- C 1314話 精霊石と魔女 1 -
島大陸を無から造り上げた術式は美しかった。
お世辞ではなく。
精霊石のソレは完ぺきな賢者の石である。
しかし、それと同時に不完全な形態にされてあった。
錬金術においてすべてに置換できる『賢者の石』は万能の物質である。
これは魔法使いであればだれもが必ずは夢を見る一級品、いや伝説上の代物で。
ありとあらゆる法則を嗤いながら書き換えていく永遠無敵の万能リソースであるだ。
さて、
マーガレットが不完全と説いたのは、放出されたマナの濃度だ。
星の内海から汲み上げられた力はソレが結晶化するほどまでに高濃度なのに。
島に充満しているマナは森林浴に適当な量しか出回っていない。
明らかに矛盾した効率の悪さを感じることが出来る。
しかも、ある一定の周期から恐らく石の形や大きさは、変化していないのではないかと。
そう考えられるのは――
定期的に食料が自ら王国が貧困で苦しむ頃に災害として現れる時期に重なるようだ。
確かにとてつもない魔力を感じた途端に、何処からともなく巨大な魔獣が現れる。
討伐されると島は傷ついた分をそっと100年ほど賭して修復していくサイクルになっていた。
ま、ここ最近はそのサイクルに陰りがみられる。
◇
「行商人として、見て回って」
「入植者が増えましたね。なんていうか、見慣れない船がどんどん桟橋を埋めていくってのも尻孔がムズ痒いものがありますが。これも魔女様の方針なんですかね?」
行商人は短い脚の卓上に銀貨を放り投げた。
一部は革袋にはいってるもので。
そのうちの一つから零れだしたものだ。
「ほう、なんだかんで売り切ったのか?」
あんな大量のポーション、ただの栄養ドリンクに幾ら値を付けんだって弄られながら。
行商人も首を傾げて。
「島大陸のすべてが王国領だと思ってる連中からすると、侵入者と思ってるヒト種族、亜人ども、自分たち自身棚に上げて偉そうにしてる彼らと衝突で、まったく。どいつもこいつもいい気なもんで、あっちこっちで戦争しまくってくれて島肌は禿山よろしくってやつですよ」
行商人は毒を吐いた。
未開、未踏破の地域は多い。
人類側が島の外周にレールを履かせて装甲列車が走るようになったのは1世紀も経っていない。
フレーム技術の応用で、濃くも無いマナを取り込んで奔る未知の永久機関車なわけだけども。
「森を切り開いちゃって毎日、黒い煙ばかりを上げている都市部の空気ですけどね」
ふむ。
他のメンバーはマスク越しで頷いてた。
室内でも気を抜くと鼻の穴が真っ黒になる。
煤汚れという大気汚染である。
「これ、再生してますか?」




