第24話 境界の門と、妹を抱きしめた瞬間
第24話 境界の門と、妹を抱きしめた瞬間
1 境界の道の再構築
研究所の中央にある魔力装置は、昨夜の共鳴の余韻をまだ残していた。
雪菜は装置の前に立ち、胸に手を当てた。ユナの声が、かすかに響いている。
「……雪菜……」
アーヴィンは装置の調整を続けながら言った。
「雪菜。昨日の共鳴で、境界に“道”ができた。
完全に開くには、もう一度共鳴を起こす必要がある」
レオンは雪菜の横に立ち、静かに言った。
「雪菜。危険だ。だが、ユナを助けるには必要なことだ」
ガルドは装置の後ろで腕を組み、周囲を警戒していた。
「昨日より強く共鳴させるんだろ? なら、俺たちが支える」
雪菜は深く息を吸った。
「ユナを助けたい。もう一度……ユナに会いたい」
アーヴィンは頷いた。
「雪菜。君の精神層はユナと同調している。
君がユナを強く思えば、境界は開く」
雪菜は装置の中心に立った。
2 共鳴の開始
装置が光り、黒い波形が雪菜の周囲に集まった。
雪菜は目を閉じ、ユナを思い続けた。
「ユナ……聞こえる?
私だよ。雪菜だよ」
装置の光が強まり、研究所全体が震えた。
アーヴィンが叫んだ。
「精神層が共鳴している! 境界が開き始めている!」
レオンは雪菜の横に立ち、剣を構えた。
「雪菜、離れるな!」
ガルドは装置の前に立ち、何が出ても守る構えを取った。
「ユナ! 来い!」
雪菜は声を張り上げた。
「ユナ!! 手を伸ばして!!」
3 境界の門が開く
その瞬間、装置の中心に光の裂け目が現れた。
昨日よりも大きく、安定している。
裂け目の奥から、小さな影が手を伸ばした。
「……雪菜……」
雪菜は震える声で答えた。
「ユナ……!」
ユナの影は、昨日よりもはっきりしていた。
輪郭が整い、髪が揺れ、顔の形が見える。
雪菜は手を伸ばした。
「ユナ……こっちに来て!」
ユナの影は雪菜の手に触れようとした。
しかし──影はまだ実体がない。
アーヴィンが叫んだ。
「雪菜! ユナの精神層を“引き戻す”必要がある!
君の精神層をユナに重ねろ!」
雪菜はユナの影に向かって叫んだ。
「ユナ!! 私を信じて!!」
4 精神層の重ね合わせ
雪菜はユナの影に手を伸ばし、精神層を開いた。
胸の奥が熱くなり、視界が白く染まる。
ユナの声が響いた。
「……雪菜……こわい……」
雪菜は涙をこらえながら言った。
「大丈夫。私がいるよ。
ユナを一人にしない。絶対に」
ユナの影が雪菜の精神層に触れた。
その瞬間、雪菜の脳にユナの記憶が流れ込んだ。
暗い部屋。
泣いているユナ。
「雪菜……どこ……?」
誰かに連れ去られるユナ。
古代の研究室。
精神層分離装置。
光に包まれて消えるユナ。
雪菜は叫んだ。
「ユナ!! 帰ろう!!
おうちに帰ろう!!」
ユナの影が強く光り──雪菜の手に触れた。
5 影が実体を取り戻す
アーヴィンが叫んだ。
「雪菜! ユナの精神層が“再接続”されている!
境界がユナの肉体を呼び戻している!」
レオンは雪菜を守るように立った。
「雪菜、離れるな!」
ガルドは裂け目の前で剣を構えた。
「ユナ! 来い!!」
光の裂け目が大きく開き──
ユナの影が、ゆっくりと実体を帯び始めた。
髪が揺れ、肌が現れ、服が形を成す。
雪菜は息を呑んだ。
「ユナ……!」
ユナは震える声で言った。
「……雪菜……」
雪菜はユナを抱きしめた。
「ユナ!! よかった……本当に……!」
ユナは雪菜の胸に顔を埋め、泣きながら言った。
「……雪菜……こわかった……
ずっと……ひとりだった……」
雪菜はユナを強く抱きしめた。
「もう大丈夫。
もう一人じゃないよ。
私がいる。ずっと一緒だよ」
6 境界の門が閉じる
ユナが完全に雪菜の腕の中に現れた瞬間、
光の裂け目はゆっくりと閉じた。
アーヴィンは深く息を吐いた。
「成功だ……ユナの精神層は完全に再接続された。
肉体も戻った。もう影ではない」
レオンは剣を収め、静かに言った。
「雪菜。よくやった」
ガルドは涙をこらえながら笑った。
「雪菜……本当に……よかったな」
雪菜はユナの髪を撫でながら言った。
「ユナ……帰ってきてくれてありがとう」
ユナは雪菜の服を握りしめ、震える声で言った。
「……雪菜……いっしょに……かえりたい……」
雪菜は微笑んだ。
「帰ろう。
おうちに帰ろう。
ユナと一緒に」
7 静かな余韻
研究所は静かに落ち着き、
雪菜はユナを抱いたまま椅子に座った。
アーヴィンは雪菜の肩に手を置いた。
「雪菜。ユナはもう安全だ。
ただし、精神層の安定化が必要だ。
しばらくはここで休ませよう」
レオンは雪菜の横に立ち、静かに言った。
「雪菜。君も休め。精神層を使いすぎた」
ガルドはユナの頭を軽く撫でた。
「ユナ。もう怖くねえよ。雪菜がいるからな」
雪菜はユナを抱きしめたまま、静かに目を閉じた。
「ユナ……本当に……よかった……」
ユナは雪菜の胸に顔を埋めたまま、小さく答えた。
「……雪菜……だいすき……」
雪菜は涙を流しながら微笑んだ。
「私も……ユナが大好きだよ」
境界の門は閉じた。
ユナは戻った。
雪菜の腕の中に──確かに存在していた。




