- C 825話 皇太后の戦い 5 -
衝突した後宮軍にも動揺は走った。
泉州王の読みでは、城州王の説得が出来なかった場合。
後宮の中へ引き籠るのではないかと、見てた。
息子、ふたりを天秤にかける母親的イメージは彼女に無かったのだけど。
その天秤の傾きは、すでに決してたようで。
ウナちゃんを介して、
彼女が吐き出した感熱紙によってもたらされた。
◇
「ちょ、ちょっと、ちょっと!!」
遠見の鏡前のキルダさんを呼び止めた。
今まさに交信が終わろうという、その時だが。
「慌ててどうした?」
くるくるぱー呼ばわりした、ハナ姉に優しい口調。
リスペクトまでは行かないけど。
評価はちゃんとしてる。
ただ、ちょっと気に食わないだけ。
「い、いまの彼女、ウナちゃんから出たアレはな、なに?!」
いあ。
今も何かってか、紙を吐き出してる。
「報告書と、請求申請の書類だ。ちゃんと書けよ? 備品の員数合わせほど面倒なものはないからな、こちら都合ではあるが、軍隊でなくても在庫管理は必要なことなのだ!!」
うん、まあ。
申請書を書いて、却下された事の方が多いけど。
あ、理由は至極かんたんな話で『別件で調達できる環境があるから必要ない』だった、か。
結局、自腹になった。
「いあ、いあいあ」
「ハナ君、なんなんだ、君は」
もうシラケられてる。
魔術師の方は使い物に成らないし、泉州王はハナ姉の肩越しにキルダさんを見てる。
それはもう、愉しそうに。
摂州王は、部下と共に散らばった紙を集めてた。
「これページがありますよ!!」
ってので驚かれて、
「報告書は数枚にわたるからな、ちゃんと1から順に... 申請書は規定枚数しかない。都度、必要になればウナの背に張って、鼻でも摘まめばコピーしてっくれるだろう」
またも謎ワードが飛び出した。
もはや置物の家電である。
しかも高機能な。
「聖櫃のより有機的な部分の濃い、家電!!!」
ハナ姉のツッコミ。
違和感はそれだ。
「――っそういう事か。アリスの方が忙しくなったので、ウナはそちらへ行かせた。アレにはそういう機能があるし、個人用だから...ま、ひとりいなくなると? 気が付かんかもしれんが」
周りを見渡された。
エサちゃんとかボクがいないことが、バレたっぽい。
「欠けたことへで感じる違和感は、あるだろ? それを埋めるためのウナ型家電だ。有機素材でコーティングしてあるだけで、おっぱいを揉んだところで反応はしない」
泉州王が蕾を摘まんで、家電が身を捩ってた。
「うむ...生理的な反応だ。...そういう事もある」
「ま、いずれにせよ。貴君らにタクシーの手配はする...が、そこの申請書にちゃんと書け!! 話はそれからだ、いいかな? ハナ君」
摂州王が鏡の端で挙手してる。
ハナ姉が鏡をズラし。
「会話を切ろうとしている最中に、すみません」
「はい」
「この申請書に上司印が押されてませんが?」
印刷の印刷になるから、不正利用を避けるために押印は後だ。
が、押印する書類か。
一同がまじまじと紙に視線を落としてる。
「なあ、キルダ・オリジナルさんよ?」
「っち、」
「タクシーは来るんだよな?」
舌打ちが物語ってる気がした。




