13.食事会
報告会が終わると、合同救助大会一日目の夕食は恒例の食事会となった。
本部の各部隊長はなるべく参加。
支部長達はだいたいが自主的に参加する。
あとは、参加したい隊員はしてもいいという緩い感じでやっている。
用意したのは、行きつけの老舗の居酒屋。
この食事会は予算で落としていいことになっているので、付き合いのある居酒屋を貸し切ることにしたのだ。こうすることで、俺たちは気兼ねなく飲めるってこった。
「あー。それでは、皆さん飲み物は来ましたかね?」
一応、本部長として音頭をとることとなった。
こういうのはあまり得意ではないので、いつも手短にする。
「「「はぁーい」」」
「では、救助大会、そして、大規模救助活動お疲れさまでした! かんぱーい!」
「「「かんぱーい!」」」
それぞれでグラスを重ね合わせてグビッと一口。
そのままの勢いでビールを流し込み、ジョッキの半分はなくなった。
「ぷはーっ! うめぇぇ。これだよなぁぁ」
「かぁぁぁ! やっぱこれやなぁ! 異黒はん、飲める口やっけ?」
「おいおい。俺に聞くか? それぇ」
「はっはっはっ。やぼやったなぁ。いやぁ。毎回記憶がないんよなぁ」
関西支部長がそういうと、俺も目を流してしまう。
実は、俺も記憶がないからだ。
「それはぁ、異黒隊長もですよねぇ?」
桃瀬が余計なことを口走った。
「はぁ? い、いやぁ」
「去年はぁ、あぁぁ全然覚えてねぇぇって言ってましたもんねぇ?」
ここで爆弾を落としていく。
いつもそうなるまで飲んでしまうという醜態をさらしてしまった。
ところが、それは俺だけじゃなかったようだ。
「わいもやねん」
「おいどんも」
「おれもだっぺ」
「おらもだなぁ」
「わーもさー」
支部長全員記憶がないようだ。何が起きているんだ。この食事会は。なんだか不可解な会のような気がしてくるから怖い。
「沖縄の。酒強いんじゃないのか?」
「強いさー。でも、記憶が消えるのはたぶん別さねー」
そんなもんなのか?
ちょっとよくわからないけど。
ホッケ焼きと枝豆がやってきた。
牛すじ煮込みは今やってくれているのだろう。
楽しみだなぁ。
「ちょっと聞きたいことがあんだけど、いいべか?」
東北支部長が手を上げて発言するようだ。
別に、挙手性とかではないから自由に話せばいいと思うのだが。
「どうぞ?」
「異黒さんってなんでそんなにツエエんだっぺ?」
「強いかはちょっとわからん。要救助者を助けている帰還率は高いと思うが」
眉間に皺を寄せながら東北支部長が口を尖らせている。
坊主頭でそんな口をしているのがちょっと可愛らしい。
どこぞの日曜18時半からやっている海家族の物語の子みたいだ。
「そうじゃねぇべ。あんな速さで救助できるのが異常だべさ?」
「そうでごあす。あの床をぶち抜くのだって、相当魔力の力が強くないとできないでごあす」
東北と九州支部長は波長が合うようだ。
同じことを聞いてきた。
別に、話してもいいけど、後でなんか言われなきゃいいなぁ。
「あぁぁ。実は、元々探索者でな。……探索者だった」
「そうなん?」
目を見開いて傾けていたグラスを止める関西の。
興味津々でこちらに目を向けている。
これは、ランクまで言う流れになってしまったなぁ。
「で? ランクはなんだったん?」
「……S」
「……マジかい。そらぁ、強いし出鱈目なわけやわぁ」
関西支部長は不満そうな顔をすると、ビールをあおった。
グラスを上げると「おかわりや」と口にした。
店員さんが来ると、俺もグラスを下げて「すみません、生もう一つ」というとニコッとお姉ちゃんが笑って去って行った。
「おい! 異黒よ! なんでお前だけ笑顔見せられてん?」
「しらねぇよ。お前がお代わりってだけ言ったからじゃねぇの? あの姉ちゃんはなぁ、こんなに人がいたら、誰が何飲んでるかなんて把握できねぇよ! 困るだろうが! ちゃんと生一つって言ってやれバカが!」
ここまで言うつもりはなかったが、ちょっとヒートアップしてしまった。
桃瀬が姉ちゃんを睨んでいる様に見えたが、気のせいだろう。睨む意味が分からないからな。別に飲み物が遅れてきたわけでもないしな。
「なんやてゴラァ?」
関西支部長が俺へと顔を近づけて睨みつけて来る。
「関西支部長、あんまりうるさいと外に言って貰いますよ?」
桃瀬が関西のを脅しつけた。
これには、震えあがった関西の。
そして、目を吊り上げた。
「なんで? なんで、お前ばっかり怒られんのやぁ?」
そんなこと、俺の知ったことか。
「関西さんさー。うるさいんは事実なんさー」
沖縄が援護射撃してきた。
いいぞいいぞと思っていたら、関西側に東北支部が付いた。
「おれもおかしいと思うっぺ。異黒さんだけもてすぎだっぺよ」
その頭をスコーンと叩く黄虎。
「別に、異黒さんがもてるのは普通だろうが? こんなにツエエんだから、もてねぇ方がおかしい」
完全に目が座っている。
「黄虎、お前、飲んだのか?」
「桃瀬がいいっていうからのんだっすー。大丈夫ですって! 異黒さんに文句ある奴らは、オレが締めますから!」
いやいや。別にそういうことを言っているわけではないんだが。
黄虎は酒が好きなんだが、弱いためにあまり飲ませないようにしていたのだ。
酔うと、こうやって戦闘狂に拍車がかかる。
「桃瀬ぇ!」
「きゃっ! 怒らないでくださーい!」
桃瀬は楽しそうに笑うと、酒を飲む。
「黄色いの! お前生意気やなぁ!」
「関西のよりツエエからなぁ!」
開催支部長の辛みに真っ向から対立する黄虎。
「なんやてゴラァ! 異黒! お前どないな教育してんねん!」
「うるせぇ。お前よりマシだわ」
ここで、異黒までもが関西を威嚇。
「なんやとゴラァ!」
「関西ヤロー! 異黒さんには敬語で話せボケェ!」
「なんで同期に敬語使わなきゃいけないねん! アホォ!」
「きゃー! 私を取り合わないでぇ!」
カオスな状態だった。
この辺りから、俺はあまり記憶がない。
なんだかよくわからないが、次の日、重度の二日酔いだった。




