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帰還率99.8%のダンジョン救助隊  作者: ゆる弥


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6.生きて帰るまでが攻略

 S級ダンジョンから帰ってきた俺は、デスクに突っ伏していた。


「あぁぁぁ。くそぉ。完全に非番の日が潰れたー」


 さっきのも俺が出撃したから、俺が報告書を書かなければいけない。読むのは俺の上、要するに国の官僚が読む。下手なこと書くと怒られるから面倒なんだ。


 S級ダンジョンの異常に対する考察を調べた資料と照らし合わせて書いていく。ちゃんと資料を残していてくれた若葉には感謝している。


「ははははっ。災難でしたねぇ。総隊長?」


「桃瀬ぇ。てめぇ他人事だと思って笑ってんなよぉ」


「他人事ですもーん。総隊長、明日は、探索者ギルドで新しく開発された結界装置の講習会入ってますからねぇ?」


 うわぁぁ。めんどくせぇの入ってんじゃん。マジかよぉぉ。

 アイツら話聞かねぇから嫌なんだよなぁ。

 よえぇ癖に強がるしさぁ。


「はぁぁぁ。桃瀬代わりに行ってきて?」


「いやでぇーす。総隊長のし・ご・と!」


「くそがぁ!」


 こうやって大きい声を出しても、何にも変わんねぇんだけどなぁ。


「異黒さんの講習会なら、オレ、見に行こ―」


 一番めんどくせぇ金髪ポニテが行くとか言ってるぞー。

 誰かなんか言ってくれよー。

 トラブルの予感しかしねーってぇ。


「あはは。いいんじゃなーい?」


 ピンク色が適当なことを口にすると、金髪は行く気になっている。

 なんで一番めんどくせぇやつが来るんだよぉ。

 はぁぁぁ。胃が痛くなりそう。



◇◆◇



 次の日、仕方ねぇから探索者ギルドに来ていた。

 後援者が総隊長の異黒となっていたので、どうにもならなかったようだ。


「えぇー。この結界の装置は、魔力で運用されていますー」


 ──くすくすっ


 ──救助隊だってよぉ


 笑い声とか全部聞こえてるけど、仕事だから仕方ない。

 俺は怒らないぞぉ。

 そんなことを思いながら、話を進める。

 

 六角形の装置のボタンを押して投げる。

 六角形のいくつも展開された防御結界が展開された。

 それを刀で切り付ける。


「えー。こうやって切りつけても、ビクともしないですねぇ」


 ──おっさんが弱すぎんじゃねぇの?


 ──そーかもー


 あぁ。全然話を聞こうとしねぇなぁ。

 このクソヤローどもをどうしてやろうかなぁ。

 いや、ダメだ。冷静に、冷静に。


「あー。こういう装置のおかげで、生存率があがるわけでぇ」


 ──おっさんに救助は無理だろ?


