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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
陽炎戦記
1937/2527

- C 810話 鬼将 河州王の野望 10 -

「補給経路が荒らされている?」

 今までの状況が卓上に広げられる。

 賞味期限の切れた情報ものも、那岐自身がぱっと見で集めて並べ直したものだ。

 時系列だけで、何処が起点で起きたかは問題視していない。

 どうせ、同時多発なのだから。

「これと、これは陽動だろう。乗ってやる必要はない」

 言質でも採ったかのように、先ほどまで怒鳴り散らしてた癇癪持ちの鼻が高くなる。

 彼の功績ではない。

 単に、指示をしなくて無視したものだし。

 積極的に関与しなかったのが、結果オーライってだけだが。

「ヴォーティマー君だっけか?」

 怒鳴り散らしてた上級将校の()()()だが。

「は?」


「君の仕事は、戦場に立って兵を鼓舞する事だ。指揮所で怒鳴って声を枯らすだけなら、誰でも出来る。...故に私もだが、総司令として兵を預かる身としては。そうだなあ、連れてきた学生にみっともないおとなを見せたくない。だから、ヴォーティマー君もだ。君の働きを見せられる場へ戻るといい」

 大きく見開かれた目。

 耳まで赤くなる頭に、湯気上がる感じ。

 癇癪が出かかってる。

「――それが主君として、父として仰いだヴォーティガン卿に対する。そう、アピールになるんじゃないかな? 城州王が寧正の子、寧恬で宜しいか」

 知ってたー的な感動。

 同時に知られてた―って気恥ずかしさ。

 10代も終わる歳の青年で、大人ぶって背伸びしてたけど。

 見てる人は見てた雰囲気。


 ま、那岐将軍も。

 着任と同時に扱いに困ってた“白服”から、事情は聴いてた。

 青二才と老将の差みたいなものだろう。



 時は流れている。

 王城を半包囲している城州王軍には、目下、包囲を完成させる以外の標的が生まれてた。

 王城のある区画とは正に、月と太陽ほどの差がある花街からの蜂起。

 掲げ上がる旗の異様さ。

 王都守備隊が逃げ込んだ先でもあるし、ガラの悪い連中のたまり場でもある。

 そんな地で挙がった旗は“河”州旗。

 正方形の絹旗に『河』と大きく刺繍されてた。

「立ったか」

 マーカスで知った城州王の吐き捨てた声。


 同時期、ボクのお腹を吸ってる泉州王も――似た言葉を発してた。


 彼が立つのは誰も彼もが織り込み済みだったようで。

 驚きはない。

 むしろ、兄である城州王は。

「遅いぞ、弟よ!!」

 か。



 花街に挙がった旗は、偽計だ。

 兵士の姿は無く、守備隊が再編されただけだ。

 河州王の配下・側近というか。

 あれだ、実子。

 府を継ぐために成した嫡男であるんだけど。

 倭州王と同じ()()という名が与えられている。

 倭州王も彼からすれば可愛い息子ではあるけど、不義理だと言われると素直には。


 で、名は同じだが。

 政府の目を盗んで、国外から得た姫と婚姻したというのだ。

 その王族は北欧の雄・北グラスノザルツ侯国。

 忘れちゃってるだろうけど、イザベラ・ラインベルク侯爵令嬢の従妹にあたる姫君。

 まあ、ひとつ...ふたつ下の可愛らしい娘さんで。

 血統で言うと。

 グラスノザルツ()()第三継承権持ちという、とこか。

 しかもラインベルク姓でもある。

 外圧で伸し上がろうとする、彼らしいやり方だ。

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