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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
幻の島、アヴァロン
2520/2524

- C 1365話 ゲルツ宮廷伯の鬱な気分 5 -

 いやお蔭で俺さまも目が覚めた。

 従者は引き攣っているのではなく、微笑んでいるんだってことに。


 この違いは大きい。

 こいつは遊んでやがる。

 七武卿のベルフ家は、大剣二刀流の猛者だ。

 諸兵よりも先んじて前に出て、エルフらしからぬ剛剣を敵陣に叩き込む。

 流麗よりも武骨を美徳とする。


 ま、


 俺さまに言わせれば、狂戦士。

 極め過ぎて『筋肉は裏切らない』とか言う連中になった。

 あのうっすい筋肉を細い体に張り付かせた従者しょうじょも『筋肉は裏切りません』と。

 俺さまに強要してくる始末。


 ああ、そうだったよ。


 従者こいつが嗤っている。

 剛腕のベルフもんが嗤ってるんだ、俺さまに何させるんだよ!!!

 踵を返したオレは、兵役出の兵士を殴り飛ばした。

《いてぇえー!》

 冑の縁じゃなくても人を殴れば痛い。

 当たり前だ。

「なんたる暴挙!!」

 領事がそう宣うと、人質の首に刃を突き立てようとした。

 だが()()は押し戻される。



 だって、従者は風の精霊使いだ。

 ベルフの家のもんは総じて風遣いだ――確かに筋力、腕力で豪剣なる大剣を操るけど、所詮はエルフだ。

 体力からして他の種族と比してようやく対等になった。

 じゃあ何を鍛えるか?

 いや、何を味方につけるかだな。


 風の精霊まるごとに契約した。

 アホだろ。

 その実直さが御伽噺の中で俺さまは好きなんだ。

 従者の祖先はそうやってエルフの武を貫いた。


 くぅー輝いてんなあ、ちくしょー。


 ああ、俺さまはボコボコよ。

 殴ったまではいいが。

 返り討ちにあって、従者とその兄が遣わした傭兵たちによって救出された。

「いいですかジーク、先ずは筋肉を鍛えるのです。軽口はその後でいいのです!!」

 俺さま、動けないんですが?

「筋肉の質が足りていないから、へなちょこ兵士の拳で痣になるのですよ」

 と、彼女は腹の当たりを見せてくれた。

 当て身を受けた痕が見えるが、赤いだけだ。

 しばらくすれば消えるのだろう。

「ヒールで治せばいいってもんではないのですよ」

 戒厳令の金の音だ。

 都中で響き渡っている。

「長居は無用ですね、さていいようにされたジークはこの者をどう扱いますか?!」

 無慈悲に置いていくことは出来る。

 すれば丁度いい目くらましになるだろう。

 だが...

「兵役の市民だぞ? 置いて帰ったら寝覚めが悪いわ!!!!」

 ですね、と。

 従者は微笑んでた。

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