 ──オレの方がつええってぇ


 やべぇ。全然話聞かねぇじゃん。

 そう思っていたら、探索者の後ろの方で殺気をばらまき始めた奴がいた。


 やばい。アイツ切れるじゃん。

 そう思ったら、もう遅かった。


「おい! クソ探索者どもぉ! この会を何のためにやってると思ってんだ? あぁぁっ⁉」


「あの装置を売る為じゃねぇのぉ?」


「はい。頭足りない! あれは配られるんだよ! バカが! ちゃんと話聞け! 救難装置と一緒に配られんだっつんてんだろうが!」


 黄虎がブチ切れてしまった。

 誰だかを知らない探索者達は、いきり立ち始めた。


「あぁ? お前誰なんだよ? っつうかよぉ、探索者ナメてんだろ?」


 立ち上がった筋肉多めの探索者。

 ただ、見た所、いいとこC級。

 雰囲気がもう少しといったところ。


「ナメてんのはそっちだろうがぁ! うちの総隊長が優しく説明してやってんだぞ? なんでこんなことしてるかわかってんのかって聞いたんだ! バカが!」


「さっきからなんだ⁉ おめぇは!」


「俺は救助隊の切込み隊長! 一番隊の黄虎だ! 救助される側の奴らが偉そうに口開いてんなよゴラァ!」


 しまいには、探索者に頭突きを食らわせながら掴みかかって行ってしまった。

 これは、止めないとダメだな。

 仕方ない。


 冷静に歩を進めると、黄虎を見えない速さの拳で殴り飛ばした。


 凄まじい衝撃波を放ったその一撃は、探索者達を黙らせた。


「あー。ウチの隊長たちは血の気が多くてな。すまんな」


 引きつっている顔の探索者達をなんとかなだめようと笑いながら頭を下げるが、無駄だった。


「ただな、黄虎は間違ってないことも言っていたんだ。申し訳ないが、君達は救助される側なんだ。そのことを念頭に置いていて欲しい」


 探索者達は、納得いかないように首を傾げた。

 自分たちが救援は出さないと思っているのだろう。


「0.2%。これが何を意味するかわかるか?」


 一人の茶髪の若い男が手を上げた。

 手で答えを促す。


「死亡率……ですか?」


「これは、救助隊が結成される前の……生存率だ」


 これには、ざわつきが起きた。

 口々に嘘だろと言っている。

 だが、これを笑っている者はいなかった。


「ただ、これは、ダンジョン改変という大規模災害の時の生存率だ」


 なんだ。じゃあ、昔の話じゃんという声が聞こえた。

 ここからは、厳しいことを言う。


「今、この大災害と同じような状況になりつつある」


 またざわめきが広がる。

 これは、俺たちの考察だから確かなものではない。

 でも、備えはあってもいいだろう。


「今の帰還率は、99.8%。救助なしだと、帰還率54%が良いところだろう」


「えっ? そんなに下がるんですか?」


 探索者から声があがる。

 それはそうだろう。

 みんな普通に帰って来ていると思われているからな。


「救助の件数とダンジョンに潜ったパーティの数を計算するとこうなるんだ。それはすなわち、今の帰還率は救助隊ができたから実現できている。これをわかっていて欲しい」


 そこまで説明すると、さすがに真剣な顔になった。

 ようやく話を聞く気になったか。

 黄虎がいい仕事をしてくれたな。


「救助を呼ぶのを恥だと思うのはかまわない。だが、そう思うなら、生きて帰って来れるだけの実力を付けろ」


 真剣なその探索者の目からは、闘志を見て取れた。

 やってやるぞという意気込みを感じる。

 やっぱり若い奴らってのは熱さがあっていいな。


「ダンジョンは、生きて帰って来るまでが攻略だ。いいか? これは、俺が先輩から受け継いだ言葉だ。心にとどめておいてくれ」


 手を上げたのは、腰まである赤髪の女性。


「攻略したら、それでいいんじゃないんですか?」


「生きて帰ってこないと、名声は手に入れられないぞ? 死んで、それで讃えられて満足ならそうするといい」


 首を振っている探索者達がいる。

 違うだろう?

 お前らの目指すところは。


「死を覚悟したら、まず、救援を呼べ。そして、生きることを諦めるな! 俺達が、絶対に助けに行く!」


 俺も柄にもなく、熱く語ってしまっている。

 気持ちが、高揚してくる。

 後輩たちを絶対に死なせたくないからな。


「いいか? 生きろ!」


 探索者達の目を見ながら語る。


「そのためのこの装置だ。この装置があれば、一分、一秒でも長く生きていられる。その間、信じて待て。俺達が、敵を蹴散らしてこの地上に戻ってみせる! わかったか!」


「「「おう!」」」」


「今日の講義は、以上だ」


 そう最後に切り上げて俺は、その場を後にした。

 黄虎は悪役を買ってくれ、殴られた後は大人しく話を聞いてくれていた。


 こういう時に、ちゃんと空気を読むからな。

 よくできた部下だ。


 ダンジョンの動向が気になるな。

 アイツらが死なないために、動かないとな。

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