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心が読める薬剤師、異世界で騎士と宮廷薬師と傭兵に奪い合われています  作者: 優涼


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第6話「城壁の影と、揺れる守りたい気持ち」



王都の朝は、いつもよりざわついていた。


「城壁付近で“精神を蝕む病”の患者が暴走しているらしい」


騎士団本部に戻ると、レオンが雪菜を呼び止めた。


「雪菜。君に来てほしい」


「私に……?」


レオンは真剣な表情で頷いた。


「城壁付近の患者は、魔力の乱れが強い。

 君の能力が必要だ」


雪菜は胸に手を当てた。


(レオンと二人で……事件を?)


少しだけ緊張する。

でも――レオンの瞳は優しかった。


「私が守る。だから来てほしい」


その言葉に、雪菜は小さく頷いた。


「……うん。行くよ」


---



城壁付近は、すでに騎士たちが封鎖していた。


「副長! 患者はあそこです!」


騎士が指さした先には、

黒い靄をまとった男が壁に頭を打ちつけていた。


「……っ」


雪菜は胸を押さえた。


(黒い靄……前より濃い……)


レオンが雪菜の肩に手を置く。


「雪菜、無理はするな。

 危険ならすぐに下がれ」


触れられた瞬間――

雪菜の脳にレオンの思考が流れ込む。


『雪菜を危険に晒したくない……

 でも、彼女の力が必要だ……

 守りたい……でも怖い……』


(レオン……)


雪菜は小さく息を吸った。


「大丈夫。レオンがいるから」


レオンの瞳が揺れた。


---



雪菜は患者に近づき、そっと手を伸ばした。


「……触れるよ」


レオンは剣を構え、雪菜の背を守るように立つ。


雪菜が患者の腕に触れた瞬間――

黒い靄が雪菜の脳に流れ込んだ。


『声が……声が……止まらない……

 誰か……助けて……

 境界が……開く……』


「っ……!」


雪菜は膝をついた。


レオンがすぐに抱きとめる。


「雪菜!」


雪菜は震える声で言った。


「この人……“境界の声”を聞いてる……

 私が聞いたのと同じ……」


レオンの表情が険しくなる。


「境界……やはり君は……」


雪菜は患者の腕を強く握った。


「大丈夫……あなたは一人じゃない……」


その瞬間――

黒い靄がふっと薄れた。


患者の呼吸が落ち着き、目の焦点が戻る。


「……あ……れ……?」


雪菜はゆっくりと手を離した。


「大丈夫。あなたは戻れる」


レオンは雪菜を抱き寄せた。


「雪菜……よくやった……」


雪菜は胸が熱くなる。


(レオン……こんなに近い……)


---



患者が騎士に保護されると、

レオンは雪菜の手を握ったまま離さなかった。


「雪菜……怖かっただろう」


「ううん……レオンがいたから」


レオンの思考が雪菜に流れ込む。


『雪菜が倒れたら……どうすれば……

 守りたい……でも、近づくほど怖い……

 この気持ちは……何だ……』


(レオン……)


雪菜はレオンの手を握り返した。


「レオン……ありがとう。

 私、レオンと一緒なら大丈夫だよ」


レオンは息を呑んだ。


「雪菜……」


その瞳は、優しくて、甘くて――

どこか切なかった。


---



騎士団本部へ戻る途中、

レオンは雪菜の歩幅に合わせてゆっくり歩いた。


「雪菜。君は……この世界でどうしたい?」


「どうしたい……?」


レオンは少しだけ言葉を濁した。


「君が……この世界に残るなら……

 私は……」


雪菜はレオンを見つめた。


(レオン……何を言おうとしてるの?)


その時――

雪菜の胸にふっと魔力が揺れた。


(……聞こえる)


レオンの“強い感情”だけが微弱に流れ込む。


『雪菜……好きだ……

 でも言えない……

 守りたい……ずっと……』


雪菜は胸を押さえた。


(……聞こえちゃった)


でも――

嫌じゃない。


むしろ、胸が甘くなる。


雪菜は小さく笑った。


「レオン……ありがとう。

 私、レオンと一緒にいたい」


レオンは言葉を失ったように雪菜を見つめた。


その瞳は、雪菜だけを見ていた。


---


第6話 終


---

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