- C 811話 王都の戦い 1 -
外圧に一縷の望みを掛けてたっぽい河州王は、今まで何をしていたのか。
ぶっちゃけるとフリだ。
欧州は利益がなければ遠征する理由がなくなる。
すでに莫大な資金と、それぞれの国の思惑が絡み合って形になった――極東の事変解決問題。
これは東洋と北天の大陸戦争では無く、北天から“燕”という国が独立した事変にされた。
いや、そうなっているんだ。
最初から。
で、国土の幾らかを回復させるのに手伝った、欧州連合軍は今。
北天に報酬を求めている。
東洋は河州王の根回しにより、北天が捨てていった地域の分配によって。
新体制の国家を認めて貰えるよう、取り付けたといったところだ。
その代価が北天人の土地なのだが。
◇
王城の玉座に転がる、男娼たち。
眩暈でもするような強烈な媚薬が香にのって、撒かれた部屋。
で、その玉座はずっと空のまま。
見たい者はずっと、かつての女王の姿を空いた玉座に見ていた。
彼女はもうこの世に居ないのに。
種を明かそう。
そう言って、薄絹の衣を纏った河州王が、玉座の間に戻る。
「我が姉、寧花は死んだ。2年と少し前のことだ...私と入れ替わり、市井の浮世を楽しみたいと外に出た折の出来事だ。勿論、彼女の死に不審なものはない。ただ、偶然にも食中りから来るものでね...あっけないと死に方だったのは覚えている。それからは女王の代わりに私が、政務にここへ籠る事が多くなった」
近しい側近たちしか知らない事実。
いあ、その側近も後宮にある皇太后も、女王が病死したことを知らない。
ごくごく近しい身の回りの従者は、河州王が用意した自分の近衛である。
「ふふ、この国は面白いシステムがある。国の大事となった時、双子の片割れが血統を継ぐという慣習があって、母にも眉目秀麗で武才も併せ持つ、逞しき妹君があられた。しかも双子...だが、その方の力は借りられない。そして、姉と私は姉妹では無かった」
狂気じみた嗤いが、毒牙ののよう香の満ちた部屋に響き渡る。
閉じられてた部屋を開け放っても、毒は抜けきらない。
大臣たちや、宦官でさえ入室に躊躇してた。
「もうこの国に女王は、女王となれる者はいないのさ!!」
転がるように入室し、床に這いつくばった宦官は太監。
宦官すべての長であり、権力の象徴めいたもの。
彼は腕を伸ばし、玉座へ希望をつなぐ。
「ま、未だ、皇太姫さまが!!!」
そうだって声が挙がるけど。
「その娘は、城州王。兄上の学び舎にあるでは無いか、戯けたか?!」
その沸き立つ声を一瞬で黙らせた。
女王を廃して即位する者が、継承順位を見落とすはずがない。
皇太姫は早々に消息不明かもしれない。
「姪っ子だからと手加減するような兄では無いから、まあ、心配しかないな」
ちょっと他人事。
愛した人の娘とはならないようだ。
そこは身代わりとして王宮に入った後で心変わりしてた。
「さて、この戦いだが」
王城を取り巻く不穏な空気。
城内でも、女王近衛と白服の謀反人たちの間で衝突が起きている。
事前に配置させてた兵なのだろう。
数で圧倒されていたし、大臣の顔ぶれも僅かに少ない。
買収されたか、或いは事前に知ってて逃げたか。
いずれにせよ。
「兄上のお手並み拝見といこうか」
憂いは無い。
外交的にも城州王に気づかれない程度に配した兵だ。
あとは...




