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心が読める薬剤師、異世界で騎士と宮廷薬師と傭兵に奪い合われています  作者: 優涼


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第4話「揺れる心と、触れた指先」



精神を蝕む病の患者を救った翌日。

雪菜は騎士団本部の中庭で、ひとり深呼吸をしていた。


(昨日のこと……まだ胸がざわざわする)


男の思考が一気に流れ込んだあの瞬間。

雪菜は自分の能力が“人を救える”ことを知った。


でも――


(三人の本音も……聞こえちゃったんだよね)


レオンの恋心。

アーヴィンの独占欲。

ガルドの守りたい気持ち。


胸が熱くなる。


(どうしよう……みんな優しいし……)


雪菜は頬を押さえた。


その時――背後から声がした。


「雪菜、ここにいたのか」


振り返ると、レオンが立っていた。

朝の光を受けて、銀の鎧が淡く輝いている。


「昨日の疲れは残っていないか?」


「うん、大丈夫。ありがとう」


レオンは少しだけ表情を緩めた。


「なら、よかった」


その優しさに、雪菜の胸がまた揺れた。


---



「雪菜、ちょっといいか?」


アーヴィンが書物を抱えて近づいてきた。


「昨日の患者の記録をまとめた。

 君の能力についても、少し分かったことがある」


「分かったこと?」


アーヴィンは雪菜の手首にそっと触れた。


「精神の乱れに触れた時、君の魔力が反応していた。

 つまり――君の能力は“魔力と精神の境界”に作用している」


触れた瞬間、雪菜の脳にアーヴィンの思考が流れ込む。


『雪菜の能力は危険だ……だが、誰よりも美しい……

 この力を理解できるのは、私だけだ……』


(……美しい?)


雪菜は思わずアーヴィンを見つめた。


アーヴィンは気づいていないようで、淡々と説明を続ける。


「君の能力は、まだ進化する可能性がある。

 だから、私が研究する必要がある」


(研究って言ってるけど……本音は違うんだよね)


雪菜は胸がくすぐったくなる。


---



「おーい、雪菜!」


ガルドが大きく手を振りながら走ってきた。


「昨日の患者、助かったらしいぞ!

 お前のおかげだ!」


「ほんとに……? よかった……」


ガルドは雪菜の肩に手を置いた。


触れた瞬間――

雪菜の脳にガルドの思考が流れ込む。


『雪菜が笑うと……なんか胸があったけえ……

 守りてえ……ずっと……』


(ガルドも……)


雪菜は少しだけ目をそらした。


ガルドは気づかずに笑う。


「雪菜はすげえよ。誇っていい」


その言葉が、雪菜の胸に優しく響いた。


---



三人に囲まれたまま、雪菜は中庭のベンチに座った。


レオンは雪菜の隣に座り、

アーヴィンは雪菜の向かいに立ち、

ガルドは雪菜の背もたれに腕をかける。


(……なんか、すごい状況だな)


でも――嫌じゃない。


むしろ、胸が甘くなる。


レオンが静かに言った。


「雪菜。昨日のような危険な状況では、

 必ず私が君を守る」


アーヴィンが続ける。


「君の能力は貴重だ。

 君自身も……大切だ」


ガルドが笑う。


「雪菜は雪菜だ。俺たちが守る」


三人の優しさが、雪菜を包み込む。


(……どうしよう。みんな優しい)


胸がまた熱くなる。


---



その時だった。


雪菜の胸に、ふっと冷たい風が吹いた。


(……え?)


視界が少しだけ揺れる。


レオンが雪菜の肩に手を置く。


「雪菜、どうした?」


触れられた瞬間――

雪菜の脳にレオンの思考が流れ込む。


『雪菜……怖い……倒れないでくれ……

 君を失うのは……嫌だ……』


(レオン……)


雪菜は思わずレオンの手を握り返した。


「大丈夫……レオンがいるから」


レオンの耳が赤くなる。


アーヴィンが雪菜の額に触れる。


「精神の負荷が少し残っている。

 無理はするな」


触れた瞬間――

アーヴィンの思考が流れ込む。


『雪菜……触れられると……心臓がうるさい……

 どうしてこんな……』


(アーヴィン……)


雪菜は頬が熱くなる。


ガルドが雪菜の背に手を添える。


「雪菜、ゆっくり呼吸しろ」


触れた瞬間――

ガルドの思考が流れ込む。


『雪菜……泣きそうな顔すんな……

 守るから……絶対に……』


(ガルド……)


雪菜は胸がぎゅっとなる。


---



三人の手が雪菜に触れたまま、

雪菜はゆっくりと息を吸った。


(……みんなの本音が聞こえる)


優しい声。

甘い気持ち。

守りたいという想い。


胸がいっぱいになる。


(……私、どうしたらいいんだろ)


その時――

雪菜は初めて、自分から誰かに触れた。


レオンの手を、そっと握った。


レオンの瞳が揺れる。


「雪菜……?」


雪菜は小さく笑った。


「ありがとう。レオンがいてくれて……よかった」


レオンの思考が雪菜に流れ込む。


『……好きだ……雪菜……』


雪菜は息を呑んだ。


(……聞こえちゃった)


でも――

嫌じゃない。


むしろ、胸が甘くなる。


アーヴィンとガルドも雪菜を見つめていた。


三人の視線が、雪菜の心を揺らす。


(……この世界で、私はどうなるんだろ)


雪菜はそっと目を閉じた。


胸の奥で、何かが静かに芽生え始めていた。


---


第4話 終


---

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