- C 1315話 精霊石と魔女 2 -
開拓地域は人類の橋頭保であり、最終防衛ラインでもある。
桟橋も、打ち上げられ船の1隻目から始まった細やかなキャンプが起点となってる。
外界を隔ててた霧は――
マーガレットの介入もあって、噂を聞き付けた冒険者という時代も、身なりも違う者たちで発展していくまで更に時を要したものだ。
霧という結界に対して正面から挑むことは出来なかった。
正直、魔女をしても莫大なエネルギーを蓄えた“精霊石”に喧嘩を挑むようなもので。
いささか無茶が過ぎる。
そこで裏道を突くことにした。
本当に裏の裏で、これも酷く小賢しい抜け道だ。
つまりフィーリングの似た者にマーキングを施して、選別した状態で召喚してしまうということ。
結果的に召喚術式でしか霧を物理的にどうにか攻略する術がなかった。
最初はマーガレット自身、無念だと匙を投げかけたけど。
予定調和ってのは脆くも崩れるものらしい。
いや、これは誤算だ。
島の外へ出るための準備の儀式で充満している島に。
わざわざ島の外から人が来るなんて微塵にも思っていない。
入植に掛けた200年でサイクルに僅かな狂いが生じる――生命の再生に『老い』のような術が持ち込まれたのだ。
永遠だと思われてたものが錆びて朽ちるさま。
人類入植から300年で先住民と戦争する日々。
これも決定的だろう。
リズムが壊れるのに、だ。
◇
エルフの常識は非常識。
そんな言葉がある。
いや、実際にサイクルの違う種族間で一般論的倫理観なんて意味がない。
千年平気で生きる、生物と。
百年やっと生きる、生物が。
とても相容れるとは思えないからだが。
この島にあるエルフは容姿が妖精だけども、寿命は長くて100を少し超えるくらいで。
平均を取れば80か90ほど生きて、容姿だけ若くして死ぬ。
奇妙な生き物に育ったものだと思う。
「ずっと半身はどこへ行ったのかなと思ってるんだ」
研究室の冷ややかな石畳みに転がるマーガレット。
天井を仰ぎ見ながら、
扉の向こうにはちょびっと反省し始めたエリザベートがある。
本当に悔いてるかは不明だが。
「ごめんね、皿割らないように、する」
「自覚はしていないつもりだったけどね、私もエルフなんだ。半分だけの出来損ないだけどね」
生い立ちを他人に明かすはめったにない。
眷族だって察してはいても訪ねることは無いだろう。
「うん?」
半身は見たことがない。
島に入った時は馴染んでなかったからとも思ったけど。
島のシステムに組み込まれた様子もない。
これは入植者が増えたあとにも感じた。
やっぱり何か変だって、違和感程度に。
「それで、その違和感の正体は?」
エリザベートが扉の隙間からこちらを覗いてきた。
やー、それ怖い。
「ねえ、もう入ってくれない? それ、なんか.... 怖い」




