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帰還率99.8%のダンジョン救助隊  作者: ゆる弥


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23/26

23.多重スタンピード

「ふぁぁあーあぁ」


「お疲れだったな。桃瀬。ただな、上司の前で大きな口空けて欠伸するのはどうなんだ?」


「はははっ。はぁーい。すみませーん」


 全然反省していない様子の桃瀬。

 別にいいけど、女としてどうなんだ?

 まぁ、俺は気にしねぇけどよぉ。


 今日もダンジョンでは何事もなく帰ってきたようだ。

 ここ数日は、探索者をダンジョンへ入れていない。

 何があるかわからないからだ。


 俺もコーヒーを入れて飲みながら、過去の資料を漁っているところだった。

 その静寂は、突如破られた。


 ──ウウゥゥゥゥゥウウウゥゥゥ


『緊急救助要請! 緊急救助要請! スタンピード発生!』

『発生ダンジョンは、阿佐ヶ谷、千駄ヶ谷、八王子!』

『民間人にも被害が発生。ただちに沈静化のために出動してください』

『転移も使えません』


「なんだと! 今まで静かだったのはなんだったんだ! くそっ!」


「私は、走って戻ります!」


「あぁ! ダンジョンコアは仕方ないから壊せ! 俺は、若葉の所へ行く!」


「了解!」


 すぐに本部から飛び出していく。

 本部周辺の街は静寂の中で、車の走る音や電車の走る音が聞こえているだけだ。


 千駄ヶ谷へと急いで向かうとダンジョンの外で救助隊と探索者が魔物を倒していた。

 民間人を守りながらなので、かなり大変そうだ。


「若葉! 無事か⁉」


 ショートソードを振り下ろしながら若葉が口を開く。

 

「はい! なんとか! 急に魔物が湧いてきたんですよ!」


 やはり妙だ。急に湧いてくるなんて。

 何かがおかしい。


「とにかく、敵を殲滅しろよ! 俺は、ダンジョンコアを叩く!」


「はいっ!」


 外に出ているのはゴブリンとオークだ。

 若葉たちと探索者でどうにかなるだろう。


 ダンジョンは魔物で溢れかえっていた。


「飛鋭斬、ダブル!」


 クロスした剣閃は入口にいた魔物たちを切り裂いていく。

 剣閃のあとに、刀で魔物を切り倒していく。

 ダンジョン一階層へと入ると刀を地面へ振り下ろした。


「異黒流……天上天下」

 

 凄まじい轟音の後に空いた大きな穴。

 そこへと身を投じる。

 危なげなく、ボス部屋へとやってきた。


 ボス部屋には、複数体のA級の魔物。ミノタウロスやらケルベロスが構えて待っているところだった。だが、構えていても仕方ないだろう。


 黒い魔力をのせた刀を引き絞る。


「異黒流……突黒乱舞とっこくらんぶ


 刀が前方へ霞んだと思ったらまた引き絞り、また突いて戻り。

 これを凄まじい早さでやっているだけなのだが、それが凄い。


 数十体いた魔物はほとんど沈んだ。


 残りは運よく生き残った二体だった。


「はぁ、なんで俺たちを狙ってるんだ?」


 お構いなしに斧と剣で切り掛かってきている。

 それを避けながら、様子を窺う。


「知能のある魔物だと思ったが、違うようだな」


「……」


 魔物が喋るわけがねぇ。

 ドラゴンじゃあるまいし。


 問答無用で切り伏せるとダンジョンコアの部屋へと行く。

 ここも色々と機械があるが、今はそれどころではない。

 ダンジョンコアを破壊して地上へと戻って来た。


「ダンジョンコアを破壊した。あとは、若葉に任せるぞ」


「はい!」


 残りの魔物の処理を任せて、俺は八王子へと駆ける。

 救助要請は出ていない。

 だから、ダンジョンコアだけでも破壊してしまえばスタンピードは収まるはずだ。


 やけにあっさりスタンピードを止められた。

 奴らは何がしたい?


 数分で到着したが、そこでも同じように地上で魔物と戦っていたが、蝶子がいないようだ。


蝶子ちょこはどうした?」


「本部のセキュリティが鳴ったとかで警備会社も来るそうですが、蝶子さんも行きました。万が一、所有物が盗まれたら大変だからと……」


「わかった。まずは、ダンジョンコアを壊してくるからな!」


 そう言ってダンジョンへと潜り、嫌な予感が脳裏をよぎる。

 穴を空けてダイブした。

 ボス部屋も変わりないようなボスだった。


 何かを見落としているような。

 スタンピード。

 三か所同時発生。

 転移妨害。

 

 もう種は埋められていたのか。

 だとしたら本命は被害を出すことじゃない。

 別にあるのかもしれない。


 ダンジョンコアを壊すと地上へと出た。


 端末を取り出して桃瀬へと連絡する。


『はぁーい。桃瀬ぇ』


「そっちはどうだ?」


『ダンジョンコアは壊しましたぁ』


「わかった。俺は本部へ戻る! セキュリティがなったらしい!」


「えぇっ? なん──」


 通話を切って俺は本部へと急行した。

 胸騒ぎがする。

 黄虎と空野がやられた時みたいな。


 本部の辺りは野次馬がいて騒然としていた。

 その人だかりを飛び越えて着地すると、血だらけの蝶子が寝ていた。


 その横には警備会社の制服を着た男性が二人とも倒れている。


「蝶子! 大丈夫か⁉」


 駆け寄ると、身体を抱えて怪我の様子を確認する。

 全身に裂傷。

 更に頭からも血を流している。


「……しくじった……」


「何があったんだ?」


「……持ってかれた」


 その一言で何が目的だったのか合点がいったのだ。


「もしかして……転移用にしていたS級魔石か?」


「……そう」


 まさか、これまでのダンジョンの異変と奴らが動いていたのはこのための布石だったのか?


 だとしたら、やられた……。


 その前に、治療が優先だ。

 警備会社の職員は、どちらももう既に手遅れだった。


「蝶子、頑張れよ。今病院へ連れて行くからな」


 お姫様抱っこをして病院へと急行する。

 その間も声を掛けながら移動していたが、段々と声を発さなくなっていった。


 病院へ着いた頃には、意識はなく。

 医者も助かるかどうかわからないという状態だった。


「くそがっ!」


 病院の壁を殴りつけた。

 壁にピシリとヒビがはしる。

 

 何をやってんだ俺は!

 まさか、S級魔石が目的だったとは……。

 奴ら、何をする気だ?


 ……違うのか?

 『うみへび座は、悪魔を呼び起こすんだ』

 先輩の発言が、頭から離れなかった。

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