配信者と一般人Kとサメ 上
日間ランキングに自分の作品があってびっくらぽんでした。
「……何あれ」
『サメだよ』
『ただのサメ』
『普通のサメだよ』
「なんで普通のサメが当然のように陸を泳いでんの」
『そりゃ……アスチェだからだろ』
『これが普通』
『慣れろ』
『進んでいくともっとエグイのたくさんいる』
「……はぁ。ちなみに、あのサメってどんくらい強い?」
『推奨レベル30』
『チュートリアルに唐突に出現する理不尽』
『戦法がクソ過ぎるから40くらいでも普通に苦戦する』
「そっか。楽しくなってきたね」
よーし、森を出るつもりだったけど予定変更だ。
絶対に、文字通り死んでもあのサメを倒す。
「でも聞く限りあいつそう簡単にエンカウントしないよね? 適正レベルから大きく外れたクソエネミーがスライムみたいにポンポン出てこないだろうし、有識者なんか知ってる?」
『モンスター狩りまくってるとたまに襲われる』
『あいつらの好物のオークの巣付近は結構出やすいよ』
「なるほど……なら取り敢えずオークの集落を襲おっか」
一応道中それらしき場所はいくつか見つけてある。
私の爪楊枝攻撃力と紙装甲でオークの群れを相手するのは厳しそうだし、何ならエロ同人みたいなことになりそうだけど対策がないわけでもない。
レベリングの過程で入手・強化したスキルを私の器用値で駆使すればそこそこ善戦できるはず。
問題はそこからどうやってあのサメを倒すかだよね……。
「ま、こういうのはトライアンドエラーだよね。まだ情報が少ないし、一回無策で戦ってみるのもアリかも」
これは結構長期戦になりそうだな。
そう考えながらオークの巣に向かっていると……思わぬ先客がいた。
私が目指していたオークの巣は既にほとんど壊滅状態で、見た限りこの場の生存者は「キュウダイ Lv12」と頭上に表示されてるプレイヤー一人だけのようだ。
有識者曰くオークの推奨レベルは6らしい。
なので私みたいに縛りプレイしている人間でもない限り集落を壊滅させるのはソロでも意外と簡単だそうだ。
い、いやでも私は他の人より何倍もスキルの効果引き出せるし! めちゃくちゃ強いし! だから別に全然羨ましくないし、「リセマラしよっかな……」とか思ったりしてないんだからねっ(血涙)。
「……あ、どうも。はじめまして、キュウダイという者っす。もしかしてお嬢さんも此処狙ってました?」
声の感じからして男性……年は私とそう変わらないかな。
「そうだけど、まぁ別に他の所があるからそこまで問題はないかなー」
「ならよかったっす!」
「お兄さんも今日始めたばっかり?」
「俺は昨日からです。てか、めっちゃ声綺麗っすね。いや口説くつもりはないですけど。……もしかして配信とかやってます? だとしたら邪魔にならないようにさっさと消えるっすけど」
「ああ、別に私のことは気にしなくていいよ。私の方が後から来たんだし」
元々先にいたのはこの人だからね。
私こそ邪魔にならないようにお暇しようとした……その時。
地面がかすかに揺れる。
「……ちなみにお兄さん、道中モンスターを沢山倒したりした?」
「え? あー、そういえばレベル上げに結構ここら辺のオーク倒しましたね」
「そっかぁ」
まぁわざわざオークの群れを相手にする手間が省けたし、良しとしようか。
「お兄さん」
「?」
「全力で横に避けて」
咆哮。
地面から凄まじい勢いで出てきたのは、トラック一台分ほどの体長の憎ったらしい「鮫」だ。
「鮫」はその鋭い歯をあらわにして私たちを……正確にはキュウダイくんを噛み砕かんと大口を開き、閉じた。
「うわぁああああああああ!?」
「お兄さん、悪いけどこいつは私の得物だからね。手出しはしないでよ」
間一髪「鮫」の殺戮圏内から逃げ切ったキュウダイくんを見下ろしながら、私はそうあらかじめ釘を刺す。
私はステータス的に「鮫」の鋭い攻撃を避けることはできない。
もちろん私があいつの攻撃を一発でも食らえば即死だ。
だから私は「鮫」の重たい一撃を“パリィ”した。
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「見切りLV6」
・古き剣客の術のその模倣。
被弾寸前にガード行動を行うことで無敵時間を発生させる。
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私がレベリングの過程で手に入れて育てたスキル「見切り」。
このスキルを端的に説明すると“音ゲー”だ。
タイミングよく相手の攻撃をガードすればコンマ数秒の無敵時間を得られ、ついでに弾くこともできる。
本来はかなり扱いが難しいスキルらしいけど、私の無駄に高い器用値のおかげで判定がかなり甘くなってて、ほぼ初見の攻撃もある程度は防ぐことができる。
難点は連撃にちょっと弱いことかなー。
「さて、初見殺しはなんとか防げたけど、問題はこっからだね」
スキルレベル的な問題なのか、はたまた「鮫」が強すぎるだけか、パリィには成功したけど勢いまでは殺しきれず、今現在私は空中を浮いている。
そんな私に空を泳いで迫り来る「鮫」。
「ちょっと、それは反則なんじゃないかなぁ!」
こいつ、地面を泳ぐだけじゃなくて空も泳げるの!?
いくらなんでも無法すぎるでしょ!
自由落下で降下する私を「鮫」が鋭い尾ひれで薙ぎ払う。
全神経を集中させ、私はそれを模擬刀で迎え撃つ。
トラックに突っ込まれたような衝撃が両腕を襲い、歯を食いしばって私は肉薄する尾ひれをパリィで弾くことに成功した。
「――〈骨砕〉!!」
その隙に私は模擬刀の先端を「鮫」の目がけて突き刺す。
有り余った器用値で能力を最大限に引き出された〈骨砕〉は、しかし生物にとって本来最も脆弱な部分である眼球すら傷付けられず、簡単に弾かれてしまった。
「嘘ぉ!?」
唖然とする私へ「鮫」の反撃。
その巨体が私を押し潰す……寸前、割り込んでた石人形がそれを受け止め、私の身代わりとなる。
なんとか受け身を取り地面に落下した私は苦い顔をした。
「す、すみませんっ! つい……」
「お兄さん、気持はありがたいけど次からは要らないからね」
はー、他人に心配されるようなら私もまだまだ三流だね。
だけど今ので必要な情報は大体把握した。
まず「鮫」の攻撃をパリィすることは可能。
でも、さっきみたいに空に打ち上げたら面倒だから注意しないとね。
「それにしても目を攻撃しても弾かれるとは……根本的にステ不足だね」
この爪楊枝並みの攻撃力では何日「鮫」を殴っても意味がない。というかそんなことをしてる間にジリ貧で死ぬ。
とはいえここで諦める渡瀬アズサではない。
こうなることは百も承知だ。
だから…………私も、奥の手を切る。
「――〈獣気活性〉」
それは、知恵なき獣を裡に宿す秘術にして禁忌。




