- C 1360話 帝国の魔女、ふたたび 3 -
帝国の魔女としての読み間違えは、戦場にあった。
彼女の考えでは、これらの一連の戦いを通して増長したビジネスパートナーへ、誰かの正義の鉄槌が下るように仕向けていたのだけど。多方面に策をめぐらしてた結果から言うと、バランスが崩れたというのが正解だ。
誤算となったのが、治癒能力が弱まったと思った島の法術。
それと、傭兵団メイプルシロップこと“赤いカエデ”の参戦である。
まあもっとも後者である、“赤いカエデ”の方は不可抗力のようなもので。
どう動くか未知数だった。
王都にあったことまでは、彼女の耳にも目にも入ってた情報だった。
◇
さて、憂国軍と開拓街の連中と、アップルクロス辺境伯との間で交わされた約定とは――。
入植地の斡旋は労働力の確保になるので辺境伯としても許容範囲だ。
地位協定の一環で、奉納する年貢も要相談による税率調整があって、土地神のような強力な魔物に対抗する兵力の貸し出しに周辺警備なんかも、公が請け負ってた。
農民プレイなら、大人しく農民に徹していれば尚、よし。
彼らは瞬く間に逞しくなった。
ひとりひとりが齢歳で力尽きる。
故に、その後に続く子供たちに少しでも、と気張った結果が辺境伯の差し向けた警備力よりも強大な軍隊を持ったことだ。
備蓄の兵糧は、年を追うごとに多く生産される。
最早逆に、辺境領が開拓街産の穀物を買わされる羽目になった。
これが嘆きの一つ。
まあ、執政官マーガレットを本気にさせたのは、メイドに扮した伯爵令嬢の。
『わたしの街の彩が、ニュールブリンっぽくなってる。ちょ、悲し...』
呟いたのがきっかけになっている。
ゆえに計画した。
憂国軍の大半がリスポーンし直して、デスペナの代償を払わされた挙句に経済基盤ごと半世紀ほど後退してほしいと。いや更には立て直しが困難になるほどに損害をだし、政治的にも軍事的にも均衡というバランスを失った彼らへ更に追い打ちをかけてやって欲しい。
と、ついぞ思ってみた。
今のところその半分も策には動員しなかった。
伯爵令嬢に打ち明けたら、
『それ、一時的にはうちの利益になるけど。結果的に負担がこっちに増えるんじゃない? 人種の入植はかれこれ3世紀、交易品も余裕がある時くらいしか出回らないものも増えてきて、ねえ。それがまた半世紀いや1世紀も出回らないってなると...アテにしてた人たちも起こると思うよ?』
で踏みとどまったフシがある。
いや、マジで壊滅させなくてよかったと、後述、マーガレットは吐露している。
あー。
そうそう、壊滅させようと動いてたデュラハン卿こと、ムツキ一行なんだけど。
ロッカーロン回廊にあった筈の首なし騎士のと小部隊に、例の“赤いカエデ”による横槍が見事に刺さってしまった結果、マジ結果だけが魔女の下に届き「お味方、壊滅の由に御座ります」と告げられた。
しかも占領してた、カルグリーン領都跡地『スカイ』砦は解放されたまま放置されたという。
放置だよ、放置――システム的には所有者が交代したのち、空白地に所有権利者が一時的に留まらないと、完全な空白地に戻るというので。
次に入る勢力に権利が譲渡される。
力任せに放棄してもいいんだけど。
わりと手続きが面倒だ。
で...
空地に憂国軍が入ると、
システム的には『占領』が点灯する。
空城の計ってのがあるので奇襲に十分な注意が払われたが、それも無かった。
むしろ神経をすり減らされて、ステ値には状態異常『ストレス』が灯ってもいたという。




