- C 1323話 騎士王と獅子王、仮面の王 3 -
仮面の王チヨダ卿。
自称貴族との話だが、浮世離れした危険な男演出している役者のよう。
所作には陰りは無く。
礼法・作法に高位貴族の雰囲気さえあった。
まあ。
本人曰く――「俺は旗本の部屋住み三男坊さ」だ。
胡散臭い。
てかこの国に旗本なんてあるんかよ。
くるくると。
代わる代わるに女性を口説いては、ホールの真ん中で楽し気に踊って。
ふとした瞬間に消えているのだ。
これが夜に出てくる不思議な蝶の噂話へと、置換された。
さて、
マルは軽食の肉を頬張ってた。
なんとも優雅さの欠片も無い女の子のあられもない姿だが。
「おやおや、口の周りにソースだらけじゃないか」
ナプキンをさっと広げて、
彼女の口から頬に飛んだカラメル色のソースを拭ってくれる紳士。
よく見ると、冴えない騎士のよう。
黒ぶち眼鏡に黒墨のようなクマが第一印象となるほどに。
ひどくやつれてるような。
「あ、ありがと」
「喰いっぷりから少年かと思ったが、これは失礼しましたレディ?」
マルは首を横に振って。
「爵位は無いから、普通で」
あっさり理解して。
真横に陣取った。
マルの世話を焼きながら、
「ひとついいかい?」
「どうぞ」
「この夜会は楽しんでるかな」
ごく普通の質問。
マルは正直肩ひじの張るような催し物は嫌いだと伝えた。
最近、馴染みの者と再会して、こんな場所に連れられたことを有りの侭ではなく、少しオブラートに包んでソレとなく匂わせるように繋いで、答えてた。
見ず知らずの人に内情はセキュリティ上よろしくない。
口の周りを拭いてくれた仲でも、だ。
いあ、どういう仲だよ。
それでソコまで話せば親密だろ。
マルの基準ーっ!!
「俺もこういうトコは尻が痒くていかねえな。なんなら、未だ開いてるであろう酒場か冒険宿屋の卓に腕伸ばして大いに騒いで、大いに飲みたい気分だよ。堅苦しくてかなわねえ」
ふーん。
そういう人も、貴族の夜会にくるんだ。
てことは。
どこかの貴族の衛士か、或いは文官か何かなのかな。
「おいおいそんな見つめると、俺、穴あいちまうよ」
カカカカってな嗤いを挙げる。
はっとして周りを見渡して。
「いや、俺はこの辺でお暇だ。坊いや、嬢ちゃんの話し相手になれて少し気分が晴れたぜ!」
ちょいキザっぽい。
クマを蓄えた黒ぶちの冴えない男も。
一瞬の視線外しで消えていた。
酔ってもいないマルが見失ったのだ。
果たして何者だったか。




