- C 1363話 ゲルツ宮廷伯の鬱な気分 3 -
本国は何かを隠している。
これは俺さまの直感だが、主戦派と保守派による牽制はあった。
この均衡は大公陛下が存命の間では何もできなかったと記憶している。
俺さまの集めた情報だって。
大公陛下に唆されてたのもあって、火種になりそうなもんはすべて献上してきた。
あの爺さんが毒や呪詛かなにかでくたばるとは到底思えない。
と、すると。
この王都旅行、もとい、視察だって――
「大公陛下にはスジを通した形の筈だが?」
公務はでっち上げだが、大公国から誤魔化しを繕ったままで抜け出せるほど甘いものではない。
一応、其れなりのスジと土産は必要なのだ。
宮廷伯さまが居るってのに、コレか?!
王族の拉致事件が情報網に上がってきたのは、
奇しくも領事館に逃げ込んでから半刻ほど経過した後の事だ。
なんたる弛み具合か。
「いや、密偵どもは仕事をしていたよ」
従者が居室に戻ってきた。
領事館の武官は身を鎧で包んで物々しい。
臨戦態勢のようで。
俺さまの従者も胸当てですっかり浅い胸のふくらみを隠し果せている。
いあ、これもオツですなあ。
「セクハラだと訴えたら幾らになるのだろうなあ?」
「宮廷伯は役職だから大した財はないが。実家の蔵で良ければ俺さまの為に、婚儀の手を整えてくれるはずだ。しからばそうさのう、支度金で猫の額のような土地持ちの貴族に成れるぞ!! 荘園の収支で贅沢三昧も出来るであろうな」
とか。
宣ってみたが。
従者の蔑んでくる瞳が堪らない。
なになに、ゾクゾクする。
「贅沢三昧?!」
「そうそう」
「それは民の血を絞って風呂を沸かすようなものだろ?! 恨まれて、吊るし首に成れ」
吐き捨てられた。
もうばっさりだよ、ばっさり。
くぅー堪んねえー。
◇
領事殿が開いてた扉をノックする。
しばらくの間、俺さまらの夫婦漫才を見ていたのだと告げて。
「脱出を試みます」
はて。
「事態は緊迫のままです」
禁軍の動きは見えないし。
王都は静まり返っている。
王城が襲われたにも関わらずに、うん、これは怪しい。
「領事は、知ってたか?!!!」
彼は首を振った。
知らされていない。
有能な子爵の出の者で、穏健保守派の重鎮だ。
故に切り捨てられたか?
「宮廷伯殿を先に」
領事の衛兵へそんな命令が下ってた。




