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神は言っている、ここで死ねと。

もちろんチュートリアル用のエリアとはいえど、森に生息するモンスターがスライムだけとは限らない。


「うわ、キモっ」


 思わずそんな率直な感想な飛び出る。

 スライムを倒し、薬草などを採取しながら道を進んでいくと私はそれに、世間ではゴブリンと呼称されるモンスターに出会った。


 この距離からでも届く腐った生ゴミのような異臭を漂わせ、脂ぎった身体を揺らしてこちらを見る姿は正直背筋が凍る。

 小さい手の平で握った錆びた大鉈からは妙な威圧感を感じる。

 こんな所まで描写しなくてもいいのに……と毒づきながら私は模擬刀を謎空間から取り出す。


 ちなみに私の現在のステータスはこんな感じです。


―――――――――――――――――――――


 もうここまで来たら器用値極振りクソステータスでやって

・渡瀬 アズサ   LV2   CP:0  

 所持金:1010ターン

 HP:4/4  MP:3/3

 SP:5/5

  

 物理攻撃:1

 物理耐久:1

 魔法出力:1

 魔法耐久:1

 速力:1

 幸運:1

 器用値:95

 神秘:1


〈スキル〉  スキルポイント:0

 「獣気活性LV3」「体術LV1」「刺突LV1」

 

〈装備〉

 模擬刀(発動スキル「見切りLV1」)

 浅皮の装束(発動スキルなし)

――――――――――――――――――――――いこうと血迷った結果、安定の器用値以外オール1という大惨事だ。

 リスナーに呆れられたがいつものことなので無問題(モーマンタイ)

 だがレベルアップのおかげで基本ステータは地味に上がっている。


 一応、これなら一撃食らって即死なんてことにはならない……はずだ。

 でも物理耐久が1なのであまり自身はありません。

 は? それなら攻撃とか耐久にステータス振れよって? ちょっと何言ってるのかよく分かりませんね黙ってくださいー。


「さて、なけなしのスキルポイントから獲得したニューウェポン……どんなもんか試させてもらうよ」


 有識者曰くスキルポイントは新しいスキルを獲得したり、既存のスキルのレベルを上げる際に使ったりするらしい。

 膨大なスキルの中私が選んだのは「刺突」。

 どうしてこれを選んだのかって? 

 それはね……、


「こうするためだよ――〈骨砕(ショックシェイク)〉!」


 私を目視し、すぐさま猛烈な勢いで飛び掛かるゴブリン。

 大きく見開いたその黄色の眼球に――模擬刀の先端が突き刺さった。

 スキルにより強化された一撃は容易にゴブリンの眼球を潰し、周囲に汚い液体が飛び散る。


 あまりの激痛にゴブリンは……いや被害者は悶絶した。

 だがもちろんこれで終わりじゃない。

 私は突き刺した模擬刀を引き抜かず、より深く刀身をゴブリンの「中」に沈めた。


「~~~~!!!」


 私を止めようとがむしゃらになって足掻くゴブリンだが、そんな子供じみた抵抗が私に通じるはずもないよね。

 私は模擬刀から手を離し、ゴブリンが落とした大鉈を拾う。

 

 って、重!

 そりゃ器用値以外オール1なんだから当然か……。


 私は大鉈の重量に振り回されないように注意しながら、ゴブリンの突進を回避して、突き刺さった模擬刀を大鉈で勢いよく押し込んだ。

 模擬刀はゴブリンの頭蓋(ずがい)を、脳味噌を食い破りとうとう貫通する。


『経験値が一定値に達しました』

『渡瀬アズサのレベルが3になりました』

『基本ステータスが加算されました』

『CP及びスキルポイントが加算されました』


『条件を達成しました』

『スキル「刺突LV1」が「刺突LV2」に変化しました』


「ふふふ……やっぱりね。どんなモンスターでも「目」は弱点だよねぇ」


 いくら私でも一々さっきのスライムみたいにちまちまと戦ったりはしない。そんなことしたら配信がめちゃくちゃグダるからね。

 だから私は考えた。

 「どうすればこの貧弱なステータスで効率よく(エネミー)を狩れるか」と。


 その答えの一つがこの目潰しである。

 スライムみたいな相手には通用しないが、さっきの戦いを(かえり)みるにスキルポイントを使って「刺突」を取った甲斐はあったようだ。


 頭部に風穴を開けられたゴブリンは地面に崩れ落ちて、ポリゴン状の粒子となって消えていく。


『ひぇ……アズサちゃん怖ぇよ』

『人の心とかないんか?』

『変態ジジイになったり猟奇的になったりと今日はやけに情緒が忙しいな』

『ヤバい、なんかゾクゾクする』

『なんか新しい扉が開きそう』


 コメント欄が騒がしいがいつものことだ。


「さぁ、この調子でじゃんじゃん経験値を稼いでいこー!」





 そう意気込み、私は道なき道を進んでいく。

 道中は「この森で戦闘に慣れろ!」という開発の意思がひしひしと伝わるほど遭遇(エンカウント)率が高く、配信的にもかなり助かった。

 私はスライムやゴブリン、時にはオークらしきモンスターを倒しまくり順調にレベルアップを重ねていく。


『経験値が一定値に達しました』

『渡瀬アズサのレベルが12になりました』

『基本ステータスが加算されました』

『CP及びスキルポイントが加算されました』


『条件を達成しました』

『スキル「獣気活性LV4」が「獣気活性LV5」に変化しました』

『条件を達成しました』

『スキル「刺突LV8」が「刺突LV9」に変化しました』


 乱獲しまくったおかげでレベルはもう12だ。

 ステータスは例によって相変わらず器用値以外1だけど、新しいスキルもかなり獲得できたし既存のスキルもまぁまぁ成長した。

 いよいよ無駄に伸ばした器用値が日の目を浴びるのか……。

 

 そう胸を膨らませていた私は失念していた。


「よーし、レベリングも終わったしそろそろ森を出よっかな。道中の敵にも慣れてきたし、あんな雑魚相手じゃ死なないでしょ。やっぱ戦闘はもっとヒヤヒヤしないとねぇ」


 今までエンカウントした敵はすべて地に足が付いている、つまりすべて陸型だ。

 それに慣れてしまったがゆえに。


「――はぁっ!?」


 かすかに揺れる地面。

 

 次の瞬間、鼓膜が破れるような咆哮を上げて地面から現れた「(さめ)」の急襲に私は為すすべもなく吹き飛ばされ死んだ。

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