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心が読める薬剤師、異世界で騎士と宮廷薬師と傭兵に奪い合われています  作者: 優涼


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第16話 地下遺跡の門と、境界に触れた影


1 地下遺跡の奥へ


城下町の地下遺跡は、昼でも薄暗い。湿った空気が肌にまとわりつき、足音が石壁に反響する。


雪菜、レオン、アーヴィン、ガルドの四人は、黒い靄が渦を巻いていた場所のさらに奥へ進んでいた。


「この先に……何かある」


雪菜は胸の奥のざわつきを抑えながら言った。


アーヴィンが魔力装置を携え、周囲の魔力を解析する。


「精神層の残滓が濃い。この先は境界の影響が強いはずだ」


レオンは剣を構えた。


「雪菜、後ろに下がれ。危険だ」


ガルドは雪菜の横に立ち、周囲を警戒する。


「何が出ても守る。安心しろ」


雪菜は頷いた。


2 古い石扉


遺跡の最深部に、巨大な石扉があった。扉には複雑な紋様が刻まれ、中央には黒い亀裂が走っている。


「これが……境界の門?」


雪菜が近づくと、扉の亀裂が微かに脈打った。


アーヴィンが紋様を解析する。


「精神層の波長と一致する。この扉は精神層を通じて開く仕組みだ」


レオンは眉をひそめた。


「精神層で開く扉など、聞いたことがない」


ガルドは扉を拳で叩いた。


「壊せねえのか?」


アーヴィンは首を振る。


「物理的に壊すのは不可能だ。精神層の波長を合わせる必要がある」


雪菜は扉に手を伸ばした。


「私が……開けられる?」


アーヴィンは雪菜の肩を押さえた。


「無理はするな。深層の声が君を呼んでいる。扉を開けば、何が起こるか分からない」


レオンも雪菜の前に立った。


「雪菜。危険だ。まずは周囲を調べるべきだ」


ガルドは雪菜の横に立ち、扉を睨む。


「でも、進まなきゃ何も分からねえ」


雪菜は扉を見つめた。


3 精神層の共鳴


雪菜が扉に手を添えた瞬間、扉の紋様が淡く光り始めた。


「雪菜、離れろ!」


レオンが雪菜の腕を掴むが、雪菜の手は扉に吸い付くように離れなかった。


「だめ……離れない……!」


アーヴィンが魔力装置を操作する。


「精神層が扉と共鳴している! 雪菜の精神層が鍵になっている!」


ガルドが雪菜の肩を支える。


「雪菜、無理すんな!」


雪菜は必死に息を整えた。


深層の声がまた聞こえる。


「……雪菜……開けて……」


雪菜は目を見開いた。


「誰……?」


レオンが雪菜の肩を掴む。


「雪菜! 戻れ!」


アーヴィンが叫ぶ。


「精神層が引きずられている! このままでは危険だ!」


ガルドが雪菜を抱き寄せる。


「雪菜!」


雪菜は必死に扉から手を離そうとした。


だが扉は雪菜の手を掴んだ。


4 扉の亀裂が開く


石扉の亀裂が大きく開き、黒い靄が吹き出した。


レオンが剣を構え、靄を切り払う。しかし靄は形を変え、レオンの腕に絡みついた。


「レオン!」


アーヴィンが魔力で靄を焼き払う。


「この靄……精神層の影だ!」


ガルドが雪菜を引き寄せる。


「雪菜、離れろ!」


雪菜は必死に扉から手を離そうとするが、扉は雪菜の手を離さない。


「だめ……離れない……!」


扉の奥から声が響いた。


「……雪菜……来て……」


雪菜は震えた。


「誰なの……?」


声は続く。


「……助けて……」


雪菜は息を呑んだ。


5 扉の向こうの影


扉の亀裂がさらに開き、黒い靄の奥に影が見えた。


人の形。しかし輪郭がぼやけ、精神層の残滓のように揺れている。


「誰……?」


影は雪菜に手を伸ばした。


「……雪菜……」


レオンが雪菜を抱き寄せる。


「雪菜! 近づくな!」


アーヴィンが魔力を放つ。


「影は精神層の残滓だ! 実体がない!」


ガルドが影に向かって剣を振る。


「雪菜に触れさせねえ!」


しかし剣は影をすり抜けた。


影は雪菜に近づく。


「……助けて……」


雪菜は震えた。


「あなた……誰なの……?」


影は答えない。ただ雪菜に手を伸ばす。


その瞬間、雪菜の脳に映像が流れ込んだ。


暗い部屋。

泣いている子供。

「助けて……」という声。

誰かが手を伸ばしている。

その手は、雪菜の手と同じ形だった。


雪菜は息を呑んだ。


「これ……私……?」


アーヴィンが叫ぶ。


「雪菜! 離れろ! 精神層が引きずられている!」


レオンが雪菜を抱き寄せる。


「雪菜! 戻れ!」


ガルドが雪菜の手を掴む。


「雪菜!」


雪菜の手が扉から離れた瞬間、扉は轟音とともに閉じた。


黒い靄が消え、影も消えた。


雪菜はその場に崩れ落ちた。


6 静寂


遺跡の奥は静まり返った。


レオンが雪菜の肩を支える。


「雪菜……大丈夫か?」


雪菜は息を整えた。


「うん……大丈夫……」


アーヴィンが扉を解析する。


「扉は完全に閉じた。しかし影は実在していた。精神層の残滓ではない」


ガルドが雪菜の横にしゃがむ。


「雪菜……あれは誰だ?」


雪菜は扉を見つめた。


「分からない……でも……私を呼んでた」


レオンは雪菜を見つめた。


「雪菜。扉の向こうに誰かがいる」


アーヴィンは静かに言った。


「その誰かは……君を知っている」


ガルドは拳を握りしめた。


「なら、助けに行くしかねえだろ」


雪菜は扉に手を添えた。


「……行くよ。扉の向こうにいる誰かを……助けたい」


三人は雪菜を見つめた。


その瞳は、雪菜だけを見ていた。


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