 境界の門……?)
レオンが雪菜の肩を抱く。
「雪菜、離れろ!」
「だいじょうぶ……この人、苦しんでるだけ……」
雪菜は騎士の手を握りしめた。
「あなたは裏切りたいわけじゃない……
声に操られてるだけ……」
その瞬間――
黒い靄がふっと薄れた。
騎士は涙を流しながら雪菜を見た。
「……助けて……くれたのか……?」
雪菜は頷いた。
「大丈夫。あなたは戻れる」
レオンは雪菜を抱き寄せた。
「雪菜……よくやった……」
雪菜は胸が熱くなる。
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3
騎士が保護されると、
レオンは雪菜を連れて執務室へ向かった。
「雪菜。今の騎士の“精神層の乱れ”は……
アーヴィンが言っていたものと一致する」
「アーヴィンが……?」
レオンは頷いた。
「宮廷薬師アーヴィンは、精神層の研究をしている。
君の能力と、病の原因は“精神層の歪み”にあると言っていた」
雪菜は胸を押さえた。
(アーヴィン……私の精神層を解析したいって言ってた……)
レオンは続ける。
「この事件は、アーヴィンの研究所で解析する必要がある。
君とアーヴィンの力が揃えば、病の核心に近づける」
雪菜は小さく息を吸った。
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4
その時、扉が勢いよく開いた。
「レオン! 傭兵団の仲間が同じ症状を出してる!」
ガルドが駆け込んできた。
「黒い靄をまとって暴れたらしい……
雪菜、来てくれ!」
雪菜は息を呑んだ。
(ガルドの仲間にも……病が?)
レオンはガルドを見た。
「ガルド。城壁付近の患者と同じ症状だ。
雪菜の力が必要だ」
ガルドは雪菜の肩を掴む。
「頼む……雪菜……」
触れた瞬間――
雪菜の脳にガルドの思考が流れ込む。
『雪菜……仲間を助けてくれ……
あの時みたいな後悔はもうしたくねえ……
雪菜なら……救える……』
(ガルド……)
胸がぎゅっとなる。
レオンは雪菜を見つめた。
「雪菜。行くか?」
雪菜は迷わず頷いた。
「行く。ガルドの仲間を助けたい」
レオンの瞳が優しく揺れた。
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5
ガルドの仲間の元へ向かう途中、
雪菜はふっと胸の奥が揺れるのを感じた。
(……聞こえる)
レオンの“強い感情”
アーヴィンの“独占欲”
ガルドの“守りたい気持ち”
触れていないのに、微弱に聞こえる。
(私の能力……また進化してる……)
雪菜は胸を押さえた。
(この世界で……私はどうなるんだろ)
レオンが雪菜の手を握る。
「雪菜。私が守る」
アーヴィンの声が背後から聞こえる。
「雪菜、精神層の乱れは私が解析する」
ガルドが雪菜の背を押す。
「雪菜、仲間を助けてくれ」
三人の優しさが雪菜を包む。
雪菜は小さく笑った。
「……うん。みんなと一緒なら、大丈夫」
その言葉に、三人の表情が柔らかくなる。
雪菜は歩き出した。
次の事件へ――
そして、次の本音へ。
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第7話 終
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