- C 1322話 騎士王と獅子王、仮面の王 2 -
精霊石が安置されているとする霊廟は、王家の墓地でもある。
お墓参りには、あ、1年に1回『お盆』があって、未だその時期でも無いんで――こうして無理に入ろうとしたら、だ。
魔女さまがセキュリティよろしく出て来ちゃった訳。
糞、分かり易い防御結界だよ。
しかも正攻法では突破不可能な感じさえする。
なにせ、攻略の要である、マルがやる気をなくした。
「卑怯だ!!」
仕掛けられたのは開幕デバフだ。
これは防ぎようのない強制イベントになってるようで、たぶん条件が揃えばわんちゃん。
今の状態ではこれの攻略は無理スジだと理解させられた。
いわゆる初見殺し。
意地悪だよねえ、この魔女さまは。
「コンテンツが消費される時代を経験してるんだよ。脳筋ばかりが手札の火力にものを言わせてた時代があって、そのツケが今のボクらが払わされる。理屈は分かるけど、攻略の手口まで伏せるなんて考察班レベルだよ、コレ」
何度も挑み、何度も負ける。
ここに死亡ペナルティはない。
攻略できるよう最低限のセーフティはあった。
「とりあえず?」
Aさんが仕切りに声を発して。
「ここは退きますか」
修道女さんの一言で場が一致する。
霊廟に入れないのは確定だから、長居は無用だ。
墓地というだけあって腰にひんやりとした風がかかる――「う、うぅ、ぽんぽん痛く」マルが半べそかきはじめた。
いあ、わたしもぽんぽんの調子が。
◇
その夜の舞踏会は賑やかなことが起きた。
白銀貨のような輝きを纏った、騎士王アーサー卿が社交界デビューした。
女王陛下の手を取りエスコートして、だ。
女王も久々の殿方同伴。
周囲の目は、もう。
さて、アーサー卿の監視のため。
ガウェイン卿も鎧ではなくドレスに身を包み、別の卓でマルとしばし歓談中。
わたしとツレの蒼は。
「他人さまに迷惑は掛けんなよ」
で見送ったが最後。
今は何処でスケッチしてるのやら。
流石に時代錯誤的な西洋風貴族社会の舞踏会は、圧巻。
絵に残しておきたいという欲求は抑えられんよなあ。
そういや。
アバターにスクリーンショット機能があったような。
「陛下主催の舞踏会、お招き頂き恐悦至極――」
呼んでも居ないのに大声で身振り手振りでアピールする者がひとつ。
例の獅子王だ。
自分自身の立場は理解している。
だからこうやってこの場で大きく見せようとしている。
誰に。
そりゃ日和見の貴族たちにだ。
王位継承権は、後ろ盾の始祖王家スポンスハイムが血統で覆そうとしている。
アップルクロス辺境伯の分家が同大公の下にあるので、不足事態にあっても良質な血統を擁立できるとアピールしてる。
やや強引だけど。
ハイエルフ社会にとっての血統は継承権をも覆すときがある。
これが厄介なことで。
「――血統、血統と無粋な連中だ。ここは美しい花を愛でる場であろう」
なんてキザな。
花に囲まれた線の細い男が反撃。
おお、これが仮面の王。
マジで仮面舞踏会の面しかシテねえなあ。




