- C 814話 王都の戦い 4 -
「河川に隔てられていた、第二商業区にも火の手が」
報告を受ける。
王城の塔へ昇った女王のフリをしてきた、河州王。
彼の目にも燃え堕ちる王都が見えている。
こう黒煙が偽物の空を、焦がしているような雰囲気――しかし、煙が雲のようにも見えなくはない。
これで天井のスプリンクラーが刺激されれば、雨らしい水が降ってくるだろう。
「待てるか、いや、そもそも...もつのかこのドームは」
口惜しいけど。
指を咥えて見ている事しかできない。
◇
ドームの管理機構は、環境省所管の国営会社が行ってた。
見るからにヤバい状況なのに、スプリンクラーの1ミリも動かないんだけど。
もしや?!
外では大騒ぎなのに、管理制御室ではブザーの音を切ってた。
細やかなことで鳴る警戒音には、頭痛のタネとなってて。
24時間、夜勤中にずっとなる事もあるんで。
故に切っていた。
で、彼らだが。
ここは公務員、やる気のある者は書類の整理。
やや不真面目は体力の向上と言う名目の練成に励み、それ以外は娯楽室で花札に興じていた――勿論、支給された“煙草”と“酒瓶”で賭博の最中である。
「貴様ら!! っ、何処へ行った?!」
制御室に怒鳴り込んできた保安局長だったけど、もぬけの空を見て。
怒りが頭頂部からスッと抜ける瞬間を感じた。
いあ、怒ってるけど。
これは呆れたと言って差し支えない。
だって誰も居ないんだ。
赤色灯は回ってるし、ブザー音はないけど気味の悪い発光が部屋を彩ってて。
もしも、人が駐留してたらならば、間違いなく異変に気が付いてただろう。
「どこだ!」
「どこへ、行った?!」
「どこなんだー!!!!!」
廊下を走る。
扉があれば機関室、ボイラー、浄水施設、消化房でも片端から開けて叫んでく。
流石に煩いので。
「何事でしょう?」
室長室の固く閉ざされた、防火扉が開いた。
「おお、第一村人発見だ!!!」
目を擦る男。
両腕に黒い腕袋をはめ込んだものだが。
「どちらさまです?」
「腕章か、いあ、服装を見て分からんか?! 保安局だ!!!!! いや、もうどうでもいい。一刻も早く消火剤か放水を頼む。これは依頼やお願いではないぞ、王城からの命令でな」
言葉を紡いでる先から防火扉が閉まりかける。
「こらこらこら!!」
「ちょっと、その指挟みますよ?」
「閉めるなバカたれが!」
問答が怪しい。
「面倒な人だなあ」
「面倒くさがるな、いあ! 他者の話は真面目に聞かんか、王城よりの命令により」
保安局長に“下知”とする書きつけが叩きつけられる。
恐らくは公文書の偽造の類だけど、玉璽によく似た印章による“女王の命令”として――如何なる大事にかかわる事の無いように。管理局は一切を中立で保つように――とも取れるような文言で書かれた書だった。
筆跡も寄せてるだけだろうけど。
口頭で下知するよりもよっぽど説得力があるし、保安局長だって。
女王自ら『なんとか頼む』なんて言われてなければ、この文章を信じたに違いない。
「マジかよ~」




