- C 1366話 籠の中の女王陛下、1 -
マルちゃんの代わりに女王を守ると腹に決めて、
もう半日になる。
おなか...
心なしか急にくきゅーって嘶いたように聞こえた。
「小さい身体で気を張り詰め過ぎです、少しは口にしないと」
白くてふわふわのパンを、食べやすそうな大きさに千切って女王は私へ。
普段の一人称は良いトコの令嬢として、言葉遣いには気を付けてはいるものの。
素というのはどうしても隠れていてくれなくて。
女王は微笑みながら。
私は差し出されたパンを口にした――。
「王宮の調理場から拝借したので少々冷めてしまいましたけど。まだ美味しく食べれるでしょう? まあもっとも朕も、毒見役からのおさがりのような物しか口にしていませんから、まあこんな状態のものは初めてなのですけどね」
女王のお道化た表情が可愛らしく見える。
精一杯の虚勢で、私の緊張をほぐしてくれてるのだから。
今、この場には侍女長と、その配下の戦闘経験のある侍女が10名余り。
暗器なんかを隠していないか徹底的に調べられたけど。
そんな下手をうつような者はいない。
◇
馬がひとつ。
馬車の方へ近づいてくる――ノックがあったので、降ろしてたカーテンを顔半分までめくった。
「時に聞くが?」
侍女長が息を吐く。
もっとはっきり言えという雰囲気だ。
メイドたちは別の幌馬車へ無造作に押し込んでいるよう。
もう物騒だなあ。
「女王には息子があった筈だが? まだ見つかっていないのか」
確かに内々では使用人の子として対面の儀は整えて、存命が確認されている。
気遣ってくるあたり。
「陛下だけでは不十分とでも?!」
「否、出来うることならば子供を盾にするような真似はこちらも本意ではない」
なんて素直に謝罪して隊列へと戻っていく。
暫く隊列が続く仰々しいもののはずだけども。
夜明け前にしては聊か騒がれもせずに王都の外縁、城壁町にまで到達した。
「これは一体?!」
賑やかで仕方のなく城壁に張り付いて立ち並ぶ貧民街だが。
そろそろ起き掛けで一発、周辺の人々が仰天でもしてすっ飛んできそうな雰囲気の朝だが。
水場に小川に人のひとりもいやしない。
「人払いの法術か何かなのでしょう。スポンスハイムは魔法の大家、人のひとりやふたり遠ざけられるような強力な術もあると見ておいた方が、朕の心にゆとりが生まれるというもの」
とは言ってみたものの。
女王の目に焦りがある。
あと数刻もすれば勢力圏から出てしまう。
女王としてのアドバンテージが無くなったら、それは、彼女が普通の女性になるという意味だった。




