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心が読める薬剤師、異世界で騎士と宮廷薬師と傭兵に奪い合われています  作者: 優涼


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第10話「精神の深層と、触れられた孤独の記憶」


1 


ガルドに呼ばれて駆けつけた医療室。

ベッドには若い傭兵が横たわっていた。


「雪菜……頼む」


ガルドの声は震えていた。


雪菜は傭兵の手に触れた。


触れた瞬間――

黒い靄とともに思考が流れ込む。


『怖え……声が……

 “開けろ”……

 ガルド……助けて……』


「……っ!」


雪菜は胸を押さえた。


ガルドが支える。


「雪菜!」


触れたガルドの思考が流れ込む。


『雪菜……頼む……

 この子だけは……失いたくねえ……』


(ガルド……)


雪菜は頷いた。


「……やってみる」


---


2 


雪菜は傭兵の精神層の裂け目に意識を集中した。


黒い靄が雪菜の脳に流れ込む。


『開けろ……開けろ……』


「……やめて!」


裂け目が閉じ、靄が消える。


傭兵の呼吸が落ち着く。


ガルドは雪菜の肩を掴んだ。


「雪菜……! 本当に……ありがとう」


触れた瞬間――

ガルドの思考が短く、熱く流れ込む。


『雪菜……守りてえ……

 この子も……雪菜も……

 離れんな……』


(ガルド……)


胸が熱くなる。


---


3 


「雪菜!」


アーヴィンが駆け込んできた。


「精神層の乱れを感じた。

 君がここにいると思った」


雪菜は驚いた。


アーヴィンは雪菜の手を取る。


触れた瞬間――

アーヴィンの思考が流れ込む。


『雪菜の魔力……揺れている。

 ガルドと二人きり……胸がざわつく。

 これは嫉妬か? いや……もっと複雑だ』


(アーヴィン……)


ガルドが眉をひそめる。


「雪菜は無事だ。お前が来る必要は――」


「ある。雪菜の精神層は不安定だ」


アーヴィンは雪菜の肩に手を置いた。


触れた瞬間――

アーヴィンの思考が流れる。


『雪菜の肩……温かい。

 この温度を失うのは……耐えられない』


(アーヴィン……)


雪菜は頬が熱くなる。


---


4 


研究所に戻ると、

アーヴィンは雪菜を椅子に座らせた。


「雪菜。精神層の修復は負荷が大きい。

 休む必要がある」


雪菜は頷いた。


アーヴィンは雪菜の手を取る。


触れた瞬間――

アーヴィンの思考が流れ込む。


『雪菜は……優しすぎる。

 誰かを救うたびに、自分が削れていく。

 守りたい……この心を』


(アーヴィン……)


雪菜は胸が甘くなる。


---


5 


アーヴィンは雪菜を魔力装置の前に立たせた。


「雪菜。君の精神層には“深層”がある。

 そこに境界の声の根がある」


雪菜は目を閉じた。


暗い迷宮。

奥に黒い影。


『……雪菜……』


「……え?」


『来て……』


雪菜は胸を押さえた。


アーヴィンが抱き寄せる。


「戻れ! 深層は危険だ!」


触れた瞬間――

アーヴィンの思考が流れ込む。


『雪菜が深層に飲まれたら……

 もう触れられない。

 それだけは……嫌だ』


(アーヴィン……)


---


6 


雪菜はアーヴィンの胸に手を添えた。


「アーヴィン……怖かったんだね」


アーヴィンは目をそらした。


「昔、精神層の研究で仲間を失った。

 深層に触れすぎて……戻れなくなった」


雪菜は息を呑んだ。


アーヴィンは雪菜の手を握る。


触れた瞬間――

アーヴィンの思考が流れ込む。


『雪菜……

 君だけは……失いたくない。

 この手を……離したくない』


(アーヴィン……)


雪菜は胸が甘くなる。


---


7 


研究所を出ると、

ガルドが待っていた。


「雪菜……大丈夫か?」


雪菜は頷いた。


ガルドは雪菜の肩に手を置く。


触れた瞬間――

ガルドの思考が流れ込む。


『雪菜……疲れた顔すんな……

 守りてえ……

 ずっと……』


(ガルド……)


アーヴィンが冷静に言う。


「雪菜は休む必要がある」


ガルドは睨む。


「雪菜は雪菜だ。

 お前だけのもんじゃねえ」


アーヴィンは静かに返す。


「雪菜は誰のものでもない。

 だが、守るのは私だ」


雪菜は二人の間に立った。


「ありがとう。

 でも私は大丈夫だよ」


---


8 


研究所を出ると、

レオンが待っていた。


「雪菜。無事か?」


雪菜は頷いた。


レオンは雪菜の手を取った。


触れた瞬間――

レオンの思考が流れ込む。


『雪菜が無事で……よかった。

 胸が……痛む。

 これは……何だ……』


(レオン……)


雪菜は胸が甘くなる。



---


第10話(改訂版)終


---

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