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帰還率99.8%のダンジョン救助隊  作者: ゆる弥


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7.全国救助大会開催

 講習会が終わったら、今度は大事なイベントがあったことを俺はすっかり忘れていた。

 

「異黒隊長、明日からの全国合同救助大会はどの部隊連れて行くんですかぁ?」


 ピンク髪を靡かせながら椅子から顔を逆さにして聞いてくるというよくわからない体勢の桃瀬から質問されて、俺は頭が混乱していた。


 一体何のことを言っているのかわからなかったからだ。

 そんなイベントあったっけ?


「あれー? 一か月前にいいましたよねぇ。でも、どうせ忘れるから前日に教えてくれって言われてたんで、その通りにしましたけどぉ?」


 うん。ありがとう。桃瀬。

 言った通りにしてくれて。

 うん。全然覚えてなかったわ。


「オレ連れてってくださいよぉ。絶対、異黒さんの株をあげますから!」


「お前はダメ。一昨年参加させてどうなったか覚えてないんか?」


「絶対株が上がりましたよ! ねっ? 全員ぶちのめしたんすから!」


 これが、文字通り全員ぶちのめしてしまったのだから、何も言えない。

 というか、あの時はサバイバルマッチみたいなのをやったのが悪かったのだ。

 そして、俺は黄虎を制御できなかった。


 あれには、一番と二番隊が出てたっけ。

 他の面々は頬を引きつらせていたのを覚えているよ。


「ぜーったいダメ! 今回は、四と五を連れて行く!」


 そう宣言すると、黄虎の後ろで聞いていた四番隊の若葉と五番隊の蝶子ちょこがビクッとして、背筋を伸ばした。


 そこに歩み寄る黄虎。

 睨みつけると、口を開いた。


「いいかぁ? 異黒総隊長の格を落とすことは、絶対にするな? いいな? したら、オレが許さねぇ」


 横から平手を振る。


 ──ドゴォォォンッ


「まぁ、そう気負う必要はねぇ。自分たちの実力を高めるつもりでいけば問題ねぇさ」


「はい!」

「……りょ」


 コイツ等の実力は、まだ発展途上だ。

 これがいい刺激になるだろう。


◇◆◇



 大々的に開催されるこの大会。

 会場は、国立競技場。

 ここに、全国の救助隊が集まって、各々の実力を把握したり参考にしたりする。


 毎回、ココで開かれるので、面倒なことに異黒が挨拶することになっているのだ。

 一応本部だから。


「本部、総隊長の異黒いこくからひと言!」

 

「あー。今日は、お日柄もよくー。あっ、違うか。これ結婚式だ。……えぇーっと? 皆、怪我ぁしないよーにぃ。後は、自分の実力を再確認して、今後に生かしましょー」


 この挨拶には、みんな苦笑いだった。

 四番、五番隊だけ呆れている。

 これが、いつもの異黒だから。


 だが、それを温かい目でみている面々もいるようで。


「あのお方は、お変わりないようだ」


「ったく。あの人は。毎回毎回。締まらねぇなぁ」


「はははっ。イッコクちゃんらしいわねぇ」


 四番、五番は初めての参戦の為、ちょっと緊張していたのだ。だが、この挨拶のおかげでなんだか力が抜けたようだ。


「はぁ。あの人は、まったく……」


「……まぁ。いつものこと」


 若葉は真面目すぎるし、蝶子はマイペースだ。


 マイクの前には、国のお偉いさんが立つ。

 長々と話していたが、覚えていない。

 俺は欠伸をして、ボーッとしていた。


「あー。では、皆、存分に実力を発揮して、各救助隊の実力を見せて欲しい。以上」


 パチパチと拍手を送る上層部の奴ら。

 俺らは一つも拍手をしない。

 あいつらはただ見ているだけの奴らだからだ。


 何を言っても上辺だけ。

 くそくらえだ。


「では、まず。要救助者の運搬競技を行う。各支部毎に二部隊参加してください」


 おぉー。なんかちゃんと競技にしてんじゃん。

 考えてるねぇ。

 若葉と蝶子は大丈夫だろう。


「なぁなぁ、異黒のとこわよ、今回もバカなことするん?」


 クスクス笑いながら聞いてきたのは関西支部のいけすかねぇやつだ。サングラスかけてギラギラしたネックレスして。そんなに自己主張が強いのは逆に感心する。


「あぁ? いやぁ、今回はまともだと思うぞ?」


「そうなん? おもんなぁ。いつも笑かしてくれんのにぃ」


 そんな期待に応える訳ねぇだろ。どつくぞクソヤロー。

 思わず手に力が入り、プルプル震える。


「二人は仲良さそうねー」


「うるせぇ」「どこがや!」


 そのつっこみもどこ吹く風。

 沖縄の奴は話を続けた。


「本部さんは真面目そうさー」


「そうだな。結構ちゃんとしてる奴らだな」


「ウチはマイペースなんよー」


 そうは言いつつも、前回の全国救助大会は準優勝だった。もちろん、優勝は本部だ。前回は、二番隊と三番隊が来てる。


 一応、毎年本部が優勝している。だけど、毎回優勝してるってこともない。だから、そこまでプレッシャーを感じて欲しくないのだ。


 若葉と蝶子はそうも言っていられないようで、周りをキョロキョロみている。


 競技の準備をしている。

 ちゃんと備え付けのモニターに競技中は配信もされる。

 さぁ、始まるみたいだ。


 最初は関西支部みたいだな。


「今年は、ワイらんとこは強いでぇ?」


 右隣でそう話す男を無視する。

 たしかに、関西の奴らは引き締まった身体をしていて、強そうだ。

 だが、要救助者の運搬をどうするのかが見物だな。


「去年は慎重に行き過ぎてタイム落としたわけさー。今回はどうか楽しみさー」


 沖縄の奴はマイペースだからなぁ。

 別に、どこが一位とか関係ねぇと思うけどな。

 いかに早く救助して治療するか。


 それが大事だと思うんだけどなぁ。

 その教えを受けている本部の連中がどうするのかは、見物である。

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