- C 826話 皇太后の戦い 6 -
皇太后の腹は決まってた。
女王“寧花”の死亡が、寧雄の口から告げられた――2年前のことでもあるが、女王の顔をした息子に打ち明けられたのはショックでしかない。が、そのことで腹を括れたのかもしれない。
持て向きは王朝の存続と、河州王に姉を演じさせ続ける為に、必要な行動をとる。
それが実子の排除だとしても、だ。
で、女王が遺した嫡出子である姫皇女に王位を譲る。
姫皇女が、分別の付く年齢に達すれば、女王の急死を発して国葬へ。
そんな邪悪な企みもあった。
やや、悲しい話だけど。
国家の闇なんて、どこも似たり寄ったりだろう。
あくまでも、次代の姫皇女が王位に就くまでの時間を稼ぐ――その一点のみ。
◇
ただし、上手くいくのかってのが胸なり、頭なりに過った。
こんな秘密、誰と共有できる。
泉州府は廃府されたばかり。
頼りにしてた泉州王寧景も、いずこかに姿を消した。
仕方がない。
守れきれなかった。
2年前から目障りだったと言えば嘘になる。
皇太后とは血を分けた双子の姉妹、それがふたりの続柄だ。
聖櫃が持つ高度な技術力を利用すれば――妹の卵子で王室の復権が、いや活気が戻ることは間違いない。なにせ、双子だと言っても先祖のエルフ的特徴は妹が色濃く受け継いだのだから。
変な横槍さえ入れなければ。
「やだ、めんどう。王室? 窮屈極まりない」
なんて悪態を吐いてた、妹。
彼女の居場所を奪ったのは外でもない、皇太后だ。
まさか死に至る呪いとは思わなかった禁呪で、彼女を呪った――「うむ、自業自得か」
皇太后は後宮の奥で。
陽の当らない、届かない墓場のような密室に鎮座する。
他人を呪わば、孔ふたつ。
他人でも棺桶に片足を突っ込むのだから、身内ならば。
手足が震えて、筋力が極度に落ちる病へ。
従医らも手を焼く厄介な病と聞く。
「これも呪いかな」
いや、寧雄のフリをして市井で遊び惚けてた、寧花も。
「検死の結果は...」
「姉をいえ、娘を切り刻んだと?!」
激高するところは、ソコらしい。
自然死でも原因の追究くらいはする。
病理医に組織の一部を診てもらって、何があったのか調べてもらわない事には。
「あの娘に「はアレルギーなんて」
「そうとは言えませんよ。こどもの時分では平気でも。大人になって母にもなれば、ホルモンバランスで
生魚がダメとか、四つ足の肉が、ふたつ足のとか...草の葉、根、果物がダメだという事もあるでしょう。今後、寧花のフリをする私も気をつけねばならんのです!!」
なぜって声が母から飛び出した。
現実が見えてない。
◇◆◇◆
深く息を吐いて、寧雄は静かに切り出した。
「姉・寧花は事故死では考えられませんでした」
事件性はある。
唐突に玉座から滑り降りた、母に襟首をつかまれた。
首を締めてくるような力の入れようではないけど。
「(おそらく)お前が死ぬはずだったのか?!」
って残酷なセリフを浴びせてた。
女王の夭折――普通に発表すれば、マスコミへの燃料投下になることだろう。
王室のゴシップ記事ほど売れるネタはない。
それはもう、面白おかしく書き叩くだろう。
「私とは限りません。しかし、狙われる可能性は全員に」




