22.静寂
協力要請をしてからすぐに探索者ギルドが動いてくれた。探索者達の命に関わる事案だということで、すぐに部隊を編成してくれたのだ。
三、四、五部隊でその探索者達と一緒にダンジョンを見張ることになる。
隊長たちへと気を引き締めるように伝えたが、探索者も緊張している様子だ。
「今日からダンジョンの警戒に当たってもらう。奴らは、機械の部屋へときっと出入りするはずだ」
一人の探索者が手を上げた。
「おう。なんだ?」
「あの、その部屋を潰してしまってはダメなんですか?」
それはもっともな疑問だった。
「それは、俺達も考えた。だが、もし潰したことで被害が出たらどうする? 例えば、この辺一体が消し飛ぶ……とかな?」
その探索者は青い顔をすると、頭を下げた。
「すみません! 思慮が足りませんでした!」
「いや、結構そういう声も聞こえていたから説明できてちょうどよかった。ありがとう」
すぐに破壊するような考え方はよくないだろう。
それが、敵の思うつぼだということもある。
そうなると、機械はあまり触らない方がいい。
破壊できずに、見守らなければいけないというのはフラストレーションが溜まるだろう。だが、奴らを一人でも捕まえることができたらそれでいいのだが。
「それでは、配置を伝える。三番隊、千駄ヶ谷、四番隊が阿佐ヶ谷、五番隊が八王子な」
「「「はい!」」」
「俺はすぐに行けるよう、ここにいる。異変があったら、すぐに連絡すること」
みんなは頷くと、各ダンジョンへと転移で散っていった。
これで奴らが捕まればいい。
端末を操作すると通話を始めた。
『なんや? この忙しい時に?』
「おう。調査はどうだ?」
『どうだやあらへん。こっちは負傷者が出てる。奴らに襲われたらしいわ』
関西でも奴らと接触があったんだな。
何かあったら報告するって話だったが。
「そっちもか……」
『も、ってことは、本部も負傷者がでたんか?』
「黄虎と空野がやられた」
『なんやて⁉ 一番と二番やないか!』
「そうだ。そっちは?」
『ワイらは三番と五番やな。被害報告しようとおもてたんやけど、ちょっと色々と重なってバタバタしててな』
「何か他にもあったのか?」
『スタンピードも起きて民間人に被害が出てん』
それは、衝撃だった。まさか、民間人にも被害がでているなんて。
あまりの出来事に言葉を失ってしまった。
「死傷者は?」
『幸いなことに、死者はでておらん。しかしやぁ、負傷者は数十人に上る感じやなぁ』
「それは、やはり放っておけねぇなぁ」
『せやなぁ。どうにかせな』
少し、焦りの混じった声だった。
関西の支部長として、民間人に被害が出てしまったのは、見過ごせないだろう。
どうにかしたいという思いは、俺も一緒だ。
「ダンジョン探索庁には、探索者ギルドに協力要請するように話してきた。協力してくれるっつってたから、力になってくれるはずだ」
『おぉ。せやったら少しラクになるかもなぁ』
「他の支部も連絡してみる。忙しい所すまんな」
『ええよ。また何かあったら連絡するわ』
関西は、こっちより被害が大きいな。民間人にも被害が出てるだなんて。
通話を終えた後に、北海道、東北、九州、沖縄のそれぞれに連絡してみたのだ。
すると、どこも被害が出ている状況だった。
どっこも忙しくて連絡どころではなかったらしい。
現状は後手に回っている。
どうにか先手を取りたい。
その為に、ダンジョンに網を張り巡らせているわけだ。
その網も、奴らが来なければ引っ掛からないわけだけど。
午前中が過ぎたが、まだ奴らが来たという連絡はない。
部屋の入り口が見えないところで見張っているはずだ。
あまり、この緊張状態が続くと隊員たちも疲弊して行ってしまう。
本部で星座と地図が合成された画像を睨みつける。
各支部の赤い点で、今皆が待機してくれている。
また負傷者が出なければいいのだが。
待ち続けているが、何の音沙汰もなく外は暗くなり始めていた。
このままでは埒が明かない。
端末で連絡をする。
『はい。桃瀬』
「どうだ?」
『誰も来ませんねぇ』
「交代で夜の見張りをするぞ。俺も加わるからローテーションで休憩な」
「了解です」
若葉と蝶子にも連絡して同じことを伝えて班を編成してもらった。そこへ俺がローテーションに加われば少しみんな休めるだろう。
休む隊員は転移使って本部で休めばいいだろうしな。
最初に桃瀬の所へ顔を出した。
「こんなにこないことあるんですねぇ?」
「見つかったばかりだから、警戒しているのかもな。だとしたら夜中に来るかもしれねぇ」
「なるほど。前に入る班は警戒。その他は休んでていいわよ」
「「「はいっ!」」」
桃瀬がちゃんと隊長をしている姿をあまりみないから、感心してしまった。
すごいじゃないか。
ちゃんと指示を出しているなんて。
「桃瀬も、ちゃんと隊長なんだな?」
「何でですかぁ? 当たり前じゃないですかぁ! もうっ!」
俺の肩を叩く桃瀬。
こうやって無駄口を叩けるのも生きているからだ。
仲間の誰にも死んでほしくない。
だからこそ、何かあったら早く駆け付けたい。
「まぁ、ずっと気を張っているのは疲れるだろう。だから、適度に休めよ? 俺も腕の見せ所だぞ?」
「わかってますよぉ」
唇を尖らせてそう口にした桃瀬。
この日の晩は、何も起きなかった。
それどころか、二日目こそはと身構えていたが、誰も来ず音沙汰なし。
三日目か?
と思ったが、奴らはあらわれなかった。
雲隠れしたのか?
なんだろうか。
このモヤモヤとする不安感は。
本部前の電線にカラスがズラリと並んでいる。
鳴き声がうるさいのはもちろんだが。
何やら不吉な予感がするじゃねぇか。




