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帰還率99.8%のダンジョン救助隊  作者: ゆる弥


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22.静寂

 協力要請をしてからすぐに探索者ギルドが動いてくれた。探索者達の命に関わる事案だということで、すぐに部隊を編成してくれたのだ。


 三、四、五部隊でその探索者達と一緒にダンジョンを見張ることになる。


 隊長たちへと気を引き締めるように伝えたが、探索者も緊張している様子だ。


「今日からダンジョンの警戒に当たってもらう。奴らは、機械の部屋へときっと出入りするはずだ」


 一人の探索者が手を上げた。


「おう。なんだ?」


「あの、その部屋を潰してしまってはダメなんですか?」


 それはもっともな疑問だった。


「それは、俺達も考えた。だが、もし潰したことで被害が出たらどうする? 例えば、この辺一体が消し飛ぶ……とかな?」


 その探索者は青い顔をすると、頭を下げた。


「すみません! 思慮が足りませんでした!」


「いや、結構そういう声も聞こえていたから説明できてちょうどよかった。ありがとう」


 すぐに破壊するような考え方はよくないだろう。

 それが、敵の思うつぼだということもある。

 そうなると、機械はあまり触らない方がいい。


 破壊できずに、見守らなければいけないというのはフラストレーションが溜まるだろう。だが、奴らを一人でも捕まえることができたらそれでいいのだが。


「それでは、配置を伝える。三番隊、千駄ヶ谷、四番隊が阿佐ヶ谷、五番隊が八王子な」


「「「はい!」」」


「俺はすぐに行けるよう、ここにいる。異変があったら、すぐに連絡すること」


 みんなは頷くと、各ダンジョンへと転移で散っていった。

 これで奴らが捕まればいい。


 端末を操作すると通話を始めた。


『なんや? この忙しい時に?』


「おう。調査はどうだ?」


『どうだやあらへん。こっちは負傷者が出てる。奴らに襲われたらしいわ』


 関西でも奴らと接触があったんだな。

 何かあったら報告するって話だったが。


「そっちもか……」


『も、ってことは、本部も負傷者がでたんか?』


「黄虎と空野がやられた」


『なんやて⁉ 一番と二番やないか!』


「そうだ。そっちは?」


『ワイらは三番と五番やな。被害報告しようとおもてたんやけど、ちょっと色々と重なってバタバタしててな』


「何か他にもあったのか?」


『スタンピードも起きて民間人に被害が出てん』


 それは、衝撃だった。まさか、民間人にも被害がでているなんて。

 あまりの出来事に言葉を失ってしまった。


「死傷者は?」


『幸いなことに、死者はでておらん。しかしやぁ、負傷者は数十人に上る感じやなぁ』


「それは、やはり放っておけねぇなぁ」


『せやなぁ。どうにかせな』


 少し、焦りの混じった声だった。

 関西の支部長として、民間人に被害が出てしまったのは、見過ごせないだろう。

 どうにかしたいという思いは、俺も一緒だ。


「ダンジョン探索庁には、探索者ギルドに協力要請するように話してきた。協力してくれるっつってたから、力になってくれるはずだ」


『おぉ。せやったら少しラクになるかもなぁ』


「他の支部も連絡してみる。忙しい所すまんな」


『ええよ。また何かあったら連絡するわ』


 関西は、こっちより被害が大きいな。民間人にも被害が出てるだなんて。


 通話を終えた後に、北海道、東北、九州、沖縄のそれぞれに連絡してみたのだ。

 すると、どこも被害が出ている状況だった。

 どっこも忙しくて連絡どころではなかったらしい。


 現状は後手に回っている。

 どうにか先手を取りたい。

 その為に、ダンジョンに網を張り巡らせているわけだ。


 その網も、奴らが来なければ引っ掛からないわけだけど。


 午前中が過ぎたが、まだ奴らが来たという連絡はない。

 部屋の入り口が見えないところで見張っているはずだ。

 あまり、この緊張状態が続くと隊員たちも疲弊して行ってしまう。


 本部で星座と地図が合成された画像を睨みつける。

 各支部の赤い点で、今皆が待機してくれている。

 また負傷者が出なければいいのだが。


 待ち続けているが、何の音沙汰もなく外は暗くなり始めていた。

 

 このままでは埒が明かない。

 端末で連絡をする。


『はい。桃瀬』


「どうだ?」


『誰も来ませんねぇ』


「交代で夜の見張りをするぞ。俺も加わるからローテーションで休憩な」


「了解です」


 若葉と蝶子にも連絡して同じことを伝えて班を編成してもらった。そこへ俺がローテーションに加われば少しみんな休めるだろう。


 休む隊員は転移使って本部で休めばいいだろうしな。


 最初に桃瀬の所へ顔を出した。


「こんなにこないことあるんですねぇ?」


「見つかったばかりだから、警戒しているのかもな。だとしたら夜中に来るかもしれねぇ」


「なるほど。前に入る班は警戒。その他は休んでていいわよ」


「「「はいっ!」」」


 桃瀬がちゃんと隊長をしている姿をあまりみないから、感心してしまった。

 すごいじゃないか。

 ちゃんと指示を出しているなんて。


「桃瀬も、ちゃんと隊長なんだな?」


「何でですかぁ? 当たり前じゃないですかぁ! もうっ!」


 俺の肩を叩く桃瀬。

 こうやって無駄口を叩けるのも生きているからだ。


 仲間の誰にも死んでほしくない。

 だからこそ、何かあったら早く駆け付けたい。

 

「まぁ、ずっと気を張っているのは疲れるだろう。だから、適度に休めよ? 俺も腕の見せ所だぞ?」


「わかってますよぉ」


 唇を尖らせてそう口にした桃瀬。

 この日の晩は、何も起きなかった。


 それどころか、二日目こそはと身構えていたが、誰も来ず音沙汰なし。

 三日目か?

 と思ったが、奴らはあらわれなかった。

 

 雲隠れしたのか?

 なんだろうか。

 このモヤモヤとする不安感は。


 本部前の電線にカラスがズラリと並んでいる。

 鳴き声がうるさいのはもちろんだが。

 何やら不吉な予感がするじゃねぇか。

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