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心が読める薬剤師、異世界で騎士と宮廷薬師と傭兵に奪い合われています  作者: 優涼


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第2話「優しさの中で目覚める本音」



――誰かの声がする。


「……雪菜、聞こえるか?」


低くて落ち着いた声。

胸の奥に響くような、安心する声。


(……レオン?)


まぶたを開けると、銀の鎧が視界に入った。

騎士団副長レオンが、椅子に座ったまま雪菜の手を握っていた。


「気がついたか。よかった……」


その表情は、普段の冷静さとは違い、どこか必死だった。


「レオン……?」


「急に倒れたんだ。意識が戻らなくて……心配した」


(心配……してくれてたんだ)


触れられている手から、レオンの思考が流れ込む。


『無事でよかった……。あのまま目を覚まさなかったら……どうすれば……』


(こんなに……心配してくれてたんだ)


胸がじんわりと熱くなる。


「ごめんなさい……心配かけて」


「謝る必要はない。君は悪くない」


レオンは雪菜の手をそっと包み込んだ。

その優しさに、雪菜は少しだけ涙がにじんだ。


---



「おい、レオン。独り占めはよくねえだろ」


扉が勢いよく開き、ガルドが入ってきた。


「雪菜! 大丈夫か?」


ガルドは大股で近づき、雪菜の肩に手を置いた。


触れた瞬間――

雪菜の脳に、彼の思考が流れ込む。


『よかった……本当に……。あのまま死んじまったらどうしようかと……』


(ガルドも……こんなに心配してくれてたんだ)


粗野な見た目とは裏腹に、思考はとても優しい。


「ガルド……ありがとう」


「当たり前だろ。仲間が倒れたら心配するに決まってる」


「仲間……?」


「そうだ。お前はもう俺たちの仲間だ」


ガルドは照れくさそうに笑った。


その笑顔が、雪菜の胸をまた温かくした。


---



「やれやれ、騒がしいな。雪菜が起きたと聞いて来たんだが」


アーヴィンが静かに入ってきた。

手には分厚い書物を抱えている。


「雪菜、気分はどうだ?」


「アーヴィン……ありがとう。大丈夫です」


アーヴィンは雪菜の額に手を当てた。


「熱はないな。精神の負荷が大きかっただけだろう」


触れた瞬間――

雪菜の脳に、彼の思考が流れ込む。


『よかった……。この者を失うわけにはいかない。

 彼女の能力は、この世界の鍵になる……それに……』


(それに……?)


アーヴィンの思考が一瞬だけ揺れた。

その先は読み取れなかった。


「雪菜、君の能力について少し話したい」


「能力……」


「心が読めるという現象は、この世界の“精神を蝕む病”と深く関係している」


レオンが補足する。


「この病は、思考が漏れ出し、周囲に悪影響を与える。

 君の能力は、その“漏れ出す思考”を受け取っている可能性がある」


「じゃあ……私がこの世界に来たのは、その病と関係してる?」


「その可能性は高い」とアーヴィン。


ガルドが腕を組んだ。


「難しい話はいい。雪菜が無事ならそれでいい」


レオンが少しだけ眉をひそめた。


「ガルド、雪菜の能力は重要だ。軽く扱うな」


「別に軽く扱ってねえよ。雪菜が大事なのは同じだろ」


「……それは、そうだが」


二人の視線がぶつかる。


(あれ……なんか雰囲気が……)


雪菜は慌てて話題を変えた。


「みんな……ありがとう。本当に心配してくれて……」


三人は同時に雪菜を見た。


その視線は、優しくて、真剣で――

どこか甘い。


(……なんか、距離が近い)


胸が少しだけ高鳴った。


---



「雪菜、少し歩けるか?」


レオンが手を差し出す。


「うん……大丈夫」


雪菜が立ち上がると、レオンが支えるように手を添えた。


(優しい……)


ガルドも横に立ち、雪菜の背中を軽く押さえる。


「転ぶなよ」


(ガルドも……)


アーヴィンは雪菜の肩にそっと触れた。


「無理はするな。精神の負荷はまだ残っている」


(アーヴィンまで……)


三人に囲まれるようにして歩く雪菜。


(なんか……すごい状況だな……)


胸がくすぐったいような、甘いような、落ち着かないような。


でも――嫌じゃない。


むしろ、少しだけ嬉しい。


---



騎士団本部の廊下を歩いていると、レオンが口を開いた。


「雪菜。君はこの世界でどうしたい?」


「どうしたい……?」


「元の世界に戻りたいか? それとも……」


レオンは少しだけ言葉を濁した。


ガルドが続ける。


「戻りたいなら、俺たちが手伝う。

 でも……この世界に残るなら、それもいい」


アーヴィンが静かに言う。


「君の能力は、この世界に必要だ。

 だが、君の意思が最優先だ」


三人の視線が雪菜に向けられる。


(こんなふうに……私の意思を尊重してくれるんだ)


胸がじんわりと温かくなる。


「……ありがとう。みんな」


雪菜は少しだけ笑った。


「まだ分からないけど……この世界のこと、もっと知りたい」


レオンの表情が柔らかくなる。


「そうか。なら、私たちが案内しよう」


ガルドが笑う。


「任せとけ。雪菜が行きたいとこ全部連れてってやる」


アーヴィンが頷く。


「この世界の知識は私が教えよう」


三人の優しさが、雪菜を包み込む。


(……なんか、すごく甘い)


胸がまた高鳴った。


---



その時だった。


廊下の奥から、騎士が駆け込んできた。


「レオン副長! 大変です!」


「どうした?」


「精神を蝕む病の患者が……暴走を……!」


レオンの表情が一瞬で引き締まる。


「場所は?」


「城下町の広場です!」


ガルドが剣に手をかける。


「行くぞ!」


アーヴィンが雪菜を見る。


「雪菜、来るか? 無理はするな」


雪菜は迷った。


でも――

胸の奥で、何かが強くうずいた。


(私の能力……役に立つかもしれない)


「行く。私も……できることをしたい」


レオンが雪菜を見つめた。


その瞳は、誇らしげで、優しくて――

どこか甘い。


「分かった。私が守る」


ガルドが笑う。


「俺もだ」


アーヴィンが頷く。


「私もだ」


三人の優しさに囲まれながら、雪菜は歩き出した。


異世界で、心が読める薬剤師として。

そして――三人に優しく奪い合われながら。


---


第2話 終


----

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