- C 813話 王都の戦い 3 -
「何者...です?」
モルドレッドは角の者に声を掛けた。
反対側の通路では、直線状に曳光弾が飛び交ってる様子で――赤く灼けた光る射撃線が幾重にも走って。
金属を弾く音に、爆ぜる音。
今まさに戦闘中って感じで。
『ここいらの空気は、その』
ああ、と。
モルドレッドは唇を舐めて。
「大丈夫ですよ、出来るだけ換気はしました。美味しいと表現できるかは主観ですし」
「了解した」
防毒マスクを外したようだ。
くぐもった声がすっきりと耳に届く。
そうして聞けば女性の声で。
「私は、ハナ・コメ。故あって、魔王軍に籍を置くが、君らの救出に参戦した」
そう、ハナ姉は淡白に回答してた。
対する聖櫃の騎士たちにとって『援軍だ!!』と素直に喜んだかは、あまりよく分かっていない。
◇
暫く姿の見えない者通しで問答をしていて。
ハナ姉的には「そっちに行っても撃たないでくれよ」的なニュアンスで関係が構築できたと思い。
そりと、角から腕を挙げて現れる。
耳の横を鉛の弾が掠めて行く――血の気が下がった気分と、やや怒りを覚え。
「撃つなって言ったよな?!」
出島で頭を抱えるモルドレッドがあった。
「いや、こっちの攻撃じゃなくて~」
出島にもおっかない穴が開いてて。
少し彼女が仰け反って無ければ、自慢のおっぱいが破裂してたかもしれない。
そんな、射線で。
その直線状にハナ姉の頭があったというのだ。
反乱軍と化している元気な白服どもが。
看守たちの武器を奪ってやりたい放題。
「ったく!」
ハナ姉の後ろに控える、摂州王の兵たち。
一騎当千ばりの彼女の背中に惚れた様子で、2~30人ほどがついてきた。
「対岸の通路、なんとか出来るか?」
イラっとしてた様子。
頭も掠めれば、まあ。
5、6人ほどの屈強な男たちが重火器を握り直す――武器庫から引っ張り出した、設置型の機関銃をだ。自前で幾重にも重ねたベルトで固定して、担いで持ってきたようで「我らにお任せあれ!!」と、頼もしい返事で元来た廊下の奥へと消えた。
対岸の通路へは、十数メートル下がったところに分かれ道があった。
地上層の敵兵力は壊滅させてあるけど。
ハナ姉は念のためにと、後方警戒部隊を置いてた。
数は200も無いんだが。
戻ってきた6人の装備を見て――
「何か必要な武器はあるか?」
6人はそれぞれに、各人の装備の見直しを図る。
まあ、対岸の攻撃部隊がしっかり牽制していれば流れ弾もなかった訳で。
「この区画の壁ってどの程度だろうな?」
200人の顔が険しくなる。
なんとなく察しがついたからだけど。
「生き埋めにするか、みんなで一緒に圧壊したいってんなら...ロケット弾でも持っていくか?」
与える気は無いけど。
6人も首を傾げてから、横に振ってた。
◆
王都での決戦は数の暴力では無く、質の暴力と化してた。
市民生活に直結する、商業区や居住区には戦火が及んではいないんだけど。
誰かが火を放ったから花街、遊郭、遊興区なんかが火の海に呑まれてしまってた。
ドーム内の空気汚染は辛うじて防がれてるけども。
このまま燃え続けるのであれば、酸欠気味になるのは必然。
「誰が、こんな事を!!!」
王城内で久しく取り乱す河州王の姿があった。




