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心が読める薬剤師、異世界で騎士と宮廷薬師と傭兵に奪い合われています  作者: 優涼


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第7話「騎士団の影と、触れた本音の痛み」



騎士団本部の朝は、いつもより重い空気に包まれていた。


「副長、内部で“精神の乱れ”を起こした者が出ました」


報告を受けたレオンの表情が険しくなる。


「内部で……?」


雪菜は胸を押さえた。


(騎士団の中にも……病が?)


レオンは雪菜を振り返る。


「雪菜。君の力が必要だ。

 内部の者なら、君の能力で“本音”を読み取れる可能性がある」


雪菜は小さく頷いた。


「……行くよ。レオンと一緒なら大丈夫」


レオンの瞳が揺れた。


『雪菜を危険に晒したくない……

 でも、彼女の力が必要だ……

 守りたい……でも怖い……』


(レオン……)


胸が甘く痛む。


---



騎士団の訓練場の隅で、

一人の騎士が膝を抱えて震えていた。


「……声が……声が……」


黒い靄が薄く漂っている。


雪菜はそっと近づいた。


「触れるよ……大丈夫だから」


レオンは雪菜の背に手を添え、守るように立つ。


雪菜が騎士の腕に触れた瞬間――

思考が雪菜の脳に流れ込んだ。


『裏切りたくなかった……

 でも、声が……命令する……

 “門を開けろ”って……』


「……っ!」


雪菜は息を呑んだ。


(門……? 境界の門……?)


レオンが雪菜の肩を抱く。


「雪菜、離れろ!」


「だいじょうぶ……この人、苦しんでるだけ……」


雪菜は騎士の手を握りしめた。


「あなたは裏切りたいわけじゃない……

 声に操られてるだけ……」


その瞬間――

黒い靄がふっと薄れた。


騎士は涙を流しながら雪菜を見た。


「……助けて……くれたのか……?」


雪菜は頷いた。


「大丈夫。あなたは戻れる」


レオンは雪菜を抱き寄せた。


「雪菜……よくやった……」


雪菜は胸が熱くなる。


---



騎士が保護されると、

レオンは雪菜を連れて執務室へ向かった。


「雪菜。今の騎士の“精神層の乱れ”は……

 アーヴィンが言っていたものと一致する」


「アーヴィンが……?」


レオンは頷いた。


「宮廷薬師アーヴィンは、精神層の研究をしている。

 君の能力と、病の原因は“精神層の歪み”にあると言っていた」


雪菜は胸を押さえた。


(アーヴィン……私の精神層を解析したいって言ってた……)


レオンは続ける。


「この事件は、アーヴィンの研究所で解析する必要がある。

 君とアーヴィンの力が揃えば、病の核心に近づける」


雪菜は小さく息を吸った。


---



その時、扉が勢いよく開いた。


「レオン! 傭兵団の仲間が同じ症状を出してる!」


ガルドが駆け込んできた。


「黒い靄をまとって暴れたらしい……

 雪菜、来てくれ!」


雪菜は息を呑んだ。


(ガルドの仲間にも……病が?)


レオンはガルドを見た。


「ガルド。城壁付近の患者と同じ症状だ。

 雪菜の力が必要だ」


ガルドは雪菜の肩を掴む。


「頼む……雪菜……」


触れた瞬間――

雪菜の脳にガルドの思考が流れ込む。


『雪菜……仲間を助けてくれ……

 あの時みたいな後悔はもうしたくねえ……

 雪菜なら……救える……』


(ガルド……)


胸がぎゅっとなる。


レオンは雪菜を見つめた。


「雪菜。行くか?」


雪菜は迷わず頷いた。


「行く。ガルドの仲間を助けたい」


レオンの瞳が優しく揺れた。


---



ガルドの仲間の元へ向かう途中、

雪菜はふっと胸の奥が揺れるのを感じた。


(……聞こえる)


レオンの“強い感情”

アーヴィンの“独占欲”

ガルドの“守りたい気持ち”


触れていないのに、微弱に聞こえる。


(私の能力……また進化してる……)


雪菜は胸を押さえた。


(この世界で……私はどうなるんだろ)


レオンが雪菜の手を握る。


「雪菜。私が守る」


アーヴィンの声が背後から聞こえる。


「雪菜、精神層の乱れは私が解析する」


ガルドが雪菜の背を押す。


「雪菜、仲間を助けてくれ」


三人の優しさが雪菜を包む。


雪菜は小さく笑った。


「……うん。みんなと一緒なら、大丈夫」


その言葉に、三人の表情が柔らかくなる。


雪菜は歩き出した。


次の事件へ――

そして、次の本音へ。


---


第7話 終


---

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