第25話 小さな手と、戻ってきた日常の温度
第25話 小さな手と、戻ってきた日常の温度
1 研究所の静かな朝
ユナを救い出した翌朝。
研究所の一室には、柔らかな光が差し込んでいた。
雪菜はベッドの横に座り、眠るユナの髪をそっと撫でた。
「ユナ……本当に戻ってきたんだね」
ユナは小さく寝返りを打ち、雪菜の手を握った。
その温度は、影ではなく──確かな“人”の温度だった。
アーヴィンが静かに部屋へ入ってきた。
「雪菜。ユナの精神層は安定している。
昨日の再接続が完全に成功したようだ」
雪菜はほっと息を吐いた。
「よかった……本当に」
アーヴィンは雪菜の肩に手を置いた。
「雪菜。君も休め。精神層を使いすぎた」
雪菜は小さく頷いた。
2 ユナの目覚め
しばらくして、ユナがゆっくりと目を開けた。
「……雪菜……?」
雪菜はすぐにユナの手を握った。
「ユナ! 起きたの? 気分はどう?」
ユナは雪菜の胸に顔を寄せ、弱い声で言った。
「……こわくない……
雪菜がいるから……」
雪菜は涙がこぼれそうになった。
「もう怖いことはないよ。
ユナはここにいる。私のそばに」
ユナは雪菜の服をぎゅっと握った。
「……雪菜……だいすき……」
雪菜はユナを抱きしめた。
「私も……ユナが大好きだよ」
3 騎士団本部へ
ユナが歩けるようになると、雪菜はユナを連れて騎士団本部へ向かった。
レオンが廊下で待っていた。
「雪菜。ユナの様子は?」
雪菜はユナの肩を軽く押し出した。
「レオンさんに挨拶できる?」
ユナは少し緊張しながらも、小さく頭を下げた。
「……ありがとう……」
レオンは優しく微笑んだ。
「ユナ。よく戻ってきた。
もう怖い思いはさせない」
ユナは雪菜の手を握りながら、少しだけ笑った。
4 傭兵団の焚き火
夕方、雪菜とユナは傭兵団の拠点へ向かった。
ガルドが焚き火の前で腕を組んで待っていた。
「ユナ。元気になったか?」
ユナは雪菜の後ろに隠れながらも、小さく頷いた。
「……うん……」
ガルドは大きな手でユナの頭を軽く撫でた。
「よし。怖くねえよ。雪菜がいるからな」
ユナは雪菜の服を握りながら、少しだけガルドを見た。
「……ありがとう……」
ガルドは照れたように笑った。
「雪菜。ユナが戻ってきて、本当に……よかったな」
雪菜は微笑んだ。
「うん……ありがとう、ガルド」
5 研究所での生活
ユナは研究所の一室で生活することになった。
精神層の安定化のため、アーヴィンが毎日診察を行う。
アーヴィンはユナの手首に触れ、魔力の流れを確認した。
「ユナ。痛みはないか?」
ユナは首を振った。
「……ない……
雪菜がいるから……」
アーヴィンは雪菜を見た。
「雪菜。ユナは君の精神層に強く依存している。
しばらくは離れない方がいい」
雪菜はユナの手を握った。
「もちろん。ずっとそばにいるよ」
ユナは雪菜の肩に頭を預けた。
6 小さな日常
数日が過ぎると、ユナは少しずつ笑顔を取り戻していった。
雪菜が髪を結んであげると、ユナは鏡を見て嬉しそうに笑った。
「雪菜……かわいい?」
雪菜は笑った。
「もちろん。すごくかわいいよ」
ユナは雪菜の手を握りながら言った。
「雪菜と……いっしょがいい……
ずっと……いっしょがいい……」
雪菜はユナを抱きしめた。
「ずっと一緒だよ。
ユナが望むなら、どこへでも連れていく」
ユナは雪菜の胸に顔を埋めた。
「……雪菜……だいすき……」
7 戻ってきた日常の温度
夜。研究所の窓から見える街の灯りは、どこか優しく揺れていた。
雪菜はベッドに座り、ユナの寝顔を見つめた。
「ユナ……戻ってきてくれて本当にありがとう」
ユナは眠りながら雪菜の手を握った。
その温度は、雪菜の胸の奥を静かに温めた。
「これからは……一緒に生きようね」
雪菜はユナの髪を撫でながら、静かに目を閉じた。
境界の向こう側から奪われた妹は──
今、雪菜の腕の中に確かに存在していた。




