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心が読める薬剤師、異世界で騎士と宮廷薬師と傭兵に奪い合われています  作者: 優涼


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第23話 精神層再接続の鍵と、古代研究者の残した道

第23話 精神層再接続の鍵と、古代研究者の残した道


1 第二層からの帰還


第二層の奥でユナの影が消えてから、雪菜たちは騎士団本部へ戻った。

雪菜は歩きながら胸を押さえた。ユナの声がまだ耳の奥に残っている。


「……雪菜……」


その声は、消えた影の余韻のように、雪菜の精神層に触れていた。


レオンは雪菜の横に立ち、静かに言った。


「雪菜。無理をするな。ユナはまだ消えていない。必ず手がかりがある」


アーヴィンは魔力装置を抱えながら歩いていた。


「精神層の波長は途切れていない。ユナは別の場所へ移動しただけだ」


ガルドは雪菜の後ろで周囲を警戒しながら言った。


「雪菜。ユナを助ける方法、絶対に見つける。俺たちでな」


雪菜は小さく頷いた。


「……うん。ユナを助けたい。絶対に」


2 研究所での解析


研究所に戻ると、アーヴィンはすぐに装置を起動した。

黒い波形が画面に浮かび上がり、ユナの精神層の痕跡が揺れている。


「雪菜。ここを見てくれ」


雪菜は画面に近づいた。


「これ……ユナの波長?」


「そうだ。ユナの精神層は“分離状態”にある。

 肉体がないため、精神層だけがこの世界に漂っている」


レオンは腕を組んだ。


「精神層だけで存在するなど、普通はあり得ない。

 古代の研究者が何をした?」


アーヴィンは古代文字の資料を広げた。


「精神層分離装置は、境界を開くために“精神層の鍵”を必要とした。

 ユナはその鍵として利用された可能性が高い」


雪菜は息を呑んだ。


「ユナが……鍵……?」


ガルドは拳を握りしめた。


「ふざけた話だな。子供を鍵に使うなんてよ」


アーヴィンは静かに続けた。


「雪菜。ユナを救うには、精神層を“再接続”する必要がある。

 つまり、ユナの精神層を肉体に戻す方法を探す必要がある」


雪菜は震える声で言った。


「肉体は……もうないんだよね?」


アーヴィンは頷いた。


「この世界にはない。だが、境界の向こう側には残っている可能性がある」


雪菜は目を見開いた。


「ユナの体は……元の世界に?」


「その可能性が高い」


レオンは雪菜を見た。


「雪菜。ユナを救うには、境界を再び開く必要がある」


3 境界を開く方法


研究所の奥にある古代資料室で、アーヴィンは古い石板を並べた。


「境界を開く方法は三つある」


雪菜は息を呑んだ。


「三つ……?」


アーヴィンは一枚の石板を指差した。


「一つ目。精神層の鍵を使う方法。

 これは古代研究者がユナを使って行った方法だ。

 だが、ユナを再び鍵として使うことは絶対にできない」


雪菜は強く首を振った。


「ユナを傷つける方法は絶対に嫌」


アーヴィンは頷いた。


「二つ目。境界の“門”を直接開く方法。

 だが、門は封鎖されており、開くには莫大な魔力が必要だ」


レオンは静かに言った。


「騎士団の魔力では足りない。国全体の魔力を集めても難しいだろう」


ガルドは腕を組んだ。


「じゃあ三つ目は?」


アーヴィンは最後の石板を指差した。


「三つ目。精神層の“共鳴”を使う方法だ」


雪菜はアーヴィンを見た。


「共鳴……?」


アーヴィンは雪菜の手を取った。


「雪菜。君の精神層はユナと“同調”している。

 君がユナを強く思えば、精神層が共鳴し、境界に“道”ができる可能性がある」


雪菜は息を呑んだ。


「私が……ユナを思うことで?」


「そうだ。ユナは君を呼んでいる。

 その呼び声に応えることで、境界に道が開く可能性がある」


レオンは雪菜の横に立ち、静かに言った。


「雪菜。危険だ。精神層が引きずられる可能性がある」


ガルドは雪菜の肩に手を置いた。


「でも、ユナを助けるにはそれしかねえんだろ?」


雪菜はゆっくりと頷いた。


「……やる。ユナを助けたい。

 ユナが帰りたいって言ったから……絶対に」


4 精神層共鳴の準備


研究所の中央にある魔力装置が起動され、雪菜は装置の中心に立った。


アーヴィンは装置の調整をしながら言った。


「雪菜。ユナの波長を呼び出す。

 君はただ、ユナを思い続けてくれ」


レオンは雪菜の横に立ち、剣を構えた。


「雪菜。何が起きても守る」


ガルドは雪菜の後ろに立ち、周囲を警戒する。


「雪菜。怖くても、俺たちがいる」


雪菜は深く息を吸った。


「ユナ……聞こえる?

 私だよ。雪菜だよ」


装置が光り、黒い波形が雪菜の周囲に集まった。


「……雪菜……」


ユナの声が響いた。


雪菜は涙をこらえながら言った。


「ユナ……帰ろう。一緒に帰ろう。

 おうちに……帰ろう」


5 境界の道が開く


装置が強く光り、研究所全体が震えた。


アーヴィンが叫んだ。


「精神層が共鳴している! 境界に道が開き始めている!」


レオンは雪菜を守るように立った。


「雪菜、離れるな!」


ガルドは剣を構えた。


「何が出ても斬る!」


雪菜はユナの声に向かって叫んだ。


「ユナ!! 手を伸ばして!!」


その瞬間、雪菜の目の前に光の裂け目が現れた。


その奥から、小さな影が手を伸ばした。


「……雪菜……」


雪菜は震える声で答えた。


「ユナ……!」


6 しかし──


光の裂け目が大きく揺れた。


アーヴィンが叫んだ。


「雪菜! だめだ! 道が不安定だ!

 このままでは雪菜の精神層が引きずられる!」


レオンが雪菜を抱き寄せる。


「雪菜、戻れ!」


ガルドが光の裂け目に向かって叫んだ。


「ユナ! 待ってろ! 必ず助ける!」


雪菜は必死に手を伸ばした。


「ユナ!!」


ユナの影は雪菜の手に触れようとしたが──


光が弾け、裂け目は閉じた。


7 残された痕跡


研究所は静まり返った。


雪菜はその場に崩れ落ちた。


「ユナ……ユナ……」


アーヴィンが雪菜の肩を支えた。


「雪菜。道は開いた。

 ユナは君の声に応えた。

 次は……完全に開く方法を探す」


レオンは雪菜の横にしゃがみ、静かに言った。


「雪菜。ユナはまだ呼んでいる。

 必ず助けられる」


ガルドは拳を握りしめた。


「雪菜。ユナを助けるまで、絶対に諦めねえ」


雪菜は涙を拭き、ゆっくりと立ち上がった。


「……ユナを助ける。

 絶対に。何度でも」


その時、装置の波形が微かに揺れた。


「……雪菜……」


ユナの声が、まだ消えていなかった。


